zokkonの日記: 英単語集の歴史(6)
「英単語を暗記するのは英文を読み,書くためであるから,読むべき英文とともに覚えるのが効率的である」と主張して,単語のリストと英語の文章を1つのパッケージで提示した『速読英単語』は画期的なものであったが,同じ版元から,同じ方法論を用いて,対象を大学受験生から一般社会人にシフトさせた『速読速聴・英単語』というシリーズも刊行されている。 刊行順に,Core 1800(現在は ver.2),Advanced 1000,Basic 2200 というラインナップである。Basic 2200 を除き,収録した文章は,新聞や雑誌の記事を用いている。
この合理的なアプローチにも,限界はある。
辞書の世界で「作例か実例か」というテーマで議論されることがある。実際の英文で使われた例こそ「生きた英語」であるとする COBUILD の立場に対して,「必ずしもその語の用法をつかむのに適した英文ばかりが選ばれているとはいえない」「初学者の理解しにくい難語や固有名詞が含まれていることがある」といった批判がなされたのは記憶に新しいところである。こうした単語集でも同じ問題が発生する。見出し語を含む文が登場していても,必ずしも典型的な用法で表れるとは限らないし,非標準的な用法で表れることさえありうる。
ただし,文脈をもつ文章が示されている以上,ミクロの語の用法が非典型的なものであっても,文章全体からその語の意味をつかむことは可能であり,編集サイドで意味や用法の似た語を示すなどして補うことは可能である。この種の冗長性が許されるのは辞書にはない利点だと言えるのではないか。
ところが現実には,前掲書のほとんどは,見出し語としてリストに示した語のすべてが文章の中に登場するわけではない。最初に「覚えるべき語のリスト」を作成し,その後でその語が登場する英文を選定していくという作業工程になるので,拾いきれなかった語というのがどうしても出てきてしまうのである。もちろん,語の重複をいとわずに潤沢にページを使えば,すべての語を網羅することは可能なのだが,そうすると効率が下がってしまう。いかにして収録語の効率を高めるか(変な言い方だが)は,制作側の大きな課題だと言える。
現状では,文章に含められなかった語の処理は,短文やコラムなどの形で示すことにしてある。『速読速聴・英単語 Advanced 1000』では,英英辞典での定義文の方式を借用している。
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