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Maxの日記: 飛翔

日記 by Max

先日登山した山の中腹に「仙人岩」というのがあった。
登山者はふもとに向かってゆるく傾斜して突き出ているその岩のかなり先まで歩いていくことができる。天気が悪くガスっていたので、岩の先にどういう風景が広がっているのかわからないが、おそらく高所恐怖症の私にとっては死ぬほど怖いに違いない。

地元の古伝に曰く、山岳仏教の修験地であったこの山で、岩の先端から位の高い修行僧が下界を俯瞰して衆生の安寧を願ったという。が、私はここは一種の通過儀礼に使われた場所ではないかと思った。それほど畏れを抱かせてしまう場所だった。

ここから飛翔する何者かのイメージが私の脳裏からは離れなかった。
断崖に立ちながら、何者かがここから飛び立つようにずっとささやき続けているような気がしてならない。

いや、実際にここから飛び降りる愚はする気はないが、
「おまえはいつまでそこに居るつもりだ?」
と漠然とした「そこ」に安住(でもないのだが)している自分に対して問われているような気がした。

スラッシュドットに登録してから3年になる。

ちょっとまえに「そろそろ終わろう」と思った。そのときは単なる気分だったのもあるのだが、ある方から「やめないで」と言われたのでアッサリと継続したのだが、気がつくとその人もここから去ったようだ。
で、私は自分がここに居る事の意味を考えたりし始めた。

システム的な問題や、スタッフの素養に対して疑問を呈する人も多かった。私もそれを何度か思ったりしたが、そんなことはどうでもいいのだ。ここはそういう場であるし、人間とはそういうものだし、新しい場を自分で作ることもすでにあるほかの場に軸足を移すこともできる。

私にしては珍しい継続ぶりだったと思う。日記は社会人になってからノートにつけていた時期があったが、その時ですら2年も続かなかった。また、それを人に読まれてしまうというトラウマがあって(どんなに親しい人に対しても、個人的な秘密というのはあってよいと私は思っていたので、たとえ身内であれ読まれてしまうことで私は傷ついたのだ)、ここで書く『公開日記』がどうなるのかは自分でも疑問だった。

それがここまで来れたのはWeb上でのお付き合いもオフラインでのお付き合いも含めて、非常に有益な交流をさせていただいたからに他ならない。精神的な支えをここでいただいたこともあるし、日記や表の話題のおかげで公私共に役立ったことも何度もあった。私がこことか表で書きなぐったことで、誰かの役に立つようなことがあったとしたらうれしいが、それ以上にこの場で私に対して少なからず関心を抱いていただいた91名以上の皆さんと、このシステムを維持しつづけたスタッフの皆さんには偽りも腹蔵もなく心から感謝したいと思う。

幸いにして匿名による投稿で日記が荒れることもなかったが、好き勝手に書いている私が片隅の放置された存在であるだけではなく、何か私の目に見えないところで暖かな多くの手が私の存在を庇護してくれていたような気がしてならない。私を巡るS/N比が高かったのはそういった方々が私を見ていてくれたからだろうと改めて思う。あとで読み返して、「あのときの匿名氏が誰だったのか」についても思い当たることも多々あった。

匿名に対する批判も多いが、無名の善意を注ぎつづけた人も私の知る限りは居た。匿名という手段を有効に使えない人々が多いことが私には残念だ。

ここにき始めた3年程前、私は閉塞した状況だったと思う。
閉塞した状況は新たな天地を求める意欲に結びつく。私はあのとき、ここで技術系の情報収集をしようという意図以上に、ひそかに自分の世界を新たに作ってみようと思ってたどり着いたに違いない。

しかし、3年経って私はやはり大きな環の中を一周しただけのような気になってきた。3年前に書いてある日記と今を比べてみて、また同じ所に立っている気がしてならない。離れがたいという思いも強いが、ここから飛び立てという、内心からのささやきを制止できない。

この日記エントリを以って、スラッシュドットジャパンへの投稿や書き込みは終わりとする。

閲覧することはあるかもしれないだろうが、投稿はないでしょう。そう宣言するために長々と書いている自分はまだたぶんに「スラッシュドット依存症」から抜けきれていないし、そもそも「さほどシリアスに意見を書く場所ではないのに」という声もあるだろう。
Yesと言っておこう。ここは居心地良かった。しかし、他にもネット上の居場所(これから先どういう展開になるか判らないが)もあるし、私自身が消えてなくなるわけでもない。私のガイド役を引き受けていた方が私に言ったように「ただここには居ないというだけのこと」だ。他の場所に、私は私とわかるように多分居るわけだから。さよならも不要なくらいだ。

でも、ここでかかわった皆さんに対して自分としてはひとつ区切りをつけておきたいと思った。

みんなありがとう。

というわけで、ちょっくら他のところに飛んでいってみるわ。
ではみなさん、ごきげんよう。

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にわかな奴ほど語りたがる -- あるハッカー

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