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銀行とは「他人の金を預かって、別の他人に貸す商売」という先入観があるせいか、銀行における自己資本の重要性がいまいちよくわからない.
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私は悩みをリストアップし始めたが、そのあまりの長さにいやけがさし、何も考えないことにした。-- Robert C. Pike
自己資本比率 (スコア:1)
銀行とは「他人の金を預かって、別の他人に貸す商売」という先入観があるせいか、銀行における自己資本の重要性がいまいちよくわからない.
佐藤亮一 in Frankfurt Germany
Re:自己資本比率 (スコア:1)
ボクが、馬券買うために友人から2万円借りたいと思っているとしましょう。友人間の貸し借りなら、担保も信用力も必要ないはずですが、全くの赤の他人に2万円を借りようと思えば「必ず2万円を期日までに返済する」という信用がなければなりません。
銀行には決済や資金管理などの手数料収入の他に、利ざや収入があります。利ざや収入とは、預金者から預かった預金を第三者に貸し出すときの預金利率と貸出利率の利ざやを稼ぐことです。銀行にとって、預金は負債、貸出は資産になることは既に述べましたが、預金者は銀行を信用してお金を預ける(言い方を変えればお金を貸す)わけですから、預金が必ず帰ってくることを期待しますし、同時に銀行は預金者の要請があれば預金を払い戻さなければなりません。
銀行が預金者に預金を払い戻す資金となるのは、資産と自己資本になります。資産とは銀行の保有する建物や有価証券などのほかに、銀行が貸し出しているお金(債権)があります。しかし、銀行が貸し出している相手が返済が不能になったり返済できたとしても融資の一部だったりすると、銀行の資産は目減りしてしまい、預金払い戻し能力は低下します。もし、そのような事態が発生したとき銀行自体が清算されない限り返済する必要のないお金、即ち資本金を切り崩して支払を行う必要があります。即ち、万が一の事態が発生した時でも、自己資本がリスク資産に対して一定量あるということは、それだけ預金が目減りする可能性が低くなるということを意味しますし、同時に自己資本比率が高いということはそれだけ経営が健全であることを意味します。
BIS自己資本比率規制(バーセル合意)とは、国際的に業務を行う銀行(国際基準行)に対して8%以上の自己資本比率を保たなければならないと定めています。この他に、金融庁の基準で国内だけに業務を展開する国内基準行に対しては4%以上の自己資本比率を求めています。これは、国際的に業務を展開する銀行のほうが、破綻した場合に国際経済に与える影響が大きいことと、国際業務自体が為替や世界情勢など様々なリスクに晒される可能性が高いことから高めに設定されています。
自己資本を測る方法としては、一次自己資本(Tier1)、二次自己資本(Tier2)の三つがあります。一次自己資本とは中核資本(株主資本金)や利益余剰金、繰延税金資産などで構成されたもので、BIS基準では基本項目と呼ばれます。二次自己資本は、これに保有株式の含み益の一部(保有株式の50%までを自己資本全体の45%までに算入可能)や、劣後債などで構成され補完的項目と呼ばれます。
元々、バーセル合意が行われた際に一次自己資本を基準とするか二次自己資本を基準とするかで政治的な対立がありました。一次自己資本比率が低い日本や、日本と同様に銀行の株式持合い比率が高いドイツなどが反対したためですが、結局二次自己資本を基準に自己資本比率を算出することが認められました。ただし、これは時限的な処置で、最終的には一次自己資本を基準に自己資本比率を測られますし、スタンダード・アンド・プアーズなどの格付け機関は、二次自己資本比率ではなく一次自己資本比率を基準に格付けを行っています。
なぜ、二次自己資本比率を基準とするのに問題があるのでしょうか? 株式などの含み益は、一次自己資本に算入されている項目と比べ平均株価の影響で、この比率は常に変化しますから、自己資本比率規制の趣旨には合いません。また、株価が上昇していて銀行の保有している株式の含み益のあるときには、銀行は含み益の分だけ貸出余力があるということになりますが、株価が下落すると貸出余力が小さくなるだけでなく、銀行の預金払い戻し能力もそれだけ低下してしまうからです。