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24/192の有用性に関して、技術的な誤解に基づくコメントが見られるけど、この件に関しては以下の記事に非常にわかりやすくまとめられていると思う。 24/192 Music Downloads are Very Silly Indeed [xiph.org] 以前、/.jの記事にもなってますね。 24ビット/192kHz形式での音楽ファイル配布は無意味? [it.srad.jp]
ただし、このタレコミ文は誤解を招く表現だし、長い記事なので、時間がない or 英語が苦手という人のために簡単にまとめると。
1. 24/192は録音や編集の段階では有用だけど、「配信」に使うのは無意味または有害であるというのが記事の主張。圧縮のことは基本的に扱っていない。
> * 現代のADC/DACはほぼすべて、変換時のオーバーサンプリング & ディジタルフィルタで急峻なLPFを実現しています。アナログLPFへの要求はそれほど高くないです。
デジタルで周波数特性が急峻なLPFは実現できてますが、その代わり過渡特性が悪化しています。シャノンの標本化定理が成り立つのは、理想のLPFが前提ですが、理想のLPFは応答時間が無限に長くなってしまいます。現実のDACでも周波数特性はとてもいいですが、その応答には長い時間が必要です。
結果として連続SIN波形に対する応答はほぼ完璧に再現できますが、インパルス応答は割といい加減です。オーディオ用DAC/ADCでは、連続波形を前提にした特性しかデータシートに乗らないですからね。最近は測定器(AudioPrecisionとか)にも過渡特性が影響する測定が追加されてるので、そのうちDACの差別化要素として謳うようになるのかもしれません。
過渡特性を気にされていますが、過渡特性が悪いと何が問題になるのかをちゃんと考えないといけません。
例えば、元となるオーディオ信号x(t)があったとします。これを、可聴帯域(20kHz)以内の信号x1(t)と、可聴帯域外の信号x2(t)の和として書き直します。x(t)=x1(t)+x2(t)。フーリエ変換の収束性がこのような分解が可能であることを保証してくれます。今、x(t)を線形ローパスフィルターFに通すことを考えます。ここで、x1(t)は、フィルター通過後も波形を保存したい信号です。そして、Fの通過域の伝達関数がフラットであれば、x1(t)の波形は保存されます。F自体のインパルス応答が尾を引いていても関係ありません。一方、x2(t)は変形を受けます。まず、阻止域の信号なので、振幅が減衰します。さらに、波形も、尖った部分が鈍るでしょう。しかし、x2(t)はそもそも除去したい信号なので、歪んでも構いません。つまり、オーディオ信号用アンチエイリアシング(AA)フィルターとして、Fは問題ないということです。
インパルス応答が問題となるのは、Fの通過域にピークやリプルが存在する場合です。例えば、Qの高い複素共役ポールペアを用いた単純な2次のローパスフィルターを使った場合、その共振周波数でインパルス応答にリンギングが起きます。そして、x1(t)も波形が歪むでしょう。しかしこれは、そもそもAAフィルターとして不適切なフィルターであったというだけです。AAフィルターとしては、通過域にリプルの少ない、バタワースなり逆チェビシェフなりを使うべきでしょう。
ご存知だとは思いますが、周波数応答関数とインパルス応答はラプラス変換で相互変換可能です。周波数応答はきちんとしているけど、インパルス応答がいい加減という表現は信号処理理論的に全く意味を成しません。データシートには片方しか載っていなくても問題ありません。そして、周波数応答関数の通過域特性がフラットならば、その帯域の信号は歪みません。今のADC/DACで、過渡応答が問題になっているという話は聞いたことがありません。
私は営業系のエンジニアで、数学的な説明まではできません。ただ、連続的なSIN波形での測定では差が見えないのに、高速に周波数をスイープする測定や、単発の波形での測定では大きな差が出ることは実際に起きています。急峻なフィルタを入れていないセンサ向けのDAC(オーバーサンプリングなし)では起きないのに、オーディオ向けのΔΣでは波形が崩れていました。技術者からは、有限の入力サンプリング点に対して、長いタップと高いQ値のフィルタだとうまくいかないと聞きました。
文面から察するに、入れた波形に含まれる高周波成分が阻止帯にかかって、波形が鈍ったのではないかと思われます。どういう状況でどういう測定を行ったのかがわからなければ、単なる推測にとどまりますが。
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長期的な見通しやビジョンはあえて持たないようにしてる -- Linus Torvalds
24bit/192kHz「配信」は無意味 (スコア:3, 興味深い)
24/192の有用性に関して、技術的な誤解に基づくコメントが見られるけど、この件に関しては以下の記事に非常にわかりやすくまとめられていると思う。
24/192 Music Downloads are Very Silly Indeed [xiph.org]
以前、/.jの記事にもなってますね。
24ビット/192kHz形式での音楽ファイル配布は無意味? [it.srad.jp]
ただし、このタレコミ文は誤解を招く表現だし、長い記事なので、時間がない or 英語が苦手という人のために簡単にまとめると。
1. 24/192は録音や編集の段階では有用だけど、「配信」に使うのは無意味または有害であるというのが記事の主張。圧縮のことは基本的に扱っていない。
Re: (スコア:0)
> * 現代のADC/DACはほぼすべて、変換時のオーバーサンプリング & ディジタルフィルタで急峻なLPFを実現しています。アナログLPFへの要求はそれほど高くないです。
デジタルで周波数特性が急峻なLPFは実現できてますが、その代わり過渡特性が悪化しています。
シャノンの標本化定理が成り立つのは、理想のLPFが前提ですが、理想のLPFは応答時間が無限に長くなってしまいます。
現実のDACでも周波数特性はとてもいいですが、その応答には長い時間が必要です。
結果として連続SIN波形に対する応答はほぼ完璧に再現できますが、インパルス応答は割といい加減です。
オーディオ用DAC/ADCでは、連続波形を前提にした特性しかデータシートに乗らないですからね。
最近は測定器(AudioPrecisionとか)にも過渡特性が影響する測定が追加されてるので、そのうちDACの差別化要素として謳うようになるのかもしれません。
Re:24bit/192kHz「配信」は無意味 (スコア:1)
過渡特性を気にされていますが、過渡特性が悪いと何が問題になるのかをちゃんと考えないといけません。
例えば、元となるオーディオ信号x(t)があったとします。これを、可聴帯域(20kHz)以内の信号x1(t)と、可聴帯域外の信号x2(t)の和として書き直します。x(t)=x1(t)+x2(t)。フーリエ変換の収束性がこのような分解が可能であることを保証してくれます。今、x(t)を線形ローパスフィルターFに通すことを考えます。ここで、x1(t)は、フィルター通過後も波形を保存したい信号です。そして、Fの通過域の伝達関数がフラットであれば、x1(t)の波形は保存されます。F自体のインパルス応答が尾を引いていても関係ありません。一方、x2(t)は変形を受けます。まず、阻止域の信号なので、振幅が減衰します。さらに、波形も、尖った部分が鈍るでしょう。しかし、x2(t)はそもそも除去したい信号なので、歪んでも構いません。つまり、オーディオ信号用アンチエイリアシング(AA)フィルターとして、Fは問題ないということです。
インパルス応答が問題となるのは、Fの通過域にピークやリプルが存在する場合です。例えば、Qの高い複素共役ポールペアを用いた単純な2次のローパスフィルターを使った場合、その共振周波数でインパルス応答にリンギングが起きます。そして、x1(t)も波形が歪むでしょう。しかしこれは、そもそもAAフィルターとして不適切なフィルターであったというだけです。AAフィルターとしては、通過域にリプルの少ない、バタワースなり逆チェビシェフなりを使うべきでしょう。
ご存知だとは思いますが、周波数応答関数とインパルス応答はラプラス変換で相互変換可能です。周波数応答はきちんとしているけど、インパルス応答がいい加減という表現は信号処理理論的に全く意味を成しません。データシートには片方しか載っていなくても問題ありません。そして、周波数応答関数の通過域特性がフラットならば、その帯域の信号は歪みません。今のADC/DACで、過渡応答が問題になっているという話は聞いたことがありません。
Re: (スコア:0)
私は営業系のエンジニアで、数学的な説明まではできません。
ただ、連続的なSIN波形での測定では差が見えないのに、高速に周波数をスイープする測定や、単発の波形での測定では大きな差が出ることは実際に起きています。
急峻なフィルタを入れていないセンサ向けのDAC(オーバーサンプリングなし)では起きないのに、オーディオ向けのΔΣでは波形が崩れていました。
技術者からは、有限の入力サンプリング点に対して、長いタップと高いQ値のフィルタだとうまくいかないと聞きました。
Re:24bit/192kHz「配信」は無意味 (スコア:1)
文面から察するに、入れた波形に含まれる高周波成分が阻止帯にかかって、波形が鈍ったのではないかと思われます。どういう状況でどういう測定を行ったのかがわからなければ、単なる推測にとどまりますが。