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ケチを付けるわけではなく,僭越ながら補足しますと,腸内細菌が「原因」であるとはこの論文の著者も言っているわけではありませんので,この研究自体が疑似科学の範疇にあるわけではないということはy_tambeさんも同意していただけると思います.(とはいえそういう結論に持って行きたい意図が感じられる論文ですが)
今回も含めて,自閉症患者のゲノムやタンパク質を全て調べて健常者とどう違うかを明らかにしようという研究はまだ途上にあり,ゲノムの方からはかなり徹底的に調べたにも関わらず,特定の患者の原因となっていそうな遺伝子がみつかった程度で,多くの自閉症患者に適応できる基準は見つかっていません.
そこで更に最近では自閉症患者と健常者で体内のタンパク質を全て調べ上げて違いを見出そう(プロテオーム解析)という研究が始まっており,いくつか結果も出ているようです.その分類で言えば,今回の結果のユニークなところは血液採取の必要がない,という部分です.
もちろん最終的には治療に持っていくことが目的なのですが,まずは原因特定,さらにその前に確実な診断が必要なわけで,まだ自閉症研究は分子生物学的にはこの第一段階でうろうろしてるという,謙虚に言えばそういう段階にあります.
では,なぜタンパク質が違うのかということですが,もちろん機能に直接関わる場合もあるでしょうが,腸内細菌が原因という仮説よりは多少受け入れられている仮説として,自閉症は自己免疫疾患であるというものがあります.実際,免疫機能や免疫関連分子の量が健常者と差があるという報告があります.自己免疫疾患においては自分のタンパク質のうちいくらかが不要に攻撃されてしまい,機能不全を起こすとされています.この場合,免疫機能の違いは体内の細菌の構成にも影響を及ぼすことが考えられ,腸内細菌の違いを「結果」として包含できます.しかし,この仮説もゲノムの方から証明はできておらず,何らかの原因があっての「結果」であるのかもしれません.
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マイナーな仮説の一つ (スコア:5, 参考になる)
「消化器官の細菌構造」っつーか……要は「腸内細菌の構成」です。腸内細菌叢とか腸内フローラとか言われるもののこと。10年くらい前に「自閉症の原因は、腸内細菌にある」と述べた論文( pubmed [nih.gov])が出てまして、確か、Nature Newsも取り上げたことがあったと記憶してます。
この仮説の根拠としては、自閉症の小児とそうでない(正常な)小児では、腸内細菌叢を構成する細菌に違いが見られた、というもの。一般的に小児のうちは、いわゆるビフィズス菌の仲
Re:マイナーな仮説の一つ (スコア:5, 参考になる)
ケチを付けるわけではなく,僭越ながら補足しますと,腸内細菌が「原因」であるとはこの論文の著者も言っているわけではありませんので,
この研究自体が疑似科学の範疇にあるわけではないということはy_tambeさんも同意していただけると思います.
(とはいえそういう結論に持って行きたい意図が感じられる論文ですが)
今回も含めて,自閉症患者のゲノムやタンパク質を全て調べて健常者とどう違うかを明らかにしようという研究はまだ途上にあり,ゲノムの
方からはかなり徹底的に調べたにも関わらず,特定の患者の原因となっていそうな遺伝子がみつかった程度で,多くの自閉症患者に適応できる
基準は見つかっていません.
そこで更に最近では自閉症患者と健常者で体内のタンパク質を全て調べ上げて違いを見出そう(プロテオーム解析)という研究が
始まっており,いくつか結果も出ているようです.その分類で言えば,今回の結果のユニークなところは血液採取の必要がない,という部分です.
もちろん最終的には治療に持っていくことが目的なのですが,まずは原因特定,さらにその前に確実な診断が必要なわけで,
まだ自閉症研究は分子生物学的にはこの第一段階でうろうろしてるという,謙虚に言えばそういう段階にあります.
では,なぜタンパク質が違うのかということですが,もちろん機能に直接関わる場合もあるでしょうが,腸内細菌が原因という仮説よりは
多少受け入れられている仮説として,自閉症は自己免疫疾患であるというものがあります.
実際,免疫機能や免疫関連分子の量が健常者と差があるという報告があります.
自己免疫疾患においては自分のタンパク質のうちいくらかが不要に攻撃されてしまい,機能不全を起こすとされています.
この場合,免疫機能の違いは体内の細菌の構成にも影響を及ぼすことが考えられ,腸内細菌の違いを「結果」として包含できます.
しかし,この仮説もゲノムの方から証明はできておらず,何らかの原因があっての「結果」であるのかもしれません.
kaho
Re:マイナーな仮説の一つ (スコア:4, 興味深い)
「自閉症」と一口に言っても、最終的には「行動上での違い」で診断されることもあって、実際には原因や発症過程の異なる、いろいろなタイプのものが混じっているのかもしれないなぁ、と思いました。
#例えば化膿レンサ球菌感染が急性糸球体腎炎などの自己免疫疾患の原因になることがあるように、ひょっとしたら、中には本当に何らかの細菌感染に起因するものも混ざっていたりする可能性もあるのかなぁ、とか。
腸内細菌叢に関していうと、最近、プロバイオティクス製品などが謳う「効果」に対して、各国の保健省が(他の代替医療と同様に)警告を発しはじめている、という状況にあります。これまでヤクルト中央研なども頑張って、いろいろな論文を出しては来ましたが、エビデンスとしては十分ではない、という判断が下されつつある状況というか…。
そういう状況の中、−オミクス解析によって、これまで巨大なブラックボックスであった腸内細菌叢が「観測」できるようになりつつあります。これまで「腸内の善玉菌を増やす」とか言ってた製品が、本当に「ヒトの腸内で、特定の菌群だけを増やしているのか」などが(割と)直截的に検証できる段階までやっと辿り着いた、という印象を持ってます。
#実はこういったわけで、この辺りの話題には最近特にセンシティブだったりします ^^;