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>というのを「だれも実証していない」と書いてたりするんですよ。
「上面の空気流の速度が上がるので、圧力が下がり揚力が発生する」というのは、(当然のことながら)とうの昔に検証されています。ただ、航空機の力学に関して完全にわかっているのかと言えばそういうわけでもなく、わからない部分があるのも確かだったはず。具体的には、上面の速度の方が高くなる根本的な部分は何なのか、そしてその程度は、という部分。以下、はるか昔に聞いた流体力学の記憶を頼りに書いているんで、間違いがあるかも。
まず完全流体(粘性がゼロ)の力学が作られたが、この場合は板を流体の流れに対し角度を持たせたとしても力は発生しない(ダランベールのパラドクス)。これは実際に観測される事実(川の中に斜めにした板を置くと大きな力を受ける)と大きく異なり、実際の流体から物体が受ける力を考えるときには粘性を考慮に入れる必要があることを意味する(超流動ならOK?)。
続いて現象論的に、完全流体中に物体を入れた際に、その物体の周囲に渦流が出来たと仮定(完全流体なら本来出来ないが、粘性の効果を現象論的に導入)してやると、流れに垂直な方向に力が働くこと(=揚力の発生)が示された(クッタ・ジューコフスキーの定理)。これにより、一応定性的には揚力が発生する理由とか、どういうときに揚力が大きくなりそうか、という予想は立つようになる。ここで導入した渦流はあくまで完全流体の方程式内で実在の流体を扱うために導入された便宜的なものであり、実際に存在するのかどうかの保証はない。ただし、実験事実からは翼面には無数の渦流が発生していることが明らかとなっている。
では完全流体ではなく粘性のある流体の式を直接考えれば良いではないか、ということになる。そのような実在の流体を扱える方程式としてナビエ・ストークスの式があるが、この一般解は知られていない(そもそも一般解が存在するかどうかすら謎)。解ければ懸賞金がもらえるけど。そのため実際には、風洞実験で得られたパラメータなどを用いた近似式を用い、それを使って数値シミュレーションすることで実際の航空機の挙動を推定できるようになっている。ただし、近似式からのズレが非常に大きくなる領域(例えば定常飛行と失速との境界などの極端な条件)ではその挙動を完全に再現することが出来ない。原理的にはナビエ・ストークスの式を数値的にどんどん細かく解いていけば再現できるはずだけれども、現実的には無理。この辺は原理的にはシュレディンガー方程式を解くことでいかなる物体の性質でも知ることが出来るけれども現実的には多体系が解けないのと似ているところ。そのため、極端な条件下での挙動を知るためには現在でも風洞実験が欠かせないと言うことになる。
そんなわけで、・渦があると揚力が働く(完全流体の理論)・渦は存在している(実験事実)・揚力はきちんと計算できる(半経験的な式より)・実際の運動はナビエ・ストークス方程式で記述できるはず(でも解けない、つまり細かい解析も出来ない)・だから微視的な渦の発生機構、渦の正確な運動、渦と揚力の間の厳密で定量的な関係、の理論面は謎という感じだったかと。
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UNIXはただ死んだだけでなく、本当にひどい臭いを放ち始めている -- あるソフトウェアエンジニア
こんな説もあるんだけど、識者の反論を待つ (スコア:0)
ってのに
「飛行機が飛ぶ仕組みは、科学的には解明されておらず、本当のところよく分からないのだ」
とあって、よく持ち出される
「翼形断面だと上面の空気流の速度が上がるので、圧力が下がり揚力が発生する」
というのを「だれも実証していない」と書いてたりするんですよ。
あるのだけど、じゃぁ エアバスやボーイングなんかはアテズッポウで
飛行機を設計しているというのだろうか?
Re:こんな説もあるんだけど、識者の反論を待つ (スコア:4, 参考になる)
>というのを「だれも実証していない」と書いてたりするんですよ。
「上面の空気流の速度が上がるので、圧力が下がり揚力が発生する」というのは、(当然のことながら)とうの昔に検証されています。
ただ、航空機の力学に関して完全にわかっているのかと言えばそういうわけでもなく、わからない部分があるのも確かだったはず。具体的には、上面の速度の方が高くなる根本的な部分は何なのか、そしてその程度は、という部分。
以下、はるか昔に聞いた流体力学の記憶を頼りに書いているんで、間違いがあるかも。
まず完全流体(粘性がゼロ)の力学が作られたが、この場合は板を流体の流れに対し角度を持たせたとしても力は発生しない(ダランベールのパラドクス)。これは実際に観測される事実(川の中に斜めにした板を置くと大きな力を受ける)と大きく異なり、実際の流体から物体が受ける力を考えるときには粘性を考慮に入れる必要があることを意味する(超流動ならOK?)。
続いて現象論的に、完全流体中に物体を入れた際に、その物体の周囲に渦流が出来たと仮定(完全流体なら本来出来ないが、粘性の効果を現象論的に導入)してやると、流れに垂直な方向に力が働くこと(=揚力の発生)が示された(クッタ・ジューコフスキーの定理)。これにより、一応定性的には揚力が発生する理由とか、どういうときに揚力が大きくなりそうか、という予想は立つようになる。
ここで導入した渦流はあくまで完全流体の方程式内で実在の流体を扱うために導入された便宜的なものであり、実際に存在するのかどうかの保証はない。ただし、実験事実からは翼面には無数の渦流が発生していることが明らかとなっている。
では完全流体ではなく粘性のある流体の式を直接考えれば良いではないか、ということになる。そのような実在の流体を扱える方程式としてナビエ・ストークスの式があるが、この一般解は知られていない(そもそも一般解が存在するかどうかすら謎)。解ければ懸賞金がもらえるけど。
そのため実際には、風洞実験で得られたパラメータなどを用いた近似式を用い、それを使って数値シミュレーションすることで実際の航空機の挙動を推定できるようになっている。ただし、近似式からのズレが非常に大きくなる領域(例えば定常飛行と失速との境界などの極端な条件)ではその挙動を完全に再現することが出来ない。原理的にはナビエ・ストークスの式を数値的にどんどん細かく解いていけば再現できるはずだけれども、現実的には無理。この辺は原理的にはシュレディンガー方程式を解くことでいかなる物体の性質でも知ることが出来るけれども現実的には多体系が解けないのと似ているところ。
そのため、極端な条件下での挙動を知るためには現在でも風洞実験が欠かせないと言うことになる。
そんなわけで、
・渦があると揚力が働く(完全流体の理論)
・渦は存在している(実験事実)
・揚力はきちんと計算できる(半経験的な式より)
・実際の運動はナビエ・ストークス方程式で記述できるはず(でも解けない、つまり細かい解析も出来ない)
・だから微視的な渦の発生機構、渦の正確な運動、渦と揚力の間の厳密で定量的な関係、の理論面は謎
という感じだったかと。