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yosukeの日記: 時間封鎖。 4

日記 by yosuke

#マイコプラズマ肺炎。通常モードで動けないことはないけど辛い。

時間封鎖 SPIN/ロバート・チャールズ・ウィルスン Robert Charles Wilson
時に架ける橋の著者なのね。言われてみればさもありなんという感じ。読んでいてほっとするというか何というか。コミックリリーフも効いているし。内容はSF。時間傾斜を使った問題解決のアイデアは素直に面白い。ウラシマ効果で文明が物語の外で進む話はよくある気がするけど、この無理矢理なお膳立てを上手く使っているのはSFらしいと思う。人物描写もまあちゃんとあって、ヒロインその他に感情移入できるかどうかは置いておいて、それについて特別にいいたいことはない。三部作らしいので続編も出た瞬間に買うと思う。引きが続きをぜひ読みたくなる出来だったし。
それはいいとして。問題は下巻にある訳者あとがき。

それでもなお、微に入り細に入り人間を描く本書の味わい深さは、がさつな文章で科学理論とガジェット類ばかりを詳述するタイプの作品に比べ、文字通り雲泥の差があると思う。

訳者あとがき p358
 

三部作の全体像はさておき、こと本書に限っては、グレッグ・イーガンというオーストラリアのSF作家が書いた『宇宙消失』という作品に、設定が似ているという話も一部にはあるらしい。この点について同席していた編集氏が質問すると、ウィルスンは「あの本は読んでいないんだ」と答えた。当然ぼくも未読だったため慌てて読んでみたところ、〜(SNIP)〜、夜空からいきなり星が消えた二十一世紀の地球だった。たしかに、膜/壁によって封鎖されるという点は共通しているものの、イーガンの作品に時間傾斜という概念は導入されていないし、読み進めてみれば、ナノテクによりサイボーグ化された人間たち(稚拙な表現なのは承知しているけれど、ほかに思いつかなかった)が、量子論の難解な理論や仮説を滔々と述べたて、かれらの講釈に単純な物語が追随するという、本書とは正反対のベクトルに向かう極めて科学的な内容だった。

訳者あとがき p362

0. "宇宙消失"はサイボーグじゃなくてナノマシン。誰が何と言おうとも。っていうか、そういうんだったら本書だってサイボーグでしょ。
1. 他の本を貶めても本書の価値が上がるわけではない。個人の好みの表明は別に構わないけど。ついでに、引用部の最後はどちらの作者にも失礼だと思う。
2. 誰に向かって創元SF文庫の本を売るつもりなのか。想定読者の多くに喧嘩を売るような態度は営業的にどうなのか。
3. イーガンを"当然ぼくも未読だったため"なんて(実際に読んだのか気に入ったかはどうでもいいとして)うっかり表明してしまうような人間はSFに近づいちゃいけないと思う。"宇宙消失"と"順列都市"が出た1999年は、日本でも話題を席巻してたじゃん。

個人的にはジャンルって愛とか思い入れがないとダメだと思う。百歩譲って愛がないのはいいとしても、けなすような態度なのはどうかと。まあ訳文にはそんなに不満はないから、仕事としてこなすのでもいいけどね。この物語が読めたことは単純に嬉しいし。
#というわけで、お仕事なのでとっととAxisを訳してくれることを希望。

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