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日記

aruto250の日記: 令和のああっ女神さまっ『おとなりに銀河』1巻

日記 by aruto250

『甘々と稲妻』の雨隠ギドの新刊『おとなりに銀河』の1巻を読んだ。前作は妻を亡くした男性の子育てを描いた作品だったが、今回は親を亡くした青年が年の離れた弟妹を育てる話ということで、こういうのが好きな作者なんだろうか。主人公はアパートを経営しつつ漫画家(しかも高校生デビュー)として生計を立てており、アシスタントが独立して人手が足りず困っていたところへ有能アシスタントとしてヒロインが現れるという導入だ。このヒロインは離島に住む一族の「姫」をやっていて不思議な力を持っているのだが、アクシデントにより主人公と「契約」をしてしまう。本来は婚姻の相手と交わすはずの「契約」の力により、主人公とヒロインは離れられない強制力に縛られることになるが、ヒロインは元々主人公の漫画のファンで満更でもなく…という、この流れにはどうしても『ああっ女神さまっ』を思い出さずにいられなかった。ただ主人公がやっているのがバイクいじりでなく漫画というのが80年代と令和の時代の差といったところか。しかしこのヒロインの造形がとても好みなのだけど、改めてどうも自分はお嬢様キャラクターが好きなのだなあと思わされるなあ。それこそ昔好きだった女神さまっの影響だろうか。それともさらに昔に読んだ少女漫画の影響か。だが∀ガンダムではディアナ様よりソシエ派だったのできっと自分はショートカットの次くらいに好きな属性のだろう。話がそれた。

ともかく主人公が住み込み大家をやっているアパートにこのヒロインが入居してきて、一緒に買い物したり、強制力の性質を確かめる実験として離れたりくっついたりするなどして距離を詰めて来るのに対して好意を抑えようと苦悶する主人公なのだが、1巻の残り1/5辺りからの畳み掛けが激しく、ヒロインが主人公の幼馴染みへの嫉妬を自覚するところから緊張感の堤防がガラガラと決壊していく。このあたりは2巻への「引き」というか、興味を持続するための盛り上がり、あるいは1巻からすでに中だるみし始めてしまったことへのテコ入れなのかも知れない。ヒロインはお嬢様タイプのキャラクターで、先に書いたように個人的には好きな造形なのだが、お嬢様以前に漫画家気質というか、昨今流通しているいわゆる「オタク同人女」的な振る舞いが多く描写され、「これが○○…!」とニマニマしたり、憧れの漫画家を前に取り乱してどもったりしている。こうした描写はおそらく同人活動をしている人には同人あるあるとしてウケるのかもしれないが、自分としてはその取り乱す様を可愛いなと思うくらいで今一つノリ切れなかったので、1巻の中盤にテンションを感じ取れずに中だるみを感じてしまった。こうした「同人あるある」を読み手の素養に前提として求められるというのはとても現代的で、今一つ乗れない自分が既に古い世代になってしまったと実感させられた。

そんな感じで色々考えさせられるところはあれど、ともかく1巻終盤からのヒロインの可愛さは素晴らしい。特に「今夜はこの素晴らしい気持ちのままでいたいのです」には初々しい恋愛のリリックを感じて、また咄嗟にそういう反応をできるヒロインの性格に、とてもうれしい気分になった。そうだよねえ、その気持ちは大事にしたいよねえ、と。またその時の記憶をを意識しないようにしても勝手に思い出されて焦る主人公の描写も、なんだかとても分かる感じがして微笑ましい。この先、同人あるあるネタを中心に展開されると付いていくのが難しくなるかも知れないけれど、その見極めも兼ねて、2巻が楽しみになる作品だった。中年の枯れた心に一瞬、恋愛のトキメキを思い出させてくれた漫画でした。

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