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yasuokaの日記: 『pronto pronto?』Vol.14のガセネタ

日記 by yasuoka
『pronto pronto?』Vol.14 (2008年9月)を読んでいたところ、「トリビア名誉教授 唐沢俊一のビジネス課外授業。」(p.20)に、Hermann Hesseに関するガセネタが載っていた。

『車輪の下』などで知られるドイツの文豪、ヘルマン・ヘッセは、子供のときサボりの常習犯だった。通わされていた幼稚園をウソをついてサボり、エリート神学校では精神を病んだふりをしてまでサボり、仮病がそのうち本当の病気になったと言われている。

「精神を病んだふり」ではなく、Hesseは実際に精神を病んでいたと考えられる。Dennis Farrellの『The Forgotten Childhood of Hermann Hesse』(The Annual of Psychoanalysis, Vol.15 (1987), pp.247-268)などでも指摘されているように、Hesseは幼少期にかなり強いトラウマを負っており、少年期には既に鬱病(あるいは境界性パーソナリティ障害の合併症)の初期症状が見られる。Hesseの病状はMaulbronn神学校における生活で悪化し、脱走騒ぎの時点では精神的にかなり危険な状態だった。Hesseが自殺に成功しなかったのは、ドイツ文学にとって非常な幸運だったと言えるだろう。その意味では、「仮病がそのうち本当の病気になった」などという唐沢俊一の言い草は、この手の精神疾患(特に鬱病)の病態に関して、あまりに無理解であると言わざるを得ない。

Vol.9のガセネタでもそうだったが、『pronto pronto?』は作家の伝記すらチェックしないで、このHermann Hesseという文豪について、いったい何を書こうというのだろう?

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