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この手の水素貯蔵技術は,「装置はでかくなるけど,エネルギー密度が非常に高い二次電池」だと思ってください.それでいくつかの誤解はなくなると思います.
・他の手段で水素を発生させないといけないんだから意味なくね? → 電池に発電所がいるのと同じです.・まとめて燃やした方が良くね? → 貯蔵母材を燃やしちゃうと,また作るのに膨大なエネルギーが無駄になるので……
どういうことかというと,「何らかの手段」(*)で発生させたエネルギーを,水素(などの化学エネルギー)の形で保管しておくと,通常の蓄電池なんぞよりもっと高エネルギー密度での
エネルギー密度って本当に高いのでしょうか?ざっくり800kgのシクロヘキサンから50kgの水素を取り出すって感じみたいですが…燃料電池車とかには使えそうもないですよね?
装置のサイズを考えずに水素吸蔵密度だけで考えれば使えると思いますよ.現実的には,装置がでかいんで車載は(現時点では)難しいかと思いますが.
挙げられているシクロヘキサンでしたら,800 kgだと体積でざっくり1000 L.ここから50 kgの水素が出てくると言うことは,水素の貯蔵密度で言えば50 g/Lになります.重量密度なら60 g/kgぐらいな感じですね.
これに対し,例えば既存の高圧水素タンクですと,70 MPa(700気圧)のタンクでの水素貯蔵量はおおよそ25 g/L,重量密度なら35 g/kgぐらいになります.
水素吸蔵合金ですと,理論値などは結構行くんですが,現実的な値としては3 wt%前後,30 g/kgぐらいの重量密度になっちゃいます.もっともこちらは重いけれど体積あたりの密度は結構高く出来て,100 g/Lぐらいは吸蔵できたりします.
だからまあ量としては,・水素ボンベとして圧縮水素を詰め込む場合の倍ぐらい詰め込める.・水素吸蔵合金と比べると体積あたりの密度は5-7割ぐらいになってしまうが,重量あたりなら倍ぐらい積める.あと(原材料は)安い.という感じですかね.
エネルギーで言うと,出てきた水素の燃焼熱で考えると5-7 MJ/Lぐらいになります.現段階だと,燃料電池として電力で取り出せるのは確かこの半分強ぐらい.となると3 MJ/L程度.リチウムイオン電池ですと,確か体積エネルギー密度は2 MJ/L弱ぐらいだったと思いますので,その1.5倍ぐらいの電力は取り出せるんじゃないかと.部材は安い(予定)という強みも謳ってますが,まあこちらは実際に出てきてみないとわからないところもあるんで保留.#リチウムイオン電池は,多量に必要な電極材料にレアメタルを使うところで高い.#それに対し,水素吸蔵側は白金などの触媒の使用量をどこまで減らせるか,が重要.
仰せのとおりの水素の電池ですねやや特殊な事例ですが廃熱利用のために保温ジェル(?)みたいなものに吸熱させて、タンクローリーで運んだ先で放熱させる熱の電池(?)が実用になってるんだから、用途によっては水素の電池もありでしょうどこまで実用になるかは、他のエネルギー蓄積・輸送手段との競争の結果で決まるとしか言いようがないですね
抽出設備がでかすぎるので、車載にするのは無理です。これは産地から日本のコンビナート、あるいは近所の水素スタンドまで輸送する手段にしかなりません。
が、そう割り切れば、現在使われている高圧ボンベや液体水素よりも十分に魅力的です。エネルギー密度は良好ですが、それよりも常温常圧で普通の液体として扱えるのが大きい。既存の石油化学インフラを使い回せるし、新造する場合も大幅に安くなります。あとは抽出設備がコスト的に引きあうのかどうかです。
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アレゲは一日にしてならず -- アレゲ研究家
電池と思ってください (スコア:5, 参考になる)
この手の水素貯蔵技術は,「装置はでかくなるけど,エネルギー密度が非常に高い二次電池」だと思ってください.それでいくつかの誤解はなくなると思います.
・他の手段で水素を発生させないといけないんだから意味なくね? → 電池に発電所がいるのと同じです.
・まとめて燃やした方が良くね? → 貯蔵母材を燃やしちゃうと,また作るのに膨大なエネルギーが無駄になるので……
どういうことかというと,「何らかの手段」(*)で発生させたエネルギーを,水素(などの化学エネルギー)の形で保管しておくと,通常の蓄電池なんぞよりもっと高エネルギー密度での
Re:電池と思ってください (スコア:0)
エネルギー密度って本当に高いのでしょうか?
ざっくり800kgのシクロヘキサンから50kgの水素を取り出すって感じみたいですが…
燃料電池車とかには使えそうもないですよね?
Re:電池と思ってください (スコア:5, 参考になる)
装置のサイズを考えずに水素吸蔵密度だけで考えれば使えると思いますよ.
現実的には,装置がでかいんで車載は(現時点では)難しいかと思いますが.
挙げられているシクロヘキサンでしたら,800 kgだと体積でざっくり1000 L.ここから50 kgの水素が出てくると言うことは,水素の貯蔵密度で言えば50 g/Lになります.重量密度なら60 g/kgぐらいな感じですね.
これに対し,例えば既存の高圧水素タンクですと,70 MPa(700気圧)のタンクでの水素貯蔵量はおおよそ25 g/L,重量密度なら35 g/kgぐらいになります.
水素吸蔵合金ですと,理論値などは結構行くんですが,現実的な値としては3 wt%前後,30 g/kgぐらいの重量密度になっちゃいます.もっともこちらは重いけれど体積あたりの密度は結構高く出来て,100 g/Lぐらいは吸蔵できたりします.
だからまあ量としては,
・水素ボンベとして圧縮水素を詰め込む場合の倍ぐらい詰め込める.
・水素吸蔵合金と比べると体積あたりの密度は5-7割ぐらいになってしまうが,重量あたりなら倍ぐらい積める.あと(原材料は)安い.
という感じですかね.
エネルギーで言うと,出てきた水素の燃焼熱で考えると5-7 MJ/Lぐらいになります.
現段階だと,燃料電池として電力で取り出せるのは確かこの半分強ぐらい.となると3 MJ/L程度.
リチウムイオン電池ですと,確か体積エネルギー密度は2 MJ/L弱ぐらいだったと思いますので,その1.5倍ぐらいの電力は取り出せるんじゃないかと.部材は安い(予定)という強みも謳ってますが,まあこちらは実際に出てきてみないとわからないところもあるんで保留.
#リチウムイオン電池は,多量に必要な電極材料にレアメタルを使うところで高い.
#それに対し,水素吸蔵側は白金などの触媒の使用量をどこまで減らせるか,が重要.
Re: (スコア:0)
仰せのとおりの水素の電池ですね
やや特殊な事例ですが廃熱利用のために保温ジェル(?)みたいなものに吸熱させて、タンクローリーで運んだ先で放熱させる熱の電池(?)が実用になってるんだから、用途によっては水素の電池もありでしょう
どこまで実用になるかは、他のエネルギー蓄積・輸送手段との競争の結果で決まるとしか言いようがないですね
Re:電池と思ってください (スコア:2, すばらしい洞察)
抽出設備がでかすぎるので、車載にするのは無理です。これは産地から日本のコンビナート、あるいは近所の水素スタンドまで輸送する手段にしかなりません。
が、そう割り切れば、現在使われている高圧ボンベや液体水素よりも十分に魅力的です。エネルギー密度は良好ですが、それよりも常温常圧で普通の液体として扱えるのが大きい。既存の石油化学インフラを使い回せるし、新造する場合も大幅に安くなります。あとは抽出設備がコスト的に引きあうのかどうかです。