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教育

yasuokaの日記: 日本規格協会の「標準化教育教材」におけるQWERTY配列 3

日記 by yasuoka

ネットサーフィンしていたところ、日本規格協会のサイトで「入門:標準化とビジネス」という標準化教育教材に出くわした。22ページにQWERTY配列が紹介されている。

我々が使っているキーボードのアルファベッド配列は、QWERTY配列と呼ばれる標準である。わが国だけでなく、欧米各国や、中国、アラビア語圏の国でも、QWERTY配列のキーボードが使われている。
世界的に使われている配列であるが、米国や英国の国家標準でもないし、国際標準化機関で取り決められた標準でもない。1882年、米国企業であるレミントンランド(Remington Rand)が発売したタイプライターにQWERTY配列は搭載された。その後、他の企業が造るタイプライターにもQWERTY配列が採用され、いつの間にか標準となったのである。

さて、どこから突っ込んだらいいのやら。とりあえず、Remington Rand社の設立は1927年なので、1882年にはまだ存在しない。米国の国家標準は、ANSI X4.7・ANSI X4.14・ANSI X4.23・ANSI X3.154がQWERTY配列を規定しており、その後はANSI INCITS 154がこれらを引き継いでいる。英国の国家標準は、BS 4822がQWERTY配列を規定していたが、2014年に廃止されている。国際規格としてはISO 2530があったが、1994年に廃止されていて、その後はISO/IEC 9995シリーズに引き継がれている。

というか、JIS X 6002『情報処理系けん盤配列』は現在も有効な規格なんだけど、日本規格協会の「標準化教育教材」なのに、なぜJISキーボードを真っ先に引かないんだろ。

この議論は、yasuoka (21275)によって ログインユーザだけとして作成されたが、今となっては 新たにコメントを付けることはできません。
  • 発見有難うございます。 確かにこの記述は間違っていますね。なぜ1882年という年を選んだのかも不思議です。この教材は、「教則 標準化とビジネス」という教材を短縮して作ったものですが、元々の教材ではキーボードの歴史には触れていないので、短縮する際に情報を追加しようとして間違ったようです。 なお、元々の教材でキーボードについて教える場合は、1971:ISO R 2126、1975:ISO 2530 、1972:JIS C6233、1982:ANSI X4.23について言及しますが、JIS X 6002の話はしないことが多いです。
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    • by yasuoka (21275) on 2021年07月14日 17時08分 (#4070756) 日記

      1882年は、Wyckoff, Seamans & Benedict社が「Remington Standard Type-Writer No.2」 [sanseido-publ.co.jp]を発売した年なので、それかなぁ、とは思うのですけど、だとすると発売元を勘違いしてるみたいなんですよね。このあたりのことは『タイプライターからコンピュータへ:QWERTY配列の変遷100年間』 [sanseido-publ.co.jp]でも書いておいたのですけど、なかなか読んでもらえないようです。

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      • by manabue (49409) on 2021年07月16日 12時25分 (#4072234)
        私も最初はレミントンのNo2の年だなあとは思ったのですが、たぶんこの記述は、「業界標準と互換機戦略」牧野武文(2013)の冒頭の記述を拾ったのではないかと思います。この本、amazonで100円で買えるので、「標準」で検索して見つけて読んでいる標準化関係者も多いようです。しかし、キーボードの事例を細かく書きつつも、「業界標準と互換機戦略」というタイトルを付けるような標準化を理解する中身にはなっていないので、私の講義や講演では、キーボードの歴史に関しては、この本を読まずに安岡さんの本を読むように薦めています。
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