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政府

yasuokaの日記: 『番号法第19条第7号の規定により地方税関係情報を照会する場合に本人の同意が必要となる事務を定める告示』に対する再質問状

日記 by yasuoka

昨年9月12日に、『行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第十九条第七号の規定により地方税関係情報を照会する場合に本人の同意が必要となる事務を定める告示』(平成29年5月29日内閣府・総務省告示第1号)に対して、内閣官房番号制度推進室に再度の質問状を送った。そうしたところ、今日になってやっと回答が返ってきたのだが、これがやはりヒドイものだった。そこで、再々質問を送ると同時に、再質問も含めて、私(安岡孝一)の日記に記録しておこうと思う。

 京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センターの安岡孝一です。

標記の件、御質問頂いた2点につきまして、下記回答いたします。回答が遅くなり誠に恐れ入りますが、宜しくご確認くださいますようお願いします。

正直なところ、この回答では「矛盾」が説明できておりません。

→お示しの資料における「特定個人情報は、本人の同意の有無や法令に基づく場合等かどうかは関係なく、番号法第19条各号に掲げる場合のみ提供できる」との記載は、個人情報保護法制の特別法たる番号法における特定個人情報の提供に係る一般的な考え方を示しているものであり、これを撤回するものではありません。

に関しては、従来方針通りということですから納得の行くものですが

→個人情報保護法制や番号法とは別途、地方税法上、地方税の調査又は徴収の事務に従事している者等には守秘義務が課されており、地方税法総則逐条解説において、情報提供ネットワークシステムを介した照会については、①利用事務の根拠法律において、本人が行政機関に対して報告を行う義務が規定されている場合、又は②利用事務が申請に基づく事務であり本人の同意により秘密性が解除される場合においては、地方税法上の守秘義務違反には当たらないと解されています。
このため、地方税法上の守秘義務を解除した上で情報提供するためには、①又は②を満たす必要があり、番号法第19条第7号により、当該情報を照会するに当たって、本人の同意が必要な事務及び情報を明らかにする必要があるため本告示を定めました。なお、告示上に地方税法の条文は直接引いていません。

その回答では、私のもともとの「この部分の矛盾を、学生にどう説明すればいいのか、が私の質問の中心です。」を解消することができません。その矛盾をバラバラに回答するのではなく、矛盾を解消するような回答がほしいのです。『地方税法総則逐条解説』を元に告示しました、根拠法も引いてないし、番号法との矛盾も知りません、という回答では、学生に説明しようがありません。

 しかも、この回答に引用されている内容は、『地方税法総則逐条解説』(地方財務協会、平成25年12月24日)の文章を、勝手に改変しています。『地方税法総則逐条解説』第二十二条の元々の文章(p.698)は

情報提供ネットワークシステムを経由してなされる情報照会者たる行政機関等からの照会に対しては、情報提供者たる行政機関等は回答しなければならない旨の規定がある。これに基づいて市町村の税務部局に対して所得情報の提供が求められた場合については、情報提供ネットワークシステムによる情報照会・提供は①利用事務の根拠法律において、本人が行政機関に対して報告を行う義務が規定されている場合、及び、②利用事務が申請に基づく事務であり本人の同意により秘密性が解除される場合、に限定されていることから、当該情報は両者の関係において秘密ではないと解されるため、番号法第二二条第一項に基づく情報提供の求めに対して市町村が所得情報を提供したとしても、本条に規定する犯罪は成立しないものと解される。

です。「①又は②を許容」と「①及び②を限定列挙」では、意味が全く異なってしまうという点は、以前、私の日記 https://srad.jp/~yasuoka/journal/591502/ にも書いたとおりです。このような「元の意図を捻じ曲げる引用もどき」では、回答そのものに納得することができませんし、番号法との矛盾も、解消できようがありません。

 後期の講義は10月に始まりますので、もう少しだけ、時間があります。よろしく細部まで御検討の上、矛盾なく回答いただくよう、お願い申し上げます。

これに対し、本日、内閣官房番号制度推進室から返ってきた【内閣官房・回答】は、以下のとおり。

平素はお世話になっております。内閣官房番号制度推進室でございます。標記の件、回答が大変遅くなり誠に申し訳ございません。下記のとおり回答いたしますので御確認ください。なお、内容については総務省自治税務局と調整しておりますことを申し添えます。

○ 御指摘のように、マイナンバー法においては、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の読み替えにより、同法の本人同意による第三者提供に係る規定が適用されないこととともに、マイナンバー法第22条第1項では、同法第19条第7号に規定される特定個人情報の照会を受けた場合に提供を行う義務の規定があります。これらの規定により、一般的には、情報提供ネットワークシステムを用いた特定個人情報の提供に当たっての本人の同意は不要です。

○ 一方で、地方税法第22条に規定される職員の守秘義務については、個別法令に官公署に対し情報の照会ができる旨の規定があっても、従来からの内閣法制局の見解に基づき、
① 利用事務の根拠法律において、本人が行政機関に対して報告を行う義務やその担保措置(情報の照会に応じない場合の罰則等)が規定されている場合
② 利用事務が申請に基づく事務であり、本人の同意により秘密性が解除される場合
のいずれかの場合でなければ、地方税法上の守秘義務が解除されず、地方税関係情報を提供することは認められないと解されています。

○ したがって、情報連携の対象とする特定個人情報のうち、地方税関係情報については、法令に上記①の規定がある事務手続については情報提供に当たっての本人の同意を得ずとも地方税法上の守秘義務が解除されますが、上記①の規定がない事務手続については、上記②を踏まえ、本人の同意が必要となるため、別表第2主務省令第60条に基づき本人同意が必要となる手続について告示を制定したものです。

昨年9月12日の回答と微妙に変わっているが、あまりに曖昧模糊としていてワケが分からない。そこで、以下の再々質問を先ほど送っておいた。

 京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センターの安岡孝一です。

標記の件、回答が大変遅くなり誠に申し訳ございません。

はい、もう、後期の講義は、ほぼ終了しつつあります。

下記のとおり回答いたしますので御確認ください。

確認したのですが、回答の内容が曖昧で、矛盾が残ったままになっております。

○ 御指摘のように、マイナンバー法においては、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の読み替えにより、同法の本人同意による第三者提供に係る規定が適用されないこととともに、マイナンバー法第22条第1項では、同法第19条第7号に規定される特定個人情報の照会を受けた場合に提供を行う義務の規定があります。これらの規定により、一般的には、情報提供ネットワークシステムを用いた特定個人情報の提供に当たっての本人の同意は不要です。

については、前回の回答(2017年9月12日)と同様、納得の行くものですが

○ 一方で、地方税法第22条に規定される職員の守秘義務については、個別法令に官公署に対し情報の照会ができる旨の規定があっても、従来からの内閣法制局の見解に基づき、
① 利用事務の根拠法律において、本人が行政機関に対して報告を行う義務やその担保措置(情報の照会に応じない場合の罰則等)が規定されている場合
② 利用事務が申請に基づく事務であり、本人の同意により秘密性が解除される場合
のいずれかの場合でなければ、地方税法上の守秘義務が解除されず、地方税関係情報を提供することは認められないと解されています。

に関しては、前回の回答では『地方税法総則逐条解説』だったはずの部分が、今回は「従来からの内閣法制局の見解」に変わってしまっています。しかも、どの「内閣法制局の見解」なのかが具体的に示されておらず、内容を確かめようがありません。

 したがいまして、その「内閣法制局の見解」を、具体的に内閣官房番号制度推進室として、お示しいただきたく存じます。

 と申しますのも、返事を待つ4ヶ月の間に、私の方でも、これまでの内閣法制局意見を、ざっと検討いたしました。特に「昭和38年3月15日内閣法制局一発第6号回答」については、https://srad.jp/~yasuoka/journal/615031/ に検討結果を示しております。この内閣法制局意見に基づく限り、②の「本人の同意により秘密性が解除される」などという話は全く出てきません。この先例が変更された、という可能性も検討したのですが、現時点までに私の方では、そのような先例変更は発見しておりません。

 ですので、その「内閣法制局の見解」を、具体的に内閣官房番号制度推進室として、お示しいただきたく存じます。内閣法制局と内閣官房が別の部局であることは、私も重々承知しておりますが、それでも内閣の中の話ですので、よろしくお示し願います。なお、内閣法制局との間で検討なさる際には、私の元々の質問、すなわち

・「本人同意の有無とは関係ない」とする番号法第19条の基本方針は、今後は撤回されるのか。撤回されるとすれば、具体的な法改正はいつ頃か。
・「本人の同意を得なければならない」とする根拠法は何か。それは個人情報保護法なのか地方税法なのか、あるいは別の法律なのか。その根拠法の根拠条文は、当該告示のどこに引かれているのか。

の2つのあたりを、学生にどうちゃんと説明していけばいいのか、というのが、私の元々の質問だった、という点をお忘れなく。

ただ、これまでの経緯を考えると、次の回答は早くても4ヶ月後なので、年度をまたいでしまう可能性がかなり高い。昨年9月30日の日記でも検討したとおり、あとは内閣官房番号制度推進室がどうやって腹をくくるか、なのだと思うのだが、今後もノラリクラリと逃げ続けるのだろうか。

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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー

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