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yasuokaの日記: QWERTY配列に対する誤解 2

日記 by yasuoka
知識plusにも書いたのだけど、QWERTY配列に対する誤解は、あまりに多い。とりあえず、橋本毅彦の『〈標準〉の哲学』(講談社, 2002年3月)から、以下の部分を取り上げてみることにする。

ショールズは、自分の作りたてのタイプライターでは、キーを素早く叩くと、キーの動きを印字に伝える金属棒(タイプバー)がからまってしまうことに気づいた。何とかタイプバーがからまないような工夫はないものか? そこでショールズは、キーの配列を変え、続けて打たれるようなキーがキーボード上に離れてあるよう配列し直した。その結果、キーを叩くスピードは遅くなったが、タイプバーはからまないようになった。その配列こそが、現在の標準配列として生き残ることになったQWERTYの配列だったのである。

アルファベット2文字の組み合わせのうち、英語では「th」を続けて打つことが最も多いのだが、この2字はQWERTY配列では非常に近接して並べられている。その次が「er」+「re」だが、これもQWERTY配列においては近接している。キーボード上で離れてなどいない。
また、Christopher Latham Sholesが創ったupstrike式の「Type-Writer」は、20世紀以降主流となるfrontstrike式のタイプライターとは印字機構が全く異なっていて、印字棒がからむこと自体起こりにくい。たとえ印字棒がからんだとしても、Sholesの「Type-Writer」においては、キー配列と印字棒の配置との間に自由度があるため、印字棒の配置だけを変えることができる。実際、Sholesの試作品(1872年)と市販品(1873年)との間では、キー配列にはそう大きな違いはない(ここの第1図と第2図aを参照)のに、印字棒の配置は全く異なっている(ここのU.S.Patent No.182511とNo.207559を参照)。「印字棒がからむからキー配列を変えた」などというのは、根も葉もないデタラメだ。

六連星にもコメントしたが、August Dvorakは「QWERTY配列に対する誤解」の普及にマンマと成功した、ということなのだろう。なお、QWERTY配列がどう成立したかについては、私の仮説をQWERTY直前のキー配列に記したので参照されたい。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  •  QWERTY配列に関する伝説とDvorak配列の対策は、見比べると矛盾を含んでいます。
    1.バーのジャミングを防止するために連続して使われるキーを離した
    2.連続して打たれるキーを離すとタイプは遅くなる

     1と2はイコールではありません。連続打鍵キーが近くにあると速く打てるなら、Dvorak配列は連続する文字を近くに配置しているはずです。実際は、左右に振り分けているんです。
     タイプライターの構造の問題を抜きに考えても、「キーを離すとジャミングしなくなる」とは言えても、「キーを離したから遅くなる」とは一概には言えないと思う。
    • そう言われてみると、そうですね。どうしてRobert Parkinsonは『The Dvorak Simplified Keyboard: Forty Years of Frustration』(Computers and Automation, Vol.21, No.11 (November 1972), pp.18-25)で
      It turns out that this keyboard was designed experimentally by Christopher Sholes, the inventor of the typewriter, to SLOW THE TYPIST DOWN. … What he actually did was to make many commonly-used letter sequences awkward and slow to execute. Thus by "anti-engineering" his typewriter from a human factors point of view, he was able to slow it down so it would function to his satisfaction.
      なんて強く言い切ってるんだろ…。
      親コメント
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