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リンク先英文では理解できなかったんだけど(主に語学力の問題)、何を基準にどっちがより正確としてるの?解説求む……
親コメと同じく、何を基準にして10-17と言っているのか理解できなかったので、Technology Reviewを目grepすると、こう書いてある。
Today, the best optical lattice neutral atom clocks and trapped ion clocks have a frequency stability approaching one part in 10^17.
frequency stability=(振動|周波数)安定性が10-17。分った気になれない。
時計の精度をppmで計ったりするけれど、それと一緒? 60*60*24*365*10,000,000,000/1017=3.15だから、百億年に3秒ずれる時計ってこと?
足りない知識で専門外の人間が書いてみる.誰かがフォローしてくれると助かります.
現在の原子時計の仕組みは,
・まず極低温に冷やした少数の原子を真空の共鳴空洞中にトラップ・基底状態からの超微細構造部分の励起と共鳴するようにマイクロ波の周波数を調整・マイクロ波カウンタで波の数をカウントし,一定数数えたら一秒(一秒である必要はありませんが)
という流れになっています.カウントの部分は現在ではまあGHzあたりなら測定できるので,周波数が秒の定義で用いられる「孤立した133Csの基底状態からの励起に相当する周波数=9192631770Hz」からどれだけずれるか,が問題となります.現実の系では,複数のCs原子間の相互作用によるずれや共鳴部分でのずれなどがあり,測定される周波数のばらつきを含めて9192631770±Δ Hz,のようになります.#実際には,系統誤差等ありますが,そういう取り除くことが可能そうなものを除いた上での誤差,と思ってください.#また,必ずしもプラス方向とマイナス方向で同じ誤差とは限りません.
このときの周波数安定性は,Δ/9192631770程度です.これが10-17と言うことは,原子時計でマイクロ波を共鳴させると,その周波数に平均して0.0000001Hz程度の誤差が乗ってくる,ということです.このマイクロ波の波の数を数えて時間に変換していますので,周波数がずれると最終的な時間間隔にもずれが出ると言うことになります.また,ある瞬間の周波数は安定していたとしても,例えば同じ原子時計をずっと動かしていると,じわじわとずれが生じます.例えば系統誤差(常に同じ量だけ真の値からずれる)は調整によってきちんと補正できますが,ずっと運転していると系統誤差の値そのものが変わる(装置の経時変化によるゆがみやら特性変化やら),などによりずれてきます(実際には随時補正).また,装置の寿命などの際には装置を交換しないといけませんので,同じ装置で同じだけの高精度を保ったまま測定を続ける,というのも限界があります.このため,長期的な安定性は必ずしも良いとは言えません.
なお,実際には,・多数の原子時計を同時運用し平均を使うことでばらつきを減らす・通常の原子時計より精度は高いけれどごく短い時間しか測定できないものを一次標準に使い各原子時計の系統誤差を減らすという方法も併用して精度を出しています.
一方のパルサー(ミリ秒パルサー)ですが,こちらはパルサーの自転をカウントすることになります.磁極が地球の方を向いたときだけパルスがくるわけですので.こいつはしばしば周波数がずれます.これは星震やらガス放出やらガスの落下などにより回転速度が微妙に変わる(角運動量保存則があるので,外から何か落ちてきたら速度が上がる,等)ためですが,このことにより短期的な安定性は原子時計に劣ります.また,長期的には回転はじわじわと減衰していく方向ですので,この効果を差し引く必要があります(通常言うパルサーの回転安定性では,こういった差っ引ける項は差っ引いた後での安定性を議論します).しかし,特にメンテナンスやら何やらが無くともそれなりに長い期間ほぼ同一の速度で回転し続ける(と信じられている)ため,長期的な安定性は高いと言えます.
1746705のACです。詳しい説明をいただき、ありがとうございます。
frequency stabilityが10-17であることの意味が分りました。タレ込み文にある相対精度と書かれている部分に引っかかっての質問でしたが、説明のおかげでひとつ理解を深めることができました。
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犯人はmoriwaka -- Anonymous Coward
正しいの基準は? (スコア:2, 興味深い)
リンク先英文では理解できなかったんだけど(主に語学力の問題)、何を基準にどっちがより正確としてるの?
解説求む……
(振動|周波数)安定性が10^-17、それって (スコア:0)
親コメと同じく、何を基準にして10-17と言っているのか理解できなかったので、Technology Reviewを目grepすると、こう書いてある。
frequency stability=(振動|周波数)安定性が10-17。分った気になれない。
時計の精度をppmで計ったりするけれど、それと一緒? 60*60*24*365*10,000,000,000/1017=3.15だから、百億年に3秒ずれる時計ってこと?
Re:(振動|周波数)安定性が10^-17、それって (スコア:5, 参考になる)
足りない知識で専門外の人間が書いてみる.
誰かがフォローしてくれると助かります.
現在の原子時計の仕組みは,
・まず極低温に冷やした少数の原子を真空の共鳴空洞中にトラップ
・基底状態からの超微細構造部分の励起と共鳴するようにマイクロ波の周波数を調整
・マイクロ波カウンタで波の数をカウントし,一定数数えたら一秒(一秒である必要はありませんが)
という流れになっています.カウントの部分は現在ではまあGHzあたりなら測定できるので,周波数が秒の定義で用いられる「孤立した133Csの基底状態からの励起に相当する周波数=9192631770Hz」からどれだけずれるか,が問題となります.
現実の系では,複数のCs原子間の相互作用によるずれや共鳴部分でのずれなどがあり,測定される周波数のばらつきを含めて9192631770±Δ Hz,のようになります.
#実際には,系統誤差等ありますが,そういう取り除くことが可能そうなものを除いた上での誤差,と思ってください.
#また,必ずしもプラス方向とマイナス方向で同じ誤差とは限りません.
このときの周波数安定性は,Δ/9192631770程度です.これが10-17と言うことは,原子時計でマイクロ波を共鳴させると,その周波数に平均して0.0000001Hz程度の誤差が乗ってくる,ということです.このマイクロ波の波の数を数えて時間に変換していますので,周波数がずれると最終的な時間間隔にもずれが出ると言うことになります.
また,ある瞬間の周波数は安定していたとしても,例えば同じ原子時計をずっと動かしていると,じわじわとずれが生じます.例えば系統誤差(常に同じ量だけ真の値からずれる)は調整によってきちんと補正できますが,ずっと運転していると系統誤差の値そのものが変わる(装置の経時変化によるゆがみやら特性変化やら),などによりずれてきます(実際には随時補正).また,装置の寿命などの際には装置を交換しないといけませんので,同じ装置で同じだけの高精度を保ったまま測定を続ける,というのも限界があります.このため,長期的な安定性は必ずしも良いとは言えません.
なお,実際には,
・多数の原子時計を同時運用し平均を使うことでばらつきを減らす
・通常の原子時計より精度は高いけれどごく短い時間しか測定できないものを一次標準に使い各原子時計の系統誤差を減らす
という方法も併用して精度を出しています.
一方のパルサー(ミリ秒パルサー)ですが,こちらはパルサーの自転をカウントすることになります.磁極が地球の方を向いたときだけパルスがくるわけですので.
こいつはしばしば周波数がずれます.これは星震やらガス放出やらガスの落下などにより回転速度が微妙に変わる(角運動量保存則があるので,外から何か落ちてきたら速度が上がる,等)ためですが,このことにより短期的な安定性は原子時計に劣ります.
また,長期的には回転はじわじわと減衰していく方向ですので,この効果を差し引く必要があります(通常言うパルサーの回転安定性では,こういった差っ引ける項は差っ引いた後での安定性を議論します).
しかし,特にメンテナンスやら何やらが無くともそれなりに長い期間ほぼ同一の速度で回転し続ける(と信じられている)ため,長期的な安定性は高いと言えます.
Re: (スコア:0)
1746705のACです。詳しい説明をいただき、ありがとうございます。
frequency stabilityが10-17であることの意味が分りました。タレ込み文にある相対精度と書かれている部分に引っかかっての質問でしたが、説明のおかげでひとつ理解を深めることができました。