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アメリカ合衆国

yasuokaの日記: タイプライターの名づけ親は誰なのか

日記 by yasuoka

ネットサーフィンしていたところ、講談社ブルーバックスのサイトで「6月23日 世界初のタイプライター(1868年)」(サイエンス365days、2019年6月23日)という記事を見つけた。

この日、アメリカの新聞記者で、発明家のクリストファー・レイサム・ショールズ(Christopher Latham Sholes、1819-1890)が取得した、世界初の実用的なタイプライターの特許が発効されました。

『タイプライターに魅せられた男たち』にも書いたが、クリストファー・レイサム・ショールズ/カルロス・グリデン/サミュエル・ウィラード・ソレーのアメリカ特許No.79265(1868年5月1日署名、1868年6月23日成立)は、さすがに「実用的なタイプライター」にはほど遠い。特許申請書を見ればわかるとおり、キーが21個しかない。しかも実際に製作されたモデルでは、キーを11個に減らして、ようやく特許を成立させたのである(『オフィス機器としてのQWERTYキーボード』写1参照)。アルファベット26字・数字8字(1と0はIとOを流用)・記号4字(ピリオド、コンマ、ハイフン、疑問符)を搭載した38キーの「実用的なタイプライター」は、私(安岡孝一)の知る限り、1870年4月まで遅れることになる。

なお、タイプライターという名前も、ショールズが試作機に命名したものです。

私の調べた限り「The American Type Writer」という名称は、ジェームズ・デンスモアの発案によると考えられる(cf. E. Payson Porter: "Porter's Telegraph College", Saint Joseph Herald, Vol.3, No.29 (1868年11月21日), p.3)。ただし、デンスモアもいきなりこの名称を思いついたわけではなく、ジョン・プラットの「Type Writing Machine」(Scientific American, Vol.17, No.1 (1867年7月6日), p.3)あたりがヒントとなっている可能性が高い。なお、ショールズ自身は、E.レミントン&サンズ社の初期モデルに「Sholes & Glidden Type-Writer」と名づけており(cf. "Ilion", Milwaukee Daily Sentinel, Vol.30, No.142 (1873年6月14日), p.2)、その意味では「試作機に命名」とムリヤリ言えなくもないが、それは上記の特許成立から5年後の話である。

まあ、グリデンもソレーもデンスモアも無視して、ショールズだけに注目したい気持ちはわからなくもないが、少なくともグリデンは、それを許さないと思う(cf. Carlos Glidden: "The New Type Writer", Scientific American, Vol.27, No.9 (1872年8月31日), p.132)。講談社ブルーバックスって、もう2000冊以上でてるはずなんだけど、これまでタイプライターをマトモに扱ったことがないのかしら。

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