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>歴史上、たった4回
ところでこれ、人類史において測定可能になってから4回という意味ですよね。地球の歴史とかインフルエンザウイルスそのものの歴史とかではなく。
たった50年くらいのあいだに4回という回数は、人間のライフタイムと比べれば十分多いような。
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アレゲは一日にしてならず -- アレゲ研究家
そもそも (スコア:0)
鳥と豚の間も感染するんじゃなかったけ?
鳥のインフルエンザの遺伝子と人のインフルエンザの遺伝子が豚の体内で変異して新型のインフルエンザになると思っていたんだけど。
H5N1型は鳥から直接感染するから大騒ぎになっただけで豚からだと致死率が高くなければ問題じゃないような。
根本的に記憶違いだったかな?
Re:そもそも (スコア:3, 参考になる)
この「トリとヒトのウイルスが、ブタの体内で組み換えを起こして新型のインフルエンザウイルスができる」というのは、大学のウイルス学の講義なんかでは必ずと言っていいほど説明される内容なのですが、何と言うか、「新型インフルエンザはそうやって(のみ)生まれる」というふうに、教科書的に考えてはいけない類いの話だったりします。
というのは、そもそも「新型インフルエンザウイルスの出現」というイベントは、これまでの歴史上、たった4回しか起きてないものなのです。つまり、(1)スペインかぜの出現(H1N1, 1918)、(2)アジアかぜの出現(H2N2, 1957), (3)香港かぜの出現(H3N2, 1968), (4)ソ連かぜの出現(H1N1, 1977…H1N1の再出現?)の4回(ソ連かぜでは新しいHNの組み合わせが起きたわけではないので、3回とカウントする人もいますが)
このうちH2N2とH3N2の出現は、ヒトのインフルエンザウイルスにトリ由来の遺伝子がブタの介在で入ったものだと考えられてますが、それでも「4回のうち2回」がそうであった、というものです。これに対して、スペインかぜは恐らくトリ由来のものが直接ヒトに感染するようになった(現在の高病原性H5N1が同じメカニズムと疑われてる)ものだし、ソ連かぜの出現のメカニズムについてはよく判っておらず、そもそも「それまでの常識を覆したもの」とだったわけです。
つまり「ヒトとトリのウイルスがブタに同時感染して新型が生まれる」ということは正しいのだけど、「新型は(常に)ヒトとトリのウイルスからブタを介して生まれる」という、逆は成り立たないのです。今後も、もしかしたらまったく別のメカニズムで「新型」が発生する可能性も存在しているというわけです。
Re: (スコア:0)
>歴史上、たった4回
ところでこれ、人類史において測定可能になってから4回という意味ですよね。
地球の歴史とかインフルエンザウイルスそのものの歴史とかではなく。
たった50年くらいのあいだに4回という回数は、
人間のライフタイムと比べれば十分多いような。
Re:そもそも (スコア:2, 興味深い)
(snip)
>たった50年くらいのあいだに4回という回数は、人間のライフタイムと比べれば十分多いような。
確かにそうです。でも、じゃあスペインかぜ以前に同様な大変異が起こっていたかどうかというと、実際のところは「判らない」としか答えようはないのですが、その可能性はむしろ低いんじゃないかと。
#ここらへん(一応、微生物感染症学が専門とはいえ)インフルエンザウイルスの専門家というわけではない個人の推測を含みますが
インフルエンザという疾患が、スペインかぜ以前からあったことについては間違いがありません。しかし、それらのインフルエンザとスペインかぜは、重篤度からも伝染力からも全くの別物と言っていいほどのものです。スペインかぜは当時のトリ由来のウイルスがヒトの世界に入ってきたものと考えられてますが、もともとインフルエンザウイルスは水鳥を宿主とするものであり、水鳥にはH1〜15 (16), N1〜9のすべてのものが存在し、非常にバリエーションに富んでいます。これに対してヒトを宿主とするものは、H1N1, H2N2、H3N2の3種だけに限られます。もしもスペインかぜ以前から大変異が頻繁に起こっていたのであれば、ヒトにおいてももっとさまざまな種類の亜型が存在していておかしくないはずです。
スペインかぜ以前と以後とで、インフルエンザはほとんど別の疾患と呼べるものになってしまったという可能性があります。何分にも、スペインかぜ以前の記録については不明な点が多すぎるので何とも言えませんが、ひょっとしたら以前は、ヒトのインフルエンザはそもそもバリエーションが極めて少ないものだったのかもしれません。それがスペインかぜの出現によって、トリに存在する多様な亜型を受け入れる「入り口」が生じてしまったのかもしれない。例えば、こういった亜型の話はすべて、A型インフルエンザウイルスに関するものであり、B型インフルエンザウイルスにはこのような亜型の違いは存在せず、ヒトのみを宿主にしています。もしかしたら、スペインかぜ以前のA型インフルエンザウイルスも同様に、ヒトのみを宿主とするバリエーションの少ないものであったのかもしれません。さらに言うなら、スペインかぜ以前に記録が残っている「インフルエンザ」の多くが、そもそもB型インフルエンザで、実はスペインかぜ以前にはヒトを宿主とするA型は存在してなかったのでは?とか、実はそういったすべての(トリインフルエンザやA型B型なども含めて)インフルエンザウイルス自体のバリエーションが、当時は極めて少なかったのでは?いう考え方もできるかもしれません。
こういった考え方の一つの証拠としては、ウイルスタンパク質の進化の時期に関するいくつかの研究を挙げることが出来るでしょう。例えばヘマグルチニン(HA, H)のアミノ酸配列の違いから、A型とB型の分岐が起きたのは4000年前頃 [nih.gov]という説がありますし、A型でヒトとブタでの分岐が起きたのが1905年頃 [nih.gov]という論文が出てます(これらはやや古い論文ですが)。また、ノイラミニダーゼ(NA, N)のアミノ酸配列の違いから、ヒトとトリのA型インフルエンザウイルスの分岐が起こったのは1890年以降 [nih.gov]で、トリでの多様化もそれ以降に起きているという論文も出てます。これらの研究結果がどの程度「確からしい」と言えるかについては、今後のさらなる研究が必要だと思われますが、少なくとも、スペインかぜ流行の少し前に、何らかのきっかけによってインフルエンザウイルスが大きく変化するイベントがあったと考えることができるでしょう。それが何かについては判りませんが、現在のような大変異が生じるメカニズムは、このときのインフルエンザウイルスの変化に伴って生まれたとも考えられることができます。