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masakunの日記: 【スクラップ】相変わらず不透明なPowerPCの行方

日記 by masakun

相変わらず不透明なPowerPCの行方(古い雑誌からの切り抜き)

■MotorolaはWindowsNT3.5採用のPowerPC搭載PCを発表し、
ベンダーもWindowsNT3.5に照準を合わせる

 COMDEX/Fallの柱のひとつとされたPowerPCだが、肝心のPowerPC搭載パソコンに関する明確なアナウンスは行われなかった。代わって行われたのは、米IBM幹部によるさまざまな「釈明」である。しかし、それを聞けばきくほど、浮かび上がってくるのはIBMのPowerPC戦略の先行きの不透明さである。

リリース時期はいったいいつなのか?
 最も肝心な点が、PowerPCのリリース時期である。94年10月とされていた出荷時期は95年春に延期されている。では、本当にこの時期のリリースが可能なのだろうか。
 PowerPCが10月発売を見送ったのは、よく知られているとおり搭載するPowerPC版OS/2の開発の遅延によるものである。だが、「公式」には米IBM幹部はこのことを認めていない。
 たとえば、リック・トーマン上席副社長はCOMDEX/Fallでの記者会見で、「音声インターフェース”Charlie”の遅延が理由」とし、PowerPC版OS/2の開発は順調に進められていると述べている。
 だが、実際にこの言葉を信じる米業界関係者は少ない。少なくとも、11月中旬の時点までに、ISV(独立系ソフトハウス)を対象にしたβテストが行われていないからである。
 現時点では、年末までにβ版を配布するとアナウンスしているが、どんなに早く見積もっても95年前半でのPowerPC版OS/2の出荷はむずかしいと考えざるをえない。
 トーマン氏が示唆したのは、PowerPC本体を先行して販売し、PowerPC版OS/2を追って発売するという方法である。ただし、これはOSの開発が順調に進められるという前提にたっての戦略である。おそらく、PowerPC版OS/2の発売は来年の夏から秋にずれ込み、IBMはPowerPC投入時期とPowerPC版OS/2のリリース時期を巡って苦しい判断を迫られることになるはずだ。

OSはなにが「本命」なのか?
 PowerPC版OS/2のリリースが遅れるとすれば、先行して発売されるPowerPCにはどんなOSが載るのだろうか。
 一番単純な方法は、AIX搭載である。これであればすでにPowerPC搭載ワークステーションで実績もあり、たやすいことだろう。だが、PowerPCの価格(これも最終的にわからないことのひとつだが)が、予測されている最低ラインの3000ドル弱でリリースされたとしても、AIX搭載のマシンを買うユーザーがどれほどいるだろうか。
 PowerPCは、IBMにとって乾坤一擲の大勝負である。その最初のスタートで「あまり売れなかった」という実績を残しては、あとあとに禍根を残すだろう。
 となると、次なる手段は、やはりすでに実績のあるPowerPC版MacOSの搭載である。知られているように、米IBMはAppleとの間で広汎な提携を結び、MacOSを扱うことも明らかにしている。
 しかし、やはりCOMDEX/Fall席上で、PowerPersonalDivisionの三井信雄副社長は、「MacOSのライセンスを受ける考えはない。あくまで代理店である」と話している。ライセンス供給を受けてマシンに搭載すればサポートはIBMとなるが、そこまでやる気はないというわけである。つまり、MacOSはIBMにとってはあくまでもユーザーの選択肢を広げるものであって、なんらかのかたちでそれに頼るものではないのだ。
 おそらく、IBMの選択肢はAIXしかないのではなかろうか。
 もうひとつWindowsNT3.5という選択肢があるが、これはとうていIBMにとって受け入れられるものではない。
 しかし、当座のOS以上にわからないのが、IBMがPowerPCでどんなOSを本命に押していき、どれだけの普及を図るのか―という明確な方針である。
 考えられるのは、PowerPC版OS/2、そしてWorkplaceOS、あるいはそれ以外のなにかである。
 このうち、OS/2は、不透明ながらもとりあえず開発スケジュールが見えているという点で現実的な選択だ。しかし、新味には乏しい、ISVもユーザーも、OS/2対Windowsという構図が続くことにはもううんざりだろう。新しい酒には新しい革袋が必要との喩えもある。
 従来は、WorkplaceOSがPowerPCの本命OSとされてきた。では、WorkplaceOSはどうなったか。
 残念ながら、これについては判断できる材料がまったくといってよいほどない。OS/2のWorkPlaceShellを除けば、WorkPlaceOSに関する具体的な進捗はほとんど感じられないからである。
 βテストに入っているのはマイクロカーネルの部分であり、マイクロカーネル上で動作するOS(WorkplaceOSでいうパーソナリティ)については、βテストのスケジュールすらまったくアナウンスされていない。このテストは、相互の互換性やハードごとの対応など、従来のOSのβテストとは比較にならないほど慎重にならざるをえず、しかもテスト機関が必要と考えられているにもかかわらずである。
 最近ではDOS版WorkplaceShellの開発が中止になるという話が流れるなど、どうもWorkplace関連では後ろ向きの話題が多い。
 93年末のリリースを目指して開発されていたWorkplaceOSだが、おそらくいまのペースでいけば、95年中のリリースはおろか、96年前半のリリースもむずかしいだろう。いや、WorkplaceOSの開発そのものが頓挫する可能性さえ否定できないのだ。
 第三の道はどうだろうか。
 先頃、PowerPCに関してIBMとMotorola、Appleの三者間で共通のハードウェアプラットフォームの仕様を決定し、OSや周辺機器を自由に選択できるよう進めることで合意している。
 しかし、この仕様に準拠したPowerPCの出荷は96年以降になるだろうし、OSそのものについては共同開発する意向のないことを、IBM幹部がCOMDEX席上で明らかにしている。これまでのPowerPCの出荷遅延が、OS/2の製品としての生命を守るという一点にかかっているだけに、それを捨てて新しいOSに飛び付くとも考えにくいのである。
 結局、当面同社はPowerPC版OS/2を軸に戦略を考えると思えるが、その普及の可能性となると、大いに疑問である。

PowerPCの標準OSはWindowsNTになる?
 IBMがこれほどまでにモタモタしているのは、PowerPCというハードウェア戦略と、OS/2というソフトウェアの戦略が密接に結び付いているためである。しかし、いまのパソコン業界では、IBMは単なる1プレーヤにすぎない。IBMが製品を出さなければ、状況はIBMを置き去りにして進行していくだけのことだ。
 IBMは、すでに94年夏頃から大手デベロッパー向けに絞ったPowerPCハードウェアの提供を開始している。しかし、PowerPC版OS/2が提供されていないため、ISVのなかには、PowerPC版WindowsNT3.5をベースにアプリの開発を進めているところがふえている。これは痛切な皮肉である。
 PowerPC「互換機」の発売を進める他のメーカーも同様だ。それも、台湾メーカーばかりではない。
 PowerPCではIBMとタッグを組んでいるはずのMotorolaのコンピュータグループが、やはりCOMDEXで、PowerPC搭載PCの来年第1四半期の発売を発表した。この「PowerStack RiskPC」に関して同社は、WindowsNT3.5のPowerPC版を採用し、PowerPC版WindowsNT3.5のライセンス供給契約をMicrosoftと結んだことを発表している。
(遅刻常習犯のMicrosoftの話を信じるとすれば)PowerPC版WindowsNT3.5のリリースは来年第1四半期とされており、すでにISV向けの開発ツールの提供もスタートしている。
 このため、リリース時点ではMS-WordなどのMicrosoftのビジネスアプリのほか、WordPerfect(Novell)などのビジネスアプリのWindowsNT3.5バージョンもネイティブモードで動作することになるはずだ。
 ハード/ソフトの両ベンダーとも、PowerPCの搭載OSとしてWindowsNTに照準を合わせ始めているのだ。
 Microsoftとintelの牙城を崩すべく用意されたPowerPCが、皮肉なことにMicrosoftのWindowsNTの普及を助け、OS/2をいっそう窮地に陥れる可能性が増してきている。
 これは、PowerPC版WindowsNT3.5とPowerPC版OS/2のリリース時期が開けば開くほど、現実味を増してくる。
 OS/2では相変わらず孤軍奮闘が続き、肝心のPowerPCでは「互換」メーカーに遅れを取る―この悪夢のシナリオが、IBMのためにも杞憂であればよいのだが・・・。

《電波新聞社刊PCWave誌1995-1月号p23-4より》

杞憂というか現実になってしまったのですよね。ガースナー会長はMicrosoftとの直接対決を避け企業収益を改善させるために、Warp4リリース直前の1996年にコンシューマー向けに開発が進んでいたx86版OS/2の路線を変更、企業向けに特化していくことにしたわけです。そしてβテスト中のPowerPC版OS/2はお蔵入りとなり、2005年に倉庫在庫が一斉処分されたと聞きました(Warpstock 2005での話)。

PowerPC版OS/2のリリースが1994年後半で、かつIBMソフトウェア部門のマーケティングがMicrosoftより上手だったら、PowerPCマシンがPentiumマシンを駆逐していたかもしれません。

しかしIBMはMicrosoftを敵視するよりも、OS/2を降格させてMicrosoftと仲良くなってミドルウェアに注力する方を選んだわけです。実際のところ21世紀までの数年間、何度もOS/2サポートをの終了がが検討されたものの、IBMは2005年12月までOS/2の販売を続けていました。しかも「顧客の要望のため」2019年まで何がしかの形でOS/2を提供すると非公式に表明。

ちなみにビル・ゲイツ氏曰く「OS/2はLinuxよりも脅威だった」とか。

(OS2.jpの投稿はおそらく僕が書いた記事だから丸ごと引用しても問題なかろう)
時代は流れ、今IBMはLinuxを推しています。これからIBMの手によってMicrosoftの脅威となれる日がLinuxに来るのでしょうか?

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