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日記

akiraaniの日記: 映画「Winny」見てきた(ネタバレあり注意)

日記 by akiraani

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最初に断っておくと、この映画の元ネタになった Attorney@law は連載当時からずっと追いかけていた。
Attorney@law は、金子氏の弁護人であった壇弁護士が当時のことを書き起こした回顧録。映画で描かれていた金子氏の人となり、数々の迷言の類いはだいたいここに記されている。

というか、少なくとも金子氏まわりのエピソードについてはほとんど盛られてなかった。
じゃあ回顧録の内容をなぞるだけだったのかというと、そういうわけでもない。
意外なことに、法廷闘争に関わるシーンが大幅にカットされている。
というか、地裁判決以降の裁判に関わるシーンはほぼまるごとカットである。このため、無罪判決が出たシーンはドラマとしては再現されず、本物の金子氏が無罪の紙を掲げる当時の写真が出てくるのみだ。逆転勝訴的な法廷ドラマを期待してこの映画を見ると、とんだ肩透かしを食うことになる。

少なくとも、この映画は勝訴に至るまでの法廷闘争を描いたドラマではない。

映画内では、Winnyの事件と平行して警察の裏金問題を実名で内部告発した仙波巡査部長の事件も描かれている。劇中のWinny弁護団がそちらの事件に関わることはないし、Attorney@law でもこの話はまったく出てこない。
悪いことをしているとわかりつつ、周囲の圧力で偽領収証を受理して裏金作りの片棒を担がざるを得ない若い警官、実名で告発をしたために尾行され、嫌がらせや恫喝をうけるといったシーンが印象的に描かれている。
警察の裏金問題は、Winnyへ警察内部資料が流出したことがきっかけで報道メディアが動く、という形でちょっぴり関係する形になるが、それだけ。
しかし、その次のシーン(法廷での陳述)で金子氏が、Winnyが匿名性を持つ意味についてFreenetプロジェクトを引き合いに出して説明する。ここで、始めてWinny事件とつながることになる。

あくまで暗喩の域を出ないので、知らずに見ていると気付かない人もいるかもしれないが、仙波巡査部長の告発事件はWinnyの匿名性がどうして必要だったのか、という疑問への回答になっている。
もし、仙波巡査部長や若い警察官が匿名で発言できるプラットフォームにリーチできていれば、危ない橋を渡って実名告発をする必要などなかった。仙波巡査部長が内部資料をこっそりWinnyネットワークに流して新聞社にコンタクトを取れば、数々の嫌がらせを受けることなく安全に不正をただすことが出来た。
少なくとも、自分はそう言いたいが為に追加されたエピソードに思える。

そして、Winny事件が最後どうなるのかついては、無罪確定後の金子氏のことを知っている方には説明不要だろう。
一言で言ってしまうと「嫌な事件」だった。あった事実がシンプルに告げれるのみ。

警察と司法、メディアのあり方など、社会派的に語られるテーマももちろんあるんだけど、この映画を通じて関係者が一番伝えたかったことはたぶんそれらではない。
おそらく「金子氏のピュアすぎる人となり」と「匿名で情報発信できるプラットフォームの意義」を描き、当時の報道などで植え付けられてしまった金子氏の誤った悪評を正して、貶められた名誉を回復したい。そんな思いが一番に込められている。

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