yosukeの日記: いい質問。 3
TPSJメール・YMコラムより、ISAS宇宙学校での質問。
「音速が温度によって変化する公式を教わりましたが、その公式に当てはめると、音速は5億度になると光速に達するほどになります。そんなことが起きるのですか?」
高校生までしかいないということは、たぶんこの公式は、tの一次式で表されるものなのだろう。とすると、ここには確かに、物理と数学の面白い話があるといえるのかも。
さて、そのtの一次式で表される音速の公式。
これは、理想気体中での音速の式√(κRT)を常温付近でTaylor展開したものの一次近似である。
ということで、常温付近とはいえない温度は、この式の適用範囲を超えている。
では、元の音速の式はどうなのか。
これは、圧縮性流体の基礎方程式であるNSの式に微小な擾乱を断熱で加えた際に導出される波動方程式から出てくる波速√(P/ρ)|dS=0に理想気体の状態方程式を代入したものである。
実は、実在の気体が理想気体として扱えるのは、かなり限られた温度範囲であり、常識の範囲の高温や低温でもこれからかなりずれることは、高校の教科書にも載っている話である。この式も適用範囲を超えている。
さらに遡り、√(P/ρ)|dS=0は?
この式の適用範囲は、流体の基礎方程式の適用範囲である。ということは、連続体近似が成り立つかどうかが問題となる。連続体近似とは、分子の運動の情報(ミクロの情報)を必要とせず、マクロな情報(圧力・密度など)だけで力学を記述するものであり、その適用範囲は分子の平均自由行程と代表長さの比であるKnudsen数で決まる。もし、Kが1よりも十分に小さいのであればこの式は成立する。もし5億度であっても連続体とみなせる物体があり、基礎方程式が変わらないのであれば、その物体のρ・P・Tの関係を代入すれば音速を求めることができるだろう。
さて、では5億度の物体とは、どのような状態なのか。
こんな温度が存在するのは、恒星の中心部かビッグバン直後くらいであり、あらゆる物質は電離しているだろうし、圧力によっては核融合だって起こるだろうから、基礎方程式はかなり違ってくるだろう。
光子だって直進できないから、マクロな情報量である光速だってかなり変わってくる、というか遅くなる。これ以上をしっかり考えることは、私の手にはかなり余ってしまう。
ということで、もっといい加減に考える。
そもそも、音速とはなんなのか。これはある点に加えられた微小な擾乱が伝播する速度である。ある分子・原子・陽子…に加えられた擾乱が、なんらかの相互作用によって、隣接するものに伝わっていく。流体中では、ある分子が自由行程分移動して、隣の分子と衝突することによって伝わる。固体中では分子間力によって伝わる。
恒星の中心では?電磁気力になるのか重力になるのか。しかし、光子にせよ重力子にせよ、伝播速度は光速である。やはり音速が光速を超えることは決してないのだ。
まあ、最後の段以外は余計なものに近いんだけど。
ところで、この質問を受けた講師陣は、どのように答えたのだろうか。それには興味があったり。
音速>光速? (スコア:1)
音を伝える媒質は結局のところ、粒粒に還元できます。これらの粒子は光速を超えられないです。このことから、音速は光速を超えられないことが説明できます。
# え、固(液)体中の音波??
# …固体を構成する力が、クーロン力(電磁波)である以上、光の速度を超えられないと思いますが。
Re:音速>光速? (スコア:1)
ですね。最後の方ではそれに近いことをいいたかったんですが、あまり単純になってないかも。でも、音というものは結局何なのか?ということを理解させないと、説明もうまくいかないかもしれません。
教師とか講師って、こういう質問に答えなきゃいけないのかと思うと、大変そうだなぁと。
#普通の教師は"そんなことはありえない"って答えて終わるのかもしれないけど。
Re:音速>光速? (スコア:1)
音が何か、というのは結構難しいですよね。
音としてそのものの性質には、音速にリミットがないですしね。位相速度と群速度をわけなくちゃいけないし。
でも、波動にたいする謎も現代物理の入口のひとつだと思うので、きっちりやっておいて損はないのですが。