ええと,系統樹のネットワーク化といってもグラフの形状から言えばその描画方法を変えているだけで,樹状であることは同じです.
私には今回の方法は「環を使った」のではなくて「環をつくった」仕事と見えます.
つまり
A C
>ー<
B D
と
A B
>ー<
C D
の二つの系統関係が彼らの方法で90%以上の確率で支持されているときにこの二つを(無理矢理?)まとめて
A
|
Bー○ーC
|
D
とする,という方法です.
この方法,既に定説になっている真核細胞をつかったから正しく思えるのですが,そのような関係性のない種(例えばヒト,ゴリラ,チンパンジー,ボノボ)でもこういう「環」ができてしまう可能性があるのでは?という気がします.
恐らくバクテリアのレベルで水平移行を考えた進化モデルの構築には有効な手法なのだとは思いますが,これはそういう方法論の論文であって,この論文によって何か新しい事実が発見されたかというと疑問だというのが私の見解です.
論文を読んでみました (スコア:1)
> これは、従来の分子系統解析の方法が、「樹」状の系統関係を仮定したも
> のであったことから、ゲノムの融合を上手く解釈することができなかった
> からだと思う。
今回の手法も「樹」状の系統関係を使用しています.
ただ,ちょっと操作的なのですが,ある閾値以上の確率で複数の支持される
「樹」が複数ある場合,その「樹」を重ね合わせるという操作を行うとして
います.
その重ね合わせをつじつまあわせすると「環」ができあがるという仕組みで
す.
つまり,閾値を上げるとただの樹になり,下げすぎるとつじつまが合わなく
なってしまうので,本当に有効な手法かどうかは・・・
手法自体は
Lake and Rivera, Mol. Biol. Evol. 21(4):681-690. 2004
に書いてあって,私もちゃんと理解したわけではありませんが,これまでは
塩基配列のACGTが二つの生物でどう変わったかを比べて二つの種の距離を計
算して系統関係を導きだしていましたが,その方法だと単一の遺伝子を見て
いるだけならいいのですが,複数の遺伝子でそれぞれに系統関係を計算する
と矛盾する結果がでることが(よく)ありました.
これは人とチンパンジーとゴリラの間ですらあったように思いますが,バク
テリアのレベルではこのような現象はバクテリア同士での遺伝子の交換(水
平移行)の寄与が大きいとされています.
従来の方法は同じ遺伝子が祖先から受け継がれてきて徐々に変化して行くモ
デルだったため,このような「突然外からやってくる」遺伝子まで入れた系
統関係を把握することができませんでした.
そのため著者らがとったのは塩基配列だけではなく,ある生物の遺伝子をみ
たときに他の生物でその遺伝子に相当する遺伝子があるかないかを2つの記
号の配列に換算して,DNAの配列と同じように計算するという手法です.
もうここまで言うと何のことやら,となると思いますが,私の印象としては
「新しい手法により今日正接が補強された」というよりも「既に受け入れら
れている共生説が自説で再現できることを示した」仕事だと思いました.
kaho
Re:論文を読んでみました (スコア:1)
細かい手法のところはよくわかっていないのですが、
このあたりはどうだったかなと、三中の「生物系統学 [affrc.go.jp]」を取り出してみると、第4章にて、系統樹のネットワーク化がいろいろと議論されていました。そのあたりを読んでから、この論文を読んでみると、「環」を使ったのがうまいところなのかな、と思ったことでした。
Re:論文を読んでみました (スコア:1)
私には今回の方法は「環を使った」のではなくて「環をつくった」仕事と見えます.
つまり
A C
>ー<
B D
と
A B
>ー<
C D
の二つの系統関係が彼らの方法で90%以上の確率で支持されているときにこの二つを(無理矢理?)まとめて
A
|
Bー○ーC
|
D
とする,という方法です.
この方法,既に定説になっている真核細胞をつかったから正しく思えるのですが,そのような関係性のない種(例えばヒト,ゴリラ,チンパンジー,ボノボ)でもこういう「環」ができてしまう可能性があるのでは?という気がします.
恐らくバクテリアのレベルで水平移行を考えた進化モデルの構築には有効な手法なのだとは思いますが,これはそういう方法論の論文であって,この論文によって何か新しい事実が発見されたかというと疑問だというのが私の見解です.
kaho