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ポイントは実のところ複数点あります。大きくは2つ。さらに付随する細かい論点が複数。
1つには#1817217 [srad.jp]で解説されているように、DRMがかかっているものに対してそもそも「私的使用のための複製」の要件を満たすかどうかが不明であるという事。
2つ目は著作権法施行令 [e-gov.go.jp]の第一章に定められている特定機器に、アナログ放送を受信できない機器が該当するかどうか、という問題です。
実のところ、これら、特に2つ目については#1817193においても十分に意識して書かれているようですが、把握されておられない方も多いと思いますので、簡単に解説を試みます。この場合録画に供されるものとしては、第一章第一条の2が関係します。
>2 法第三十条第二項 の政令で定める機器のうち録画の機能を有するものは、>次に掲げる機器(ビデオカメラとしての機能を併せ有するものを除く。)であつて>主として録画の用に供するもの(デジタル方式の録音の機能を併せ有するものを含む。)とする。
として、細かい要件を定めているわけですが、それぞれの要件については、必ず「アナログデジタル変換が行われた」という文言が定められています。今回争いになっているのは、この「アナログデジタル変換が行われた」がどの部分にかかるのかという事であります。
そもそも「デジタル信号をデジタルのままに録画する機器においては、アナログデジタル変換が行われない」という事から、補償金の対象ではないと考えられる、という事。
おそらくここまでについては#1817193を書いたACも既に認識されていて
>外部入力端子からの映像を「高画質に」録画できれば私的録音補償金の対象になるのが自然だと思いますよ。>アナログチューナーだけでなく、外部入力端子も付いていないのでしょうか。
というものが疑問としてもっとも大きいのでしょう。ここで問題になってくるのは、やはり「その機器の主たる目的」が何であるのか、という事だと思います。たとえば、
>私的録音補償金という制度が産みだされたのはDATが問題になったからでしょ。>デジタルで無劣化だからだけではなく、アナログ入力であっても劣化が極めて少ないから問題になったのですよ。>そのDATには、FMチューナーも、(St.GIGAのための)BSチューナーも内蔵されていませんでしたよ。
つまりこれは、主目的が外部からのアナログ>デジタル変換による録音であり、主用途として他機器と連携してのダビングがあると当時考えられた。もちろん他の用途にも使えますが、少なくともそういう疑念の元に制定されたものであるというのは確かだと思います。翻って現在を見るに、アナログ入力端子からのコピーは「主たる目的」であるといえるでしょうか。ほぼ全て、9割以上の用途は放送波からの複製であり、アナログ入力端子からのコピーはまさに零細極まりない利用であると考えられます。また補償金の分配についても、現状が意識されているはずです。
言い換えれば、この施行令で定められている機器は「主としてアナログデジタル変換が行われる録画機器」であると考えてよい、という見解が存在している。またそういった見解の存在を文化庁も経済産業省も理解している。その事は以下の資料からもうかがえます。
「著作権法施行令の一部改正について(通知)」http://www.jeita.or.jp/japanese/file/090522.pdf [jeita.or.jp]
>もとより、アナログチューナーを搭載していないレコーダー等が出荷される場合、及びアナログ放送が終了する>平成23年7月24日以降においては、関係者の意見の相違が顕在化し、私的録画補償金の支払の請求及び>その受領に関する製造業者等の協力が十分に得られなくなるおそれがある。>両省は、このような現行の補償金制度が有する課題を十分に認識しており、今回の政令の制定に当たっても、>今後、関係者の意見の相違が顕在化する場合には、その取扱について検討し、>政令の見直しを含む必要な措置を適切に講ずることとしている。
JEITA、また各メーカーの主張としては、まさに「関係者の意見の相違が顕在化している」にも関わらず、文化庁著作権課が「アナログチューナーを搭載していないレコーダーも補償金の対象である」旨の見解を権利者に示していることもあり、それは「消費者の理解を得られない」と考えたのではないでしょうか。
#もちろん、「消費者の理解を得られない」が本意ではなく、補償金を支払い拒否することによる消費者に対するイメージアップや実質的なコストダウンを可能とすることのメリットと天秤にかけているであろうことは容易に想像できますが、まあ建前としては、ということになります。
その他にも細かい争点は多くあると思いますが、大まかにポイントはこのような部分ではないかと思います。なお、これは現状の認識の自分的なまとめであり、これに述べた考え方の全てに賛同しているというわけではありません。個人的には、補償金を薄く広く取り、その代わりDRMを弱める方向に向かうべきであると考えています。
> JEITA、また各メーカーの主張としては、まさに「関係者の意見の相違が顕在化している」にも関わらず、> 文化庁著作権課が「アナログチューナーを搭載していないレコーダーも補償金の対象である」旨の見解を権利者に示していることもあり、> それは「消費者の理解を得られない」と考えたのではないでしょうか。
正にそのあたりの見解をJEITAがプレスリリース [jeita.or.jp]で出してますね。
メーカ側のスタンスでの一方的な見解なので、これだけ読んで鵜呑みにするのは問題あると思いますが、これまでの経過や彼らの視点での問題点などよくまとまっている資料ですので、今回の件に興味のある方はご一読を。
>アナログ・チューナー非搭載だと、対象外になるという主張は、どういう理屈なのでしょうか。
問題になるのはDRMの有無です。DRMをつけている場合、複製行為をコンテンツホルダのコントロール下に置くことになります。この場合、目的が私的かどうかにかかわらず「権利者の認めた複製」ということになります。権利者の認めた複製であるにもかかわらず、補償金という外部課金制度で権利者に還元する制度が必要だというのは矛盾している、というのがメーカー側の主張なわけですね。
異論はあると思いますが、放送の録音録画は著作権法上の扱いはすべて複製です。補償金関連の条文上も放送波の録音録画を特別に区別するような記述はないはずです。
法律で課金対象から外すことに決まっているからです。
決して補償が不要だから外すというわけではなく、成立当時存在しなかったそのパターンについては除外した上、後でまた話し合うことにした、というだけの話です。現状、その話し合いは行われておらず、法律上も外されたままである以上、払う必要は無いというのがメーカーと経産省の主張。話し合いも法改正もしなくていい、とにかく払えというのが文化庁と著作権者(とその代弁者)の主張。
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あと、僕は馬鹿なことをするのは嫌いですよ (わざとやるとき以外は)。-- Larry Wall
なぜアナログ・チューナ非搭載だと私的録音録画補償金が不要なの? (スコア:1, 興味深い)
私的録音補償金という制度が産みだされたのはDATが問題になったからでしょ。
デジタルで無劣化だからだけではなく、アナログ入力であっても劣化が極めて少ないから問題になったのですよ。
そのDATには、FMチューナーも、(St.GIGAのための)BSチューナーも内蔵されていませんでしたよ。
たとえDVD/BDレコーダに、一切のチューナーを搭載せずとも、
外部入力端子からの映像を「高画質に」録画できれば私的録音補償金の対象になるのが自然だと思いますよ。
アナログチューナーだけでなく、外部入力端子も付いていないのでしょうか。
アナログ・チューナー非搭載だと、対象外になるという主張は、どういう理屈なのでしょうか。
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デジタル入力だろうが劣化するMD(MiniDisc)も私的録音補償金の対象になったのは納得がいかないし、
アナログ放送を録画すると(MPEG2圧縮によって)劣化する今のDVD/BDレコーダが私的録音補償金の対象なのも納得がいきませんが。
ついダビングの話に眼がいってしまうけど、これ、私的「複製」補償金ではなく、私的「録音」補償金なんですよね。
いちど録音・録画して手許に置いたものを更にダビングされるとCDやDVDが売れなくなるから補償・・・じゃないんですよね。
私的複製の範囲内でどれだけダビングしたってCDやDVDの売れ行きとは関係ないし、ダビングしたものを人に配ったら私的複製じゃないし。
つまり、録音・録画して手許に置いて好きなときに再生できると、CDやDVDの売れ行きが悪くなるから、それを補償するっていう話なんだよね。
そしたら、アナログ放送だろうがデジタル放送だろうが、各種方式によるコピワン制限がかかっていても、関係ないじゃん。
Re:なぜアナログ・チューナ非搭載だと私的録音録画補償金が不要なの? (スコア:5, 参考になる)
ポイントは実のところ複数点あります。
大きくは2つ。さらに付随する細かい論点が複数。
1つには#1817217 [srad.jp]で解説されているように、DRMがかかっているものに対してそもそも「私的使用のための複製」の要件を満たすかどうかが不明であるという事。
2つ目は著作権法施行令 [e-gov.go.jp]の第一章に定められている特定機器に、アナログ放送を受信できない機器が該当するかどうか、という問題です。
実のところ、これら、特に2つ目については#1817193においても十分に意識して書かれているようですが、把握されておられない方も多いと思いますので、簡単に解説を試みます。
この場合録画に供されるものとしては、第一章第一条の2が関係します。
>2 法第三十条第二項 の政令で定める機器のうち録画の機能を有するものは、
>次に掲げる機器(ビデオカメラとしての機能を併せ有するものを除く。)であつて
>主として録画の用に供するもの(デジタル方式の録音の機能を併せ有するものを含む。)とする。
として、細かい要件を定めているわけですが、それぞれの要件については、必ず「アナログデジタル変換が行われた」という文言が定められています。
今回争いになっているのは、この「アナログデジタル変換が行われた」がどの部分にかかるのかという事であります。
そもそも「デジタル信号をデジタルのままに録画する機器においては、アナログデジタル変換が行われない」という事から、補償金の対象ではないと考えられる、という事。
おそらくここまでについては#1817193を書いたACも既に認識されていて
>外部入力端子からの映像を「高画質に」録画できれば私的録音補償金の対象になるのが自然だと思いますよ。
>アナログチューナーだけでなく、外部入力端子も付いていないのでしょうか。
というものが疑問としてもっとも大きいのでしょう。
ここで問題になってくるのは、やはり「その機器の主たる目的」が何であるのか、という事だと思います。
たとえば、
>私的録音補償金という制度が産みだされたのはDATが問題になったからでしょ。
>デジタルで無劣化だからだけではなく、アナログ入力であっても劣化が極めて少ないから問題になったのですよ。
>そのDATには、FMチューナーも、(St.GIGAのための)BSチューナーも内蔵されていませんでしたよ。
つまりこれは、主目的が外部からのアナログ>デジタル変換による録音であり、主用途として他機器と連携してのダビングがあると当時考えられた。もちろん他の用途にも使えますが、少なくともそういう疑念の元に制定されたものであるというのは確かだと思います。
翻って現在を見るに、アナログ入力端子からのコピーは「主たる目的」であるといえるでしょうか。ほぼ全て、9割以上の用途は放送波からの複製であり、アナログ入力端子からのコピーはまさに零細極まりない利用であると考えられます。また補償金の分配についても、現状が意識されているはずです。
言い換えれば、この施行令で定められている機器は「主としてアナログデジタル変換が行われる録画機器」であると考えてよい、という見解が存在している。またそういった見解の存在を文化庁も経済産業省も理解している。その事は以下の資料からもうかがえます。
「著作権法施行令の一部改正について(通知)」
http://www.jeita.or.jp/japanese/file/090522.pdf [jeita.or.jp]
>もとより、アナログチューナーを搭載していないレコーダー等が出荷される場合、及びアナログ放送が終了する
>平成23年7月24日以降においては、関係者の意見の相違が顕在化し、私的録画補償金の支払の請求及び
>その受領に関する製造業者等の協力が十分に得られなくなるおそれがある。
>両省は、このような現行の補償金制度が有する課題を十分に認識しており、今回の政令の制定に当たっても、
>今後、関係者の意見の相違が顕在化する場合には、その取扱について検討し、
>政令の見直しを含む必要な措置を適切に講ずることとしている。
JEITA、また各メーカーの主張としては、まさに「関係者の意見の相違が顕在化している」にも関わらず、文化庁著作権課が「アナログチューナーを搭載していないレコーダーも補償金の対象である」旨の見解を権利者に示していることもあり、それは「消費者の理解を得られない」と考えたのではないでしょうか。
#もちろん、「消費者の理解を得られない」が本意ではなく、補償金を支払い拒否することによる消費者に対するイメージアップや実質的なコストダウンを可能とすることのメリットと天秤にかけているであろうことは容易に想像できますが、まあ建前としては、ということになります。
その他にも細かい争点は多くあると思いますが、大まかにポイントはこのような部分ではないかと思います。
なお、これは現状の認識の自分的なまとめであり、これに述べた考え方の全てに賛同しているというわけではありません。
個人的には、補償金を薄く広く取り、その代わりDRMを弱める方向に向かうべきであると考えています。
Re:なぜアナログ・チューナ非搭載だと私的録音録画補償金が不要なの? (スコア:1, 参考になる)
> JEITA、また各メーカーの主張としては、まさに「関係者の意見の相違が顕在化している」にも関わらず、
> 文化庁著作権課が「アナログチューナーを搭載していないレコーダーも補償金の対象である」旨の見解を権利者に示していることもあり、
> それは「消費者の理解を得られない」と考えたのではないでしょうか。
正にそのあたりの見解をJEITAがプレスリリース [jeita.or.jp]で出してますね。
メーカ側のスタンスでの一方的な見解なので、これだけ読んで鵜呑みにするのは問題あると思いますが、
これまでの経過や彼らの視点での問題点などよくまとまっている資料ですので、今回の件に興味のある方はご一読を。
Re:なぜアナログ・チューナ非搭載だと私的録音録画補償金が不要なの? (スコア:3, 参考になる)
>アナログ・チューナー非搭載だと、対象外になるという主張は、どういう理屈なのでしょうか。
問題になるのはDRMの有無です。DRMをつけている場合、複製行為をコンテンツホルダのコントロール下に置くことになります。この場合、目的が私的かどうかにかかわらず「権利者の認めた複製」ということになります。
権利者の認めた複製であるにもかかわらず、補償金という外部課金制度で権利者に還元する制度が必要だというのは矛盾している、というのがメーカー側の主張なわけですね。
異論はあると思いますが、放送の録音録画は著作権法上の扱いはすべて複製です。補償金関連の条文上も放送波の録音録画を特別に区別するような記述はないはずです。
しもべは投稿を求める →スッポン放送局がくいつく →バンブラの新作が発売される
Re: (スコア:0)
レコーダのメーカー「DRMがあるから補償金は払わない!」
テレビ局 & コンテンツホルダ「じゃぁDRMで録画禁止で放送するぞ!」
ってことになりますよね。
どこぞのテレビ局の偉いさんが、放送を録画してCMスキップして見るのは著作権侵害だ! といったような発言をしたらしいのですが、
(そう言いたくなる気持ちや事情は理解できるし、民放がCM収入で成りたっていることを隠そうとしない潔さに、ポジティブな印象を受けたが)
いっそのこと本当に録画禁止で放送したらいいと思うんですよ。
どうせレコーダーには電話回線のアナログモデムかLAN端子を付けるわけですから、録画課金も技術的には可能だと思うし。
Re:なぜアナログ・チューナ非搭載だと私的録音録画補償金が不要なの? (スコア:1, 参考になる)
法律で課金対象から外すことに決まっているからです。
決して補償が不要だから外すというわけではなく、成立当時存在しなかったそのパターンについては除外した上、後でまた話し合うことにした、というだけの話です。
現状、その話し合いは行われておらず、法律上も外されたままである以上、払う必要は無いというのがメーカーと経産省の主張。
話し合いも法改正もしなくていい、とにかく払えというのが文化庁と著作権者(とその代弁者)の主張。