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中国

yasuokaの日記: 古典中国語Universal Dependenciesにおける「可以」

日記 by yasuoka

Edwin G. Pulleyblankの『古漢語語法概論』(二松学舎大学21世紀プログラム、2009年3月)を読んでいたところ、あとがき(pp.217-218)で訳者の小方伴子が、Pulleyblankの「可以」の解釈に対して異論を述べていた。

古漢語(Classical Chinese)おける“S+可以+VP”の“以”は、一般的には前置詞(“介詞”)として説明される。例えば太田辰夫1958は、「(可以は)がんらい2語であって〈…で…することができる〉の意味である」(p.196)と記す。現在、比較的よく用いられる古漢語語法の概説書、辞書、工具書をみても、その点は変わっていない。本書はこの“以”をuseという意味の他動詞であるとし、“可”の後ろで受動となっているとする。そして“可以”の主語は「道具」から「動作主」まで拡張されると述べる。つまり“王可以殺人”はもともとthe king may be used to…という意味であり、そこからthe king may be the agent to…という意味が生ずるとするが、かなり独特なとらえ方である。(Sは主語、VPは動詞句をあらわす)(IV章1、V章4)

実は、われわれの古典中国語Universal Dependenciesにおいても、前置詞の「以」は採用しておらず、全て動詞の「以」として記述している。ただし「可以」は「可─advmod→以」で表した上、「可」にauxを突き刺しているので、その点ではPulleyblankの解釈とも微妙に異なっている。たとえば「王可以殺人」であれば、以下のようになる。

1 王 王 NOUN n,名詞,人,役割 _ 4 nsubj _ Gloss=king|SpaceAfter=No
2 可 可 AUX v,助動詞,可能,* _ 4 aux _ Gloss=possible|SpaceAfter=No
3 以 以 VERB v,動詞,行為,動作 _ 2 advmod _ Gloss=use|SpaceAfter=No
4 殺 殺 VERB v,動詞,行為,動作 _ 0 root _ Gloss=kill|SpaceAfter=No
5 人 人 NOUN n,名詞,人,人 _ 4 obj _ Gloss=person|SpaceAfter=No

この解釈が妥当なのかどうかは、私(安岡孝一)自身、そんなに自信があるわけではないのだが、われわれの漢文解析エンジンは、少なくとも「可以」については、かなりちゃんと「読める」ようである。よければ「漢文の依存文法解析と返り点の関係について」試作サイトで、試してみてほしい。

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皆さんもソースを読むときに、行と行の間を読むような気持ちで見てほしい -- あるハッカー

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