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一つのことを行い、またそれをうまくやるプログラムを書け -- Malcolm Douglas McIlroy
ずっと前から論争中の話題で、既に反証もあるネタ (スコア:5, 参考になる)
ここらへん説明がややこしいし、まだ判ってないところも多いんだけどなぁ…でもまぁ、一言で言うと表題に書いた通りです。
正直言うと、ロイターとは言えど「一般報道」のレベルなので、書かれてる内容は、過去にあったいろんな話がごちゃまぜに混同されてて正しくありません。
#ただでさえ最近はカナダやニュージーランドで(主に子供のエナジードリンク使用を問題にした)カフェイン摂取規制の動きが進んでてややこしくなってるところ、これまた面倒というか迷惑と言うか……
まず、カフェインの脳(=中枢神経系)への作用は、大きく「中枢神経興奮作用」とか「覚醒作用」とか呼ばれますが、細かく言うと、(1)眠気の軽減、(2)周囲への注意力の喚起、(3)精神疲労の低減、(4)心理的ストレスの低減、という要素が組み合わさってます。その結果として「(こないだコクラン [nih.gov]にも出たように)作業中の事故や間違いを減らす」とか「夜間の長距離ドライブでの注意力を向上する」とか「内田クレペリンテストの成績を上げる」、というようなことにつながります。
これらの作用メカニズムについてはいずれも、脳にあるアデノシンA1A受容体とA2受容体を、カフェインが阻害することによります。ただ、これらの受容体が互いに相互作用して調節しており、その分子メカニズムの全容は複雑でまだよく判ってはいません。
次に、「耐性がつくか」については、以前もコメント [srad.jp]しました。昔は教科書などでも、カフェインの中枢作用については「耐性は生じない」と説明されてました。しかし最近、A1A受容体については組織耐性が生じることが報告されています。ただ、A2受容体については耐性を生じず、おそらくはA2受容体単独でも「眠気」「精神疲労」の低減や「注意力の喚起」には十分な作用があるので、「全体に見ると耐性にはならない(ただし部分的には見られるかも)」ということです。今回の報道は、このうちA1Aに対する耐性だけを取り上げてて説明してるわけです。
#ただし、不安感などの副作用についてはA1Aの方が優位だと言われてますので、今回のロイターの報告で「不安感」に対し耐性がついてるのは、まぁうなずける部分。
それから次に、「離脱症状」との関係についてですが、これを「カフェインの作用」でひとまとめに語ってるのが、今回の報道の最大の落し穴でして。
まず「眠気」「精神疲労」の低減、「注意力の喚起」については、これはカフェイン依存状態かどうかに関わらず、薬理作用として認められることが判ってます(何より、これまで一滴のカフェインを投与してないハツカネズミでも見られる作用でもある)。
その一方で、主に「心理的ストレスの低減」と関係する作用と考えられてるのですが、「カフェインの摂取によって『前向きな気分』(positive mood)になる」効果については、議論が続いてました。カフェインを常用していない健康な人を対象にした調査ではこの効果はほとんど認められず、カフェイン離脱の症状として「落ち込んだ気分」(negative mood)になる、ということも知られていたので、「positive moodになるのは、単にカフェイン離脱症状が解消されただけではないのか」と指摘されてました。ロイターの報道は、このことを指してます。
ところが、この指摘に対する反証が近年いくつか(その1 [nih.gov] 2 [nih.gov])、ヒトでの介入試験の結果から既に出ています。これらの実験では、確かに「カフェインを常用していない『正常な状態にある』人」ではあまり効果はなかったのだけど、「カフェインを常用していない『疲労した状態にある』人」では、カフェインの効果が認められてます。つまりpositive moodになるのは、カフェイン離脱症状の場合ではなく「疲労した、あるいはnegative moodにある場合」に見られる効果だった、ということです。
こっから先は勝手な推測ですが。元々アデノシン受容体を介する中枢作用は、アデノシン受容体がドパミン受容体に対して調節的に働くことで、カフェインがドパミン神経系を「間接的に」興奮させることによるものだと考えられてます。アンフェタミンやコカインなどのいわゆる「覚せい剤」や「ドラッグ」では、モノアミン取り込み阻害などによってドパミン神経系を「直接的に」興奮させるわけですが、この部分の分子メカニズムの違いが持つ意味が大きいのだろう、と。
後者に見られる「直接の刺激」では、「疲れてる人はそれなりに、普通の人はより『ハイな気分』に」してしまい、いわゆる「精神毒性」が強くなり、規制の必要が大きい。
これに対してカフェインに見られる「間接的な刺激」の場合(おそらくはアデノシン受容体同士の拮抗作用も関係してるだろうけど)、「疲れてる人はそれなりに」の効果しかないのだろうと。このことが、これまでカフェインが、時折いわゆる「ドラッグ」の仲間と同一視されながらも、その薬物依存が社会問題になることがなかった理由なのではないかと考えてます。
Re: (スコア:0)
(誤)A1A, A2 → (正)A1, A2A
#一応、大事なとこなので訂正。
鎮痛効果?ないですよ (スコア:0)