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ハッカーとクラッカーの違い。大してないと思います -- あるアレゲ
よくわかる(かもしれない)原理解説 (スコア:5, 参考になる)
MSは通常試料の導入部,分析部,検出部からなっており,導入部で何とか帯電分子を作って,
分析部で特定の質量のみ取り出し,検出部で検出されるシグナルの強度からその質量の分子が
どのぐらいいるのかを測定します.
導入部は,例えば一番簡単なものは真空中でサンプルにレーザーをぶち当てて気化した分子の
うち帯電しているもののみを電圧で加速(レーザー蒸発.ただし分子がバラバラになったものも
混ざってくる)とか,真空中でサンプルに電子線をあてて直接イオン化とか,マトリクスに
混ぜてレーザーを照射・マトリクスがエネルギーを吸収して蒸発する際に一緒に分子も飛ぶ
(MALDI:2002年のノーベル化学賞.マイルドに飛ばせるので分子の分解が少ない)とかが
あります.今回のもので用いられているDESIはエレクトロスプレー(ESI)の一種で,物体表面に
帯電した溶液を噴霧,物体上の微量の分子が溶け込んだ溶媒がクーロン反発で細かくなりながら
飛び出してくるものを真空の分析部に導入します.エレクトロスプレー系は非常にマイルドに
飛ばせるので,MALDI同様壊れやすいサンプル(生体分子など)の同定に向いています.また
サンプル導入部が大気圧なので,真空に持ち込みにくいサンプル内の分子も測定できます.
#単なるESIは,サンプルの溶けた溶媒を細いノズルに導入し高電圧をかけるとクーロン反発で
#ノズルの先から微細飛沫となって飛んで行くものを導入します.
以下,今回の例で何が使われているのか書かれていませんが一般的なMSの話として.
分析部は飛んできたイオンを質量によって分離します.たとえば加速電圧を一定にして長距離を
飛ばすと,質量/電荷(m/z)が小さな分子ほど早く加速されるので,到達時間によって質量が
分析できます(Time-of-Flight型: TOF-MS).他にも上下を磁石で挟んでそこに加速した
イオンを飛ばすとローレンツ力で曲がるのを利用し,加速電圧もしくは印加磁場を変えながら
イオンを飛ばすことで特定のm/zの分子のみが検出器に到達するようにしたり,4重極電極
(Quadrapole:ちょっと説明しにくいんで検索してください)を使って特定のm/zのイオン以外を
はじき出す方法(QMS.8重極を用いるものもあるが実はそれほど変わらない),イオントラップと
呼ばれる電場でイオンを閉じ込める部位を作ってそこに蓄積したのち,特定のm/zのみはじき出す
手法(QMSと似た手法です)などがあります.
検出部は,一番単純には光電子倍増管と同じようなものを使います.十分加速した分子をぶつけて,
出てくる電子を加速->衝突を繰り返すことで増幅,最終的に電流としてモニタします.
MSで直接わかるのは分子(もしくはそのフラグメント)の分子量だけです.
#ただある程度軽いものなら,結構細かく分離します.たとえば12C1H2と14Nは前者が
#m=14.016で後者がm=14.003なので分解能の高い場合には分離可能です.
さらにはこれが同位体の存在により同じ分子でもいくつにもスプリットし,大きな分子ではところ
どころ結合が切れた娘イオンやら他価イオンやらがかぶってきます.これが数々の分子を含む溶液
ではその溶液中の飛んで行く全物質について重なってくるので,混合溶液だと大変なことになります.
ですので,今回のような特定のいくつかの物質の有無を検出したいという場合には,あらかじめ
ターゲットとする分子(爆発物とか,麻薬とか,特定の疾患で出てくる物質とか?)のスペクトルを
用意しておいて,パターンマッチ的に探すという感じの分析になるかと思います.
原理的には未知物質の(ある程度の)同定も可能ですが,そこまで手間暇をかけるんならポータブルで
ある必要がありませんし,分解能も高い装置(つまりデカイ)がほしいところですから.
Re:よくわかる(かもしれない)原理解説 (スコア:1)
> 化合物に含まれる元素の質量を測定
は厳密には間違ってますよね。測定するのはイオン化された分子断片の質量/電荷比(の時間変化)で、出てくるスペクトルをあらかじめ登録しておいた既知の物質のものとうまく比較して、一致してたらその物質であると同定する、ということですよね。
一般に質量分析機で検出できるのは、あらかじめ作っておいたスペクトルのデータベースに登録されているものだけですから、今回のハンディタイプは、テロ現場などでの化学物質の特定とか、そういうターゲットを絞った状況を想定してるのではないか、と思います。
Re:よくわかる(かもしれない)原理解説 (スコア:1)
この手の機械は真っ先に軍事用途や救命救急用途に採用されるでしょうから、手持ちのデータベースになければスペクトル情報を中間の大きなデータベースを持つセンターに送って、組成の候補が返ってくるのを待ち、本格的な研究施設で実際のサンプルが分析出来終わるまでの応急の対処を行えるので大がかりな設備(専用の車両や機材一式の入ったコンテナなど)が着くまで対処が取れなくなるようなことが激減可能…と言う感じで使われるのでしょうね。
どちらにしても「その場で目星が付けられる」と言う意味で画期的な機械ではあるのですが、NBCの「B(生物)」には殆んど使えそうにないあたりが少し不便かも…
Re:よくわかる(かもしれない)原理解説 (スコア:0)
そのパターンから菌を同定する、という研究が行なわれていました。菌によってピーク
パターンが違うそうで。
アメリカにはこの関係のベンチャーもあったけど、最近は聞かないっすね。陸軍も
絡んでた筈だけど、イマイチだったのかな。
今回の親記事はイオントラップ型なので、分子のフラグメントピークからの物質同定
でしょうね。データベースは有料のでも普通のノートパソコンに入ったと思います。ま、
物質の予想がつけば、データベースになくてもMS屋がスペクトル読めば同定できる
でしょ。
Re:よくわかる(かもしれない)原理解説 (スコア:0)
わかるのは分子の「m/z=分子量/電荷」ではないでしょうか?