Goettler, R. L., & Gordon, B. R. (2011). Does AMD Spur Intel to Innovate More?. Journal Of Political Economy, 119(6), 1141-1200. http://www.jstor.org/discover/10.1086/664615?uid=3738328&uid=2&... [jstor.org] 1993年から2004年までの四半期のデータを利用した分析によると、AMDが居なかった方が技術革新のペースは4.2%早くかったが、独占による価格上昇によって消費者の余剰(支払っても良い上限額と実際に支払った額の差額の総和)は120億ドル損なわれたとのことです。 従って、タレコミ文にある「市場の独占が起きると技術革新のペースが遅くなり」は実証的に
Does AMD Spur Intel to Innovate More? (スコア:5, 興味深い)
Goettler, R. L., & Gordon, B. R. (2011). Does AMD Spur Intel to Innovate More?. Journal Of Political Economy, 119(6), 1141-1200.
http://www.jstor.org/discover/10.1086/664615?uid=3738328&uid=2&... [jstor.org]
1993年から2004年までの四半期のデータを利用した分析によると、AMDが居なかった方が技術革新のペースは4.2%早くかったが、独占による価格上昇によって消費者の余剰(支払っても良い上限額と実際に支払った額の差額の総和)は120億ドル損なわれたとのことです。
従って、タレコミ文にある「市場の独占が起きると技術革新のペースが遅くなり」は実証的に
Re: (スコア:0)
>B・単位生産の費用を削減する投資から得られる見返りは販売量が多ければ多いほど大きくなるため、市場を独占しているときの方がより多くの投資を行う誘因を持つ
無理があるでしょ…
「設備投資には生産コスト低減と生産力増大の2つの効果がある」は一般論としてその通りだけど、
「作れば作るほど売れる独占状態なら、より儲ける為に積極的に技術開発・設備投資するはずだ」というストーリーに一般論をくっつけられても、何にもならない
論文を読んでいないので的外れな感想かもしれませんが、論文執筆者の経済学観にかなり問題ありという感触
これがかの有名なシカゴ学派というやつ?
あと技術革新のペースというのはプロセスルールやLinpackで計るのでしょうか?
Re: (スコア:1)
"processor speed benchmarks from http://www.cpuscorecard.com/ [cpuscorecard.com] and http://www.cpubenchmark.net/ [cpubenchmark.net]"だそうです。
学派というのが存在するかわかりませんが、掲載誌はシカゴ大学の雑誌で、いわゆるシカゴ学派と呼ばれる主張をする論文が多く掲載されてきていますね。
実際の企業と消費者の行動データから予見される結果として、競争相手に優位に立たれるプレッシャーに比べて自社の財を買い換えさせなければならないというプレッシャーがあるため、独占の方が性能向上のペースが速くなりそうというという結果が出てきたのがポイントでは無いでしょうか。
Re: (スコア:0)
>www.cpuscorecard.com
これはひどい
もう一つもpassmarkですか…
これでどうやってAMDが居なかった方が技術革新のペースは4.2%早いなんて言えたのでしょう
>競争相手に優位に立たれるプレッシャーに比べて自社の財を買い換えさせなければならないというプレッシャーがあるため、
「市場を独占しているときの方がより多くの投資を行う誘因を持つ」と別の結論になってる気がするんですが…
独占企業の経営者の考え方なんて想像するしかないけど、価格決定権を行使して値上げで利潤を増やす誘惑のほうが大きいとしか思えないんですが
独占的地位に胡座をかくよりも間断なく過去の自分と競争することを望み、自分と競争するほうがライバル企業と戦うよりもイノベーションが進み、投資せず安直な値上げを選ぶより企業利潤は増えるという主張は斬新すぎると思います
Re: (スコア:1)
> これでどうやって
性能を数値化する上でどのような問題があり、どのような結論の歪みが生じているか明示的に説明できなければ研究の妥当性を疑う理由にはならないです。
> 独占企業の経営者の考え方なんて想像するしかないけど、価格決定権を行使して値上げで利潤を増やす誘惑のほうが大きいとしか思えないんですが
1期間限りの販売ではその通りですが、多期間を考えるとそうとも限らないというのはかなり昔から議論されてたりします。
過去の自社とも他社とも戦わなければならない環境において追加的な投資のメリットがより大きくなるのはこれからより多く自社の財が売れる状況である、というと理解しやすいでしょうか。
モデルの作り方次第では独占と複占でさっぱり行動が異なるときはありますので、今後はそのようなモデルとの比較を議論することになるかと思われます。
とはいえかなり時間のかかる研究ですから、短くとも数年間は有力な根拠として影響力を持つことになるでしょう。
Re: (スコア:0)
>性能を数値化する上でどのような問題があり、どのような結論の歪みが生じているか明示的に説明できなければ研究の妥当性を疑う理由にはならないです。
cpuscorecardとpassmarkのデータに問題がある場合や、データは妥当でも研究テーマにそぐわない場合は、この研究には妥当性がないということでよろしいか
この2つは厳密さや公平さよりも、その時々の購入の目安として役立つことを志向したもの
cpuscorecardにいたっては、運営者のPCショップがメーカーの広告から拾った数字を独自の判断で並べてでっちあげたランキングであることはFAQを読めば分かる
だからFS
Re: (スコア:1)
> だからFSB400MHzと533MHzのPentium4 2.4GHz、AthlonXP 2400+の3つが同一の性能という素晴らしく分かりやすいランキングになっている
この3つが同一の性能と評価する場合、性能評価にどのような偏りが生じますか?
特定方向に偏っているのか、それともランダムに誤差があるかによって影響が異なってきます。
例えばシェアの大きいIntelのCPUの性能を過大に評価している場合、消費者の買い換えに性能の与える影響力を過剰に評価する事になります。
また、ランダムに測定誤差が存在する場合、性能の影響力を過小に評価することになります。
この二つは互いに打ち消す
Re: (スコア:0)
>特定方向に偏っているのか、それともランダムに誤差があるかによって影響が異なってきます。
性能数値化に問題があっても研究には妥当性があると言いたいなら、もうデータのデタラメさをあげつらっても無意味ですね
>消費者物価指数
消費者物価指数は長年に渡って研究され、現実の政策にも使われてきたから、食品やエネルギー価格を外して1%の上方バイアスを考慮すれば信頼して使っていい大事なデータだと認められていますよね
信頼性が違いすぎて話の引き合いに出すのは全く不適切です
>ちょっとよくわからないのですが、
「1期間限りの販売ではその通りですが
Re:Does AMD Spur Intel to Innovate More? (スコア:1)
> 消費者物価指数は長年に渡って研究され、現実の政策にも使われてきたから、食品やエネルギー価格を外して1%の上方バイアスを考慮すれば信頼して使っていい大事なデータだと認められていますよね
測定誤差のあるデータを利用することは必ずしも致命的でない事例として長年利用されている消費者物価指数でさえ測定誤差がある事をお伝えしたかったわけです。
データの測定誤差自体の指摘が直ちに研究の妥当性を損なう者ではない事を理解して頂けて助かります。
> 「1期間限りの販売ではその通りですが」の「その通り」がどういう意味なのか、ちょっとよくわからなくなりましたが
「独占企業が価格をつり上げて供給を減らす行動を取る」という古典的命題は「その通り」なのですが、独占企業が第一期に低い価格を付けて顧客を囲い込んだ後、第二期に高い価格を付ける場合がある、というケース等多期間の行動を考えると必ずしも価格をつり上げるばかりでは無い、ということです。
> 独占企業は投資をしないわけではないが、需給曲線の関係から競争状態よりも投資は少なくなる
供給量が多いときの方が投資が大きくなる、と言う関係から、独占状態では供給量が少ないために投資量が少ない,という事でしょうか?
ライバルが居るときと居ないときの価格付け行動次第ではそうなることもあるでしょうね。
ただ、この論文はデータに基づいて分析した結果、独占の方が投資が多い事を実証した論文ですから、あるモデルではそうならないと主張してもあまり有益な反論にはならないです。
> 競争がないほうが進むという論文であって、競争によって進むことを否定した論文ではないですよね?
> 競争があったほうが価格性能比が良くなることまで否定されてはいませんよね?
価格性能比については言及が無かったのですが、競争があった方が価格は下がり、消費者の便益が大きいという事は書かれていますね。
> 余計なお世話ですけど身内である程度コンセンサスが得られるか引用数が増えるか教科書に載るのを待ってからのほうがいいでしょう (後略)
最近の経済学者の議論では、合併規制は「消費者余剰」を見ているが、「社会余剰」を見て合併を認めた方が良いのでは、というところが議論されていますね。
先日の日本経済学会大会でも東京大学の大橋弘先生が公正取引委員の小田切先生が座長の特別報告にて合併規制の見直しに繋がるような研究を報告されていました。
ただ、この論文は特定の反競争行為について議論したものでは無く、Intelによる卸売価格の差別化によるAMDの排除行為がいかなる厚生への影響をもたらしたかはわかりません。
性能上昇は早くなることが必ずしも社会余剰を増大させるわけではありませんから。