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tsuyaの日記: 時事ネタ: WBC日本vs米国戦は歴史を左右する大一番

日記 by tsuya

これを書いている時点で、第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝、日本vs米国戦プレイボールまで9時間を切っている。連覇を目指す日本と、ベースボールの祖国アメリカの大一番は、本命同士のビックカードというのみならず、その結果がWBCの行く末をも左右しかねない歴史的な勝負である。

2006年に第1回が行われたWBCは、100年を優に超えるベースボールの歴史でようやく実現したプロフェッショナル水準の国際大会(オリンピックを越える、という意味で)だが、これから第3回以降を継続して行うのは容易ではない。まず、興行的な利益を上げ続けられるか不透明であることが根本的な問題。そしてそのわりに、メジャーリーグベースボール(MLB)や日本プロ野球(NPB)をはじめとする世界のプロリーグの開幕が直後に控えていて選手の負担が小さくなく、したがって今後引き続き選手の参加を得られるかどうか分からないのだ。

このこと自体はやむを得ない現実である。MLBの肝いりで国際大会を実現したからといって、最初から高いステータスを確立するのは無理な相談である。現在隆盛を誇るサッカーのワールドカップだって、最初から現在のようなステータスがあったわけではないだろう。だから、WBCの地位向上はこれからやればよいし、これからやらなければならない。

ここでもっとも大きな障害となるのが、たびたびマスメディアで伝えられている、アメリカ人野球ファンのWBCへの関心の低さである。その原因をもっともわかりやすく象徴しているのは、MLBシーズン優勝決定戦がワールドシリーズと呼ばれていることだろう。米国内選手権でしかない大会に世界大会と名づけて満足してしまうお国柄なのだ。確かにMLBのレベルはNPBですらその追随を許さない、疑う余地なき世界一の強さだから、これもある意味ではやむを得ないことだ。

しかし、だからといって米国内に閉じこもって世界の市場にアクセスしないのは、少なくとも経済合理的とはいえない。だから、バスケットボールなどに比べて相当に出遅れたにせよ、2006年にWBCを始めることによってベースボールの国際化に着手したのはMLBの正しい決断だ。もちろんビジネス的な意味だけでなく、ベースボールという素晴らしい競技の名声を世界に広めるのだ、という夢をかなえることにもなろう。だが残念なことに、ビジネスが夢を伴って始動したとしても、観客が支持してくれるとは限らない。幸い日本や韓国ではブームに火がついたし、ビジネスとして今後も有望と見られるが、やはりアメリカ人がついてきてくれないと経済的には苦しいだろう。

そこへ今回、準決勝で実現した日本vs米国戦である。はっきり言って、WBCの今後の発展にとって最善の結果は、米国チームに勝ってもらうことだろう。アメリカ人の関心の低さの理由は、もともとWBCが「世界選手権パート2」でしかなかった上に、第1回が2次予選敗退という情けない結果で終わったことが大きく響いていると思われる。しかし第2回大会で無事優勝すれば、"USA is No.1!" という当然の事実を最高の盛り上がりで確認できたアメリカ人ファンは溜飲を下げ、出場した選手達や監督・コーチ陣はヒーローになり、次回を待望する心境に変化することが期待できる。逆に今回も勝てないようだと、「当然世界一の俺達が優勝できない大会なんておかしくね?」という感情を増幅させるだけに終わり、関心がさらに離れていく懸念が大きい。そうなると米国チームはまたもヒーローになれず、「何故MLBの所属チームでの仕事をおろそかにしてそんな無意味な大会に出るのか」という批判的感情の方が高まるだろう。MLBのトップクラスで活躍している個別の選手たちは、いうまでもなくそちらの仕事に専念する方が経済合理的な高額所得者だから、名誉を得られない上にカネも失うリスクが小さくないとなれば、WBCへの出場など愚かだ、という共通認識がさらに強化されるだろう。そうなれば当然、米国民もWBCなど見ない。世界進出がWBCの目的とはいえ、最高峰であるはずのアメリカチームがベストメンバーに程遠い有様では、それを倒そうとする他の国々の盛り上がりにも水を差す。そうなれば、未曾有の世界的不況にさいなまれているWBCのスポンサー確保も難しくなり、それは第3回WBCの開催を危うくするだろう。

そんな事情があるとは分かっていても、当然日本チームもディフェンディングチャンピオンとして負けるわけにはいかない。お互い全力で戦うしかない。結果が重要なのはいうまでもないが、好試合を見せることももちろんファンを引きつける重要な要素だから、両国とも最高の内容を目指すことが第一だ。

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