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>今の1秒の定義は、セシウム原子時計の原理そのもののように思えます。
定義はその通りですが,測定上の問題があります.例えば,現在の秒の定義は,
133Csの基底状態の超微細準位間の遷移での放射の9192631770周期
となっています.そういう意味で,原子時計が完全に理想的な構造で誤差無しの測定が出来るならば精度の問題はありません.ところが実際には,Cs原子は完全な虚無の中に浮いているわけではありませんので,周囲からの(微弱な)摂動の影響を受けて準位間隔が微妙にずれますし(実際の遷移のエネルギーと,定義で用いられている孤立原子でのエネルギーとのずれ),その周波数の測定自体にも工学上の誤差が生じます.このため,いかに定義が完璧で(当たり前ですが)定義そのものに誤差が無くとも,測定される(非理想的な)時間には誤差がつきまといます.よって,例えば100台の同じ設計の原子時計を同期させ,一定時間たった後に相互に比較するとずれが生じている(確度不足による誤差)わけです.
このため,現在の原子時計などよりもっと精度(というか確度というか)が高い時計(=もっと精度の出る実在の時計が作りやすい方式)が開発できるなら,そちらを用いて新たな定義がなされることとなります.そのような研究が現在盛んになされており,今の原子時計などよりも一桁以上(多分.分野外なので実際どの程度必要なのかは知りません)精度が上がるなら,そちらが新しい時間の定義になると見られています.
実際には,通常の原子時計よりさらに周波数精度の高い1次周波数標準器(原理は同じようなものだが,原子の固定法とか励起法とかが違ったと思う)というものがあり,これで各原子時計を校正(どの程度の確度なのか,どういった系統的なずれがあってどう補正すれば正確になるのか)していますので,この1次標準を超える必要があります.
参考に情報通信研究機構(NiCT)の次世代時刻周波数標準プロジェクト [nict.go.jp]
その先の、次世代時刻周波数標準プロジェクトの中の一秒の定義 [nict.go.jp]を見て質問。
図に示されているように、安定な軌道から最寄りの不安定な(励起された)軌道へ移すには約350THz(波長852 nm)の赤外光が必要で、中心と外側電子の磁石の向きを安定から不安定へ変えるには約9GHz(波長3.3 cm)のマイクロ波が必要です。この、磁石の向きを変えるのに必要な電波の周波数が、秒を定義するのに使われています。
9192631770Hzを数えているのが、定義だとは分りました。その前の文章—励起赤外光350THz云々—が脈絡も無く書かれているように見えます。つながりが読めません。
350THzで励起した電子のスピンを変えるには9.19...GHzが必要で、これを秒の定義としている、ということですか。
>その前の文章—励起赤外光350THz云々—が脈絡も無く書かれているように見えます。つながりが読めません。
つながりはあまりないと言えばあまりありません.ただ,原子で「励起」というと,電子励起(まあ核励起のこともありますが)を指すことが多いので,「よく言う原子での励起=電子励起(電子を上の軌道に上げる)だと赤外光だけど,同じ軌道のままスピンだけ反転させる励起もあってそっちはマイクロ波で,マイクロ波の方の励起を使ってるよ」と言いたいんだと予想.
1746733のACです。こっちもphasonさんに(予想とは言え)うまく説明してもらいました。ありがとうございます。
# そーか、基底状態じゃなけりゃ全部励起状態なんだな、と再認識
時刻はNICTでも、時間(周波数)標準ならこっちNMIJ(旧工業技術院計量研究所) [www.nmij.jp]が本家では?(もうちょっとNICTとAISTで持分を明確にしてほしいな。)
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私は悩みをリストアップし始めたが、そのあまりの長さにいやけがさし、何も考えないことにした。-- Robert C. Pike
原子時計の精度 (スコア:1, 興味深い)
とすると、セシウム原子時計で、トラブル以外の要因で、誤差が出るほうが不思議なのですが…
Re:原子時計の精度 (スコア:5, 参考になる)
>今の1秒の定義は、セシウム原子時計の原理そのもののように思えます。
定義はその通りですが,測定上の問題があります.
例えば,現在の秒の定義は,
133Csの基底状態の超微細準位間の遷移での放射の9192631770周期
となっています.そういう意味で,原子時計が完全に理想的な構造で誤差無しの測定が出来るならば精度の問題はありません.
ところが実際には,Cs原子は完全な虚無の中に浮いているわけではありませんので,周囲からの(微弱な)摂動の影響を受けて準位間隔が微妙にずれますし(実際の遷移のエネルギーと,定義で用いられている孤立原子でのエネルギーとのずれ),その周波数の測定自体にも工学上の誤差が生じます.
このため,いかに定義が完璧で(当たり前ですが)定義そのものに誤差が無くとも,測定される(非理想的な)時間には誤差がつきまといます.
よって,例えば100台の同じ設計の原子時計を同期させ,一定時間たった後に相互に比較するとずれが生じている(確度不足による誤差)わけです.
このため,現在の原子時計などよりもっと精度(というか確度というか)が高い時計(=もっと精度の出る実在の時計が作りやすい方式)が開発できるなら,そちらを用いて新たな定義がなされることとなります.そのような研究が現在盛んになされており,今の原子時計などよりも一桁以上(多分.分野外なので実際どの程度必要なのかは知りません)精度が上がるなら,そちらが新しい時間の定義になると見られています.
実際には,通常の原子時計よりさらに周波数精度の高い1次周波数標準器(原理は同じようなものだが,原子の固定法とか励起法とかが違ったと思う)というものがあり,これで各原子時計を校正(どの程度の確度なのか,どういった系統的なずれがあってどう補正すれば正確になるのか)していますので,この1次標準を超える必要があります.
Re:原子時計の精度 (スコア:2, 参考になる)
参考に
情報通信研究機構(NiCT)の次世代時刻周波数標準プロジェクト [nict.go.jp]
Re: (スコア:0)
その先の、次世代時刻周波数標準プロジェクトの中の一秒の定義 [nict.go.jp]を見て質問。
9192631770Hzを数えているのが、定義だとは分りました。その前の文章—励起赤外光350THz云々—が脈絡も無く書かれているように見えます。つながりが読めません。
350THzで励起した電子のスピンを変えるには9.19...GHzが必要で、これを秒の定義としている、ということですか。
Re:原子時計の精度 (スコア:2, 参考になる)
>その前の文章—励起赤外光350THz云々—が脈絡も無く書かれているように見えます。つながりが読めません。
つながりはあまりないと言えばあまりありません.
ただ,原子で「励起」というと,電子励起(まあ核励起のこともありますが)を指すことが多いので,「よく言う原子での励起=電子励起(電子を上の軌道に上げる)だと赤外光だけど,同じ軌道のままスピンだけ反転させる励起もあってそっちはマイクロ波で,マイクロ波の方の励起を使ってるよ」と言いたいんだと予想.
Re: (スコア:0)
1746733のACです。こっちもphasonさんに(予想とは言え)うまく説明してもらいました。ありがとうございます。
# そーか、基底状態じゃなけりゃ全部励起状態なんだな、と再認識
Re: (スコア:0)
時刻はNICTでも、時間(周波数)標準ならこっちNMIJ(旧工業技術院計量研究所) [www.nmij.jp]が本家では?
(もうちょっとNICTとAISTで持分を明確にしてほしいな。)
Re: (スコア:0)
おっと誰か来たようだ