アカウント名:
パスワード:
放射線と発ガンの因果関係は、わかってない部分のほうが多いんだが、それでも現状の理解で安心しろというんだろうか?
昔原医研の人だったかの講義を聞いた範囲では,こんな感じだったかと.
高線量域(大ざっぱに言って,自然放射線の100倍以上の線量)に関してはほぼわかっている.結果もきれいに出る.議論百出なのは低線量域(同100倍以下).この領域で問題になっているのは,簡単に言ってしまえば「影響のでない線量というのがあるのか無いのか?」という点.
例えばある臓器にあるエネルギーの放射線を照射したときに,自然放射線の1000倍当てると発癌率が1/10000だったとします(ここで数値は適当です).現在わかっているのは,この倍の量当てると発癌率が2/10000程度になるし,10倍当てれば10/10000程度になる,1/10当てれば0.1/10000になる,という部分です.ここに関してはかなりよくわかっています.#事故事例の解析とか,動物実験などから.
では現在何がわかっていないのかというと,前述の例の1/100,つまり自然放射線の10倍程度などの低線量を照射した場合に,発癌率はどのぐらいになるのか?という部分です.このあたりの低線量域ですと発癌率の変化が小さく,照射の影響なのか誤差なのかが区別できなくなってくることに由来します.現在のところ3つの説があって,
説1. (ラジカル経由などでの)遺伝子などの破壊率は線量に比例するだろうから,どれだけ低線量でも線形なはず.発癌率の増加量 = 比例定数*線量
説2. ある程度以下の線量だと,修復機能の範囲内で収まるからある閾値以下で影響はなくなるはず.閾値線量以下:発癌率の増加量 = 0閾値線量以上:発癌率の増加量 = 比例定数*(線量-閾値) ~ 比例定数*線量 (閾値は小さいため,ある程度以上の線量ではゼロと見なせる)
説3. ある程度軽微な損傷を受けた方が,修復機構が活性化して他の理由(化学物質による損傷など)での癌化も抑制され,結果として発癌率は下がる.(放射線ホルミシス効果説)閾値線量以下:発癌率はむしろ減少閾値線量以上:発癌率の増加量 ~ 比例定数*線量
それぞれの説に基づいて安全基準を定める場合,説1に基づく場合が最も厳しい基準となります(安全域がないから).また,現在のところ基準はこの説1に基づいて,「まあこのぐらいの確率なら他の原因に比べても高くない(十分低い)から良いだろ」という値に設定されています.#確率がどのぐらい低ければ「十分低い」と見なすかは国などにより異なります.
説1から3のどれが実際のところなんだ,というのはまだまだ議論がありますが,この講義を聴いた際(数年前)には「どうも臓器によって違うのではないか?」という話をされていました.
http://www.remnet.jp.cache.yimg.jp/kakudai/07/panel4.html [cache.yimg.jp]
この最後のほうで言ってる部分ですね。
「突然変異の頻度が線量の増加とともに直線的に増加することは確かで、これはどのような実験系でも確認されています。しかし、放射線発がんの場合には突然変異だけでなく、細胞死とそれに続く組織再生の過程が深く関わっていると私は考えております。したがって、この部分の線量反応は決して直線にはならず、多分線形二次曲線、あるいはごく低レベルの線量域にしきい値があるような形になるのではないかというのが現在の私の考えであります。」
こうした知見があるにもかかわらず、以下のような強弁が出てくるのが権威主義に陥ってる実例なのです。
http://srad.jp/hardware/comments.pl?sid=527414&cid=1927949 [srad.jp]
引用している「知見」と非難している「強弁」は同じことを言っているように見えます。
知見:(遺伝子の)突然変異だけでなく -> 強弁:遺伝子を破壊する物理はとても簡単です知見:細胞死とそれに続く組織再生の -> 強弁:たんぱく質程度の分子は簡単に破壊できますし、
それを「ここまでわかった」と評するか「これだけしかわかっていない」と評するかは主観の問題じゃないかなあ
まあでもよくわかってない部分に関しては、現状の規制値より緩くなる方向(実際の害が現在用いられている手法による予測より少なくなる方向)だから(現状では)心配はしなくても良いと思うよ。#事態が悪化したら話は別だけど、それはまさに別な話だし。
より多くのコメントがこの議論にあるかもしれませんが、JavaScriptが有効ではない環境を使用している場合、クラシックなコメントシステム(D1)に設定を変更する必要があります。
私はプログラマです。1040 formに私の職業としてそう書いています -- Ken Thompson
いつから日本の科学精神は懐疑主義から権威主義に変わった? (スコア:0)
放射線と発ガンの因果関係は、わかってない部分のほうが多いんだが、
それでも現状の理解で安心しろというんだろうか?
わかってないのは低線量域 (スコア:5, 興味深い)
昔原医研の人だったかの講義を聞いた範囲では,こんな感じだったかと.
高線量域(大ざっぱに言って,自然放射線の100倍以上の線量)に関してはほぼわかっている.結果もきれいに出る.
議論百出なのは低線量域(同100倍以下).この領域で問題になっているのは,簡単に言ってしまえば「影響のでない線量というのがあるのか無いのか?」という点.
例えばある臓器にあるエネルギーの放射線を照射したときに,自然放射線の1000倍当てると発癌率が1/10000だったとします(ここで数値は適当です).現在わかっているのは,この倍の量当てると発癌率が2/10000程度になるし,10倍当てれば10/10000程度になる,1/10当てれば0.1/10000になる,という部分です.ここに関してはかなりよくわかっています.
#事故事例の解析とか,動物実験などから.
では現在何がわかっていないのかというと,前述の例の1/100,つまり自然放射線の10倍程度などの低線量を照射した場合に,発癌率はどのぐらいになるのか?という部分です.このあたりの低線量域ですと発癌率の変化が小さく,照射の影響なのか誤差なのかが区別できなくなってくることに由来します.現在のところ3つの説があって,
説1. (ラジカル経由などでの)遺伝子などの破壊率は線量に比例するだろうから,どれだけ低線量でも線形なはず.
発癌率の増加量 = 比例定数*線量
説2. ある程度以下の線量だと,修復機能の範囲内で収まるからある閾値以下で影響はなくなるはず.
閾値線量以下:発癌率の増加量 = 0
閾値線量以上:発癌率の増加量 = 比例定数*(線量-閾値) ~ 比例定数*線量 (閾値は小さいため,ある程度以上の線量ではゼロと見なせる)
説3. ある程度軽微な損傷を受けた方が,修復機構が活性化して他の理由(化学物質による損傷など)での癌化も抑制され,結果として発癌率は下がる.(放射線ホルミシス効果説)
閾値線量以下:発癌率はむしろ減少
閾値線量以上:発癌率の増加量 ~ 比例定数*線量
それぞれの説に基づいて安全基準を定める場合,説1に基づく場合が最も厳しい基準となります(安全域がないから).
また,現在のところ基準はこの説1に基づいて,「まあこのぐらいの確率なら他の原因に比べても高くない(十分低い)から良いだろ」という値に設定されています.
#確率がどのぐらい低ければ「十分低い」と見なすかは国などにより異なります.
説1から3のどれが実際のところなんだ,というのはまだまだ議論がありますが,この講義を聴いた際(数年前)には「どうも臓器によって違うのではないか?」という話をされていました.
Re:わかってないのは低線量域 (スコア:1, 参考になる)
http://www.remnet.jp.cache.yimg.jp/kakudai/07/panel4.html [cache.yimg.jp]
この最後のほうで言ってる部分ですね。
「突然変異の頻度が線量の増加とともに直線的に増加することは確かで、これはどのような実験系でも確認されています。しかし、放射線発がんの場合には突然変異だけでなく、細胞死とそれに続く組織再生の過程が深く関わっていると私は考えております。したがって、この部分の線量反応は決して直線にはならず、多分線形二次曲線、あるいはごく低レベルの線量域にしきい値があるような形になるのではないかというのが現在の私の考えであります。」
こうした知見があるにもかかわらず、以下のような強弁が出てくるのが権威主義に陥ってる実例なのです。
http://srad.jp/hardware/comments.pl?sid=527414&cid=1927949 [srad.jp]
Re:わかってないのは低線量域 (スコア:1)
引用している「知見」と非難している「強弁」は同じことを言っているように見えます。
知見:(遺伝子の)突然変異だけでなく -> 強弁:遺伝子を破壊する物理はとても簡単です
知見:細胞死とそれに続く組織再生の -> 強弁:たんぱく質程度の分子は簡単に破壊できますし、
それを「ここまでわかった」と評するか「これだけしかわかっていない」と評するかは主観の問題じゃないかなあ
Re: (スコア:0)
まあでもよくわかってない部分に関しては、現状の規制値より緩くなる方向(実際の害が現在用いられている手法による予測より少なくなる方向)だから(現状では)心配はしなくても良いと思うよ。
#事態が悪化したら話は別だけど、それはまさに別な話だし。