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ワンタイムパッドによる暗号通話の解読は原理的に不可能でも、量子鍵配送を攻撃者が「観測」し続ければ、鍵に対する盗聴が検出されて新規の鍵が届かなくなって、暗号通話が継続不能になるんじゃないだろうか。
絶対解読不能な暗号通信を使用不能にされれば、通信者は安全性の劣る通信チャンネルを使わざるを得ないので、結果的に通信内容を傍受されてしまう危険性があるんじゃないかな。
量子鍵配送の中継装置を作るというのは原理的に可能なんですか?中継装置中で盗聴されると、盗聴が行われていること自体を検知できないのではないかと考えたのですが。
>中継装置を作るというのは原理的に可能なんですか?
可能です.量子暗号ではentangleした粒子のペアを使います.例えばAとBがペアであるとすると,Aに測定を行った結果はBの結果とカップルしており,この量子的な相関を利用して通信する手法です.さてここでAとBがentangleしたペアであったときに,別のentangleしたペアCとDを持ってきて,BとCとを一体の系として混合するような観測(測定)が存在します.このような測定を行った後には,測定に利用しなかったAとDとか新たにentangleしたペアへと変換されます(正確に言えば,どのような測定をしても良いわけではなく,そのように変換するためのある特定の測定がある).
A,Bのペア:送信者が発生させ,Aを送信者がそのまま所持,Bは中継器に持って行くC,Dのペア:中継器で発生させ,送信者から送られてきたBと発生させたCを混合,その結果AとペアになったDを受信者に送る
その結果,送信者と受信者の間ではentangleしている(新たな)ペアA-Dが分割所有されている状態になります.このA-Dを利用して量子暗号通信を行うことが可能です.また余談ではありますが,多ビットを使うことで,中継機内でコヒーレンス(どの程度entangleした状態が崩れずに残っているか)を回復することが可能です.3bit -> 1bitに減らす代わりに,崩れかけたコヒーレンスが回復する,まあメモリで言うECCに似たようなものです.
>中継装置中で盗聴されると、盗聴が行われていること自体を検知できないのではないかと考えたのですが。
この量子的な相関を使った中継の場合,中継機内でも個々の粒子に対する測定は行われませんので,盗聴は無理です.以下は古典的に書いてしまうので正確な記述ではないのですが,例えば前記の話でA,B,C,Dはそれぞれ0か1を取り,ペアの間では必ず0と1が組になっている(一方が0なら他方は必ず1)としましょう.
最初にA-Bのペアが生成します.測定するまではどちらが1でどちらが0か確定していません.続いて,中継機内でC-Dのペアが生成します.こちらも同様.その後,中継機内でBとCのXOR測定(に相当するようなもの.古典で書いているのでちょっと実際の測定とは異なります)が行われます.その結果,BとCが同じであったのか,異なっていたのかが決定します.
*しかしながら実はまだ量子論的な1か0かが確定していない,という状況は生きていて,例えば「BとCが同じ」,という結果だったとしても,「0と0で同じ」だったのか「1と1で同じ」だったのかは未確定(情報がないからわからない,のではなく,物理的にまだ決まっていない状態)となります.
さて,測定の結果,「BとCが同じ」という結果が得られたら,Dを(測定はせず)180度反転する操作(これは元が0であれ1であれ,0なのか1なのかを確定することなくひっくり返す操作です)を施してからに受信者に送ります.AとBは元々ペアですのでAとBは必ず逆になります.CとDもペアなので必ず逆になります.一方,BとCは同じです.つまり,AとDは同じであったわけで,Dを180度ひっくり返す操作後はAとDが必ず0-1か1-0の組=ペアとなっています.一方,「BとCは逆」と言う結果が得られたなら,Dには何の操作も施さず受信者に送ります.この場合も,AとDはペアになっているわけです.
この過程の間で,中継器が得ることの出来る情報は「BとCが同じか否か」だけであって,個々のBやC(ひいてはAやD)が何なのか,という情報は一切得ることが出来ません.さらには,そういう情報を得ようとする測定は必ずペアを破壊しますので,「entangleしたペア」が送信者と受信者の間で共有されることが無くなります(つまり,entangleの度合いを試しにいくつか測定してみることで盗聴有無を判別可能).
まあ,中継器は,中継されている内容を一切読まずに単に増幅するアンプ,のようなものですね.しかもそこで誰かが内容を読もうと試みるとそれが通信を破壊して盗聴されていることが送受信者にばれる,という.
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開いた括弧は必ず閉じる -- あるプログラマー
解読不能だがDoSは可能? (スコア:3, すばらしい洞察)
ワンタイムパッドによる暗号通話の解読は原理的に不可能でも、量子鍵配送を攻撃者が「観測」し続ければ、鍵に対する盗聴が検出されて新規の鍵が届かなくなって、暗号通話が継続不能になるんじゃないだろうか。
絶対解読不能な暗号通信を使用不能にされれば、通信者は安全性の劣る通信チャンネルを使わざるを得ないので、結果的に通信内容を傍受されてしまう危険性があるんじゃないかな。
Re: (スコア:0)
tappingされたことは検知できるのだから,ならば「盗聴装置」を見つけて取り外せば問題解決
ただし,上記は専用の伝送ラインを用いている場合の話(要は国家レベルの暗号通信)
将来,商用化されて複数の事業者のライン,中継装置をまたぐような形で量子鍵配送をする場合は,どこでtappingされているかの調査が極めて困難になるかもしれない
Re: (スコア:1)
量子鍵配送の中継装置を作るというのは原理的に可能なんですか?
中継装置中で盗聴されると、盗聴が行われていること自体を検知できないのではないかと考えたのですが。
Re:解読不能だがDoSは可能? (スコア:5, 参考になる)
>中継装置を作るというのは原理的に可能なんですか?
可能です.
量子暗号ではentangleした粒子のペアを使います.例えばAとBがペアであるとすると,Aに測定を行った結果はBの結果とカップルしており,この量子的な相関を利用して通信する手法です.
さてここでAとBがentangleしたペアであったときに,別のentangleしたペアCとDを持ってきて,BとCとを一体の系として混合するような観測(測定)が存在します.このような測定を行った後には,測定に利用しなかったAとDとか新たにentangleしたペアへと変換されます(正確に言えば,どのような測定をしても良いわけではなく,そのように変換するためのある特定の測定がある).
A,Bのペア:送信者が発生させ,Aを送信者がそのまま所持,Bは中継器に持って行く
C,Dのペア:中継器で発生させ,送信者から送られてきたBと発生させたCを混合,その結果AとペアになったDを受信者に送る
その結果,送信者と受信者の間ではentangleしている(新たな)ペアA-Dが分割所有されている状態になります.このA-Dを利用して量子暗号通信を行うことが可能です.
また余談ではありますが,多ビットを使うことで,中継機内でコヒーレンス(どの程度entangleした状態が崩れずに残っているか)を回復することが可能です.3bit -> 1bitに減らす代わりに,崩れかけたコヒーレンスが回復する,まあメモリで言うECCに似たようなものです.
>中継装置中で盗聴されると、盗聴が行われていること自体を検知できないのではないかと考えたのですが。
この量子的な相関を使った中継の場合,中継機内でも個々の粒子に対する測定は行われませんので,盗聴は無理です.
以下は古典的に書いてしまうので正確な記述ではないのですが,例えば前記の話でA,B,C,Dはそれぞれ0か1を取り,ペアの間では必ず0と1が組になっている(一方が0なら他方は必ず1)としましょう.
最初にA-Bのペアが生成します.測定するまではどちらが1でどちらが0か確定していません.
続いて,中継機内でC-Dのペアが生成します.こちらも同様.
その後,中継機内でBとCのXOR測定(に相当するようなもの.古典で書いているのでちょっと実際の測定とは異なります)が行われます.その結果,BとCが同じであったのか,異なっていたのかが決定します.
*しかしながら実はまだ量子論的な1か0かが確定していない,という状況は生きていて,例えば「BとCが同じ」,という結果だったとしても,「0と0で同じ」だったのか「1と1で同じ」だったのかは未確定(情報がないからわからない,のではなく,物理的にまだ決まっていない状態)となります.
さて,測定の結果,「BとCが同じ」という結果が得られたら,Dを(測定はせず)180度反転する操作(これは元が0であれ1であれ,0なのか1なのかを確定することなくひっくり返す操作です)を施してからに受信者に送ります.
AとBは元々ペアですのでAとBは必ず逆になります.CとDもペアなので必ず逆になります.一方,BとCは同じです.つまり,AとDは同じであったわけで,Dを180度ひっくり返す操作後はAとDが必ず0-1か1-0の組=ペアとなっています.
一方,「BとCは逆」と言う結果が得られたなら,Dには何の操作も施さず受信者に送ります.この場合も,AとDはペアになっているわけです.
この過程の間で,中継器が得ることの出来る情報は「BとCが同じか否か」だけであって,個々のBやC(ひいてはAやD)が何なのか,という情報は一切得ることが出来ません.さらには,そういう情報を得ようとする測定は必ずペアを破壊しますので,「entangleしたペア」が送信者と受信者の間で共有されることが無くなります(つまり,entangleの度合いを試しにいくつか測定してみることで盗聴有無を判別可能).
まあ,中継器は,中継されている内容を一切読まずに単に増幅するアンプ,のようなものですね.しかもそこで誰かが内容を読もうと試みるとそれが通信を破壊して盗聴されていることが送受信者にばれる,という.