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正しい使われ方ならカタカナ語もありだと思うんですけどね。訳語が誤解を招くこともあるし。ただ、爆発的な感染拡大を「オーバーシュート」と呼ぶことにはやっぱり強い違和感を覚えます。
一応、集団免疫に関連した話で「overshoot を最小化する」という表現を使っている研究グループがあるようでして、What is the best control strategy for multiple infectious disease outbreaks? [nih.gov]How to Minimize the Attack Rate during Multiple Influenza Outbreaks in a Heterogeneous Population [plos.org]ここでは、感染の余地がある人(susceptibles)の人数を最適に制御することが考えられており、最適な程度を越えて susceptibles が減ることを、overshoot と呼んでいるようです。
で、制御不能なアウトブレイクが overshoot を生むという記載もあり、一応、感染拡大と overshoot とが対応している構図にはなっているので、この辺りが、爆発的な感染拡大を指して「オーバーシュート」と呼ぶ流儀の発端だろうかと思っています。
これ、英語圏でも見ました。「オーバーシュート」の語源はこれでしょうね。その plos.org の論文中では、
アウトブレイクは複数回起こるが、介入は初回のみ可能であると仮定する。・感染拡大を放置あるいは介入が不足すれば、将来、ウイルスがまた発生しても、感染可能な人(未感染者)が少なくなり、基本再生産数は小さいままに留まる(再度の大流行は発生しない)。・感染拡大が非常に強く抑圧されれば、感染可能な人が多いままに留まってしまい、二度目の流行が発生して、累計の感染者数が介入不足時に近づいてしまう可能性がある。・介入の多寡によらず、未感染者の数は臨界閾値水準(critical threshold level)、すなわち群免疫を定義する水準に到達する。この過度の抑圧を「オーバーシュート」と呼ぶ。最適な介入とは、一度目のアウトブレイクにおいて、二度目のアウトブレイクが生じえないような群免疫の水準を下回るように未感染者数を減少させるものである。
とかなんとか書かれてますね。付いてる図1があって、感染拡大防止が強すぎれば感染爆発の収束後に基本再生産数が高止まりし、やがてウイルスが再度出現した時に、期間が延びて規模が下がった二度目の爆発が起き、急激に減少して介入過小の場合より少し下がって落ち着く、という推移が示されていますね。
Optimal というのは何が optimal なのかという話ですが、「未感染者が減少し基本再生産数が減少する」というのは平らに言えば「人が死ぬ」ということで、「介入を程々かつ強力に保って適切なペースで人を見殺しにしていくと、死者の総数はむしろ抑えられる」、「オーバーシュートが発生する」というのは「介入によって人口の減る速度は制御が可能で、基本再生産数は減らす方向にのみ制御可能だが、人口を戻す方法はないので、人が死にすぎた場合その人は死んだままになる。これはよくない」みたいな話なんですかね。よくわからん。
おーこわ。
ゴールは多くが免疫を獲得している状態で、医療のキャパを超えない範囲(例えば死者が出ない範囲)で伝染するのが良い。伝染を抑制しすぎ(オーバーシュート)だと、みんなが免疫獲得しないまま流行が収束するけど、また流行りだしたら同じ状態になるよ。
みたいな話?
感染数を介入(学校閉鎖や移動の制限)によって制御するという意味でしょうね。オーバーシュートは制御工学という分野の言葉で、これを疫学に応用した場合の用語なんだと思います。
制御工学でオーバーシュートというのは、目標値を設定して制御したい量がその目標と一致するように制御を行う際に、目標値を大きく逸脱して山なりを描く頂点を指します。
専門家会議の報告は、おそらく、目標値=医療キャパとして感染者が下回るように制御(閉鎖や自粛)を加えることで、医療崩壊を起こさないという意味で使っているのだと思います。
従って、「爆発的感染の恐れ」というよりは、「収容可能病床数を感染者数が超える恐れ」という意味考えた方がいいでしょう。
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192.168.0.1は、私が使っている IPアドレスですので勝手に使わないでください --- ある通りすがり
制御を外れたというニュアンスなのでしょうか (スコア:5, 参考になる)
正しい使われ方ならカタカナ語もありだと思うんですけどね。訳語が誤解を招くこともあるし。
ただ、爆発的な感染拡大を「オーバーシュート」と呼ぶことにはやっぱり強い違和感を覚えます。
一応、集団免疫に関連した話で「overshoot を最小化する」という表現を使っている研究グループがあるようでして、
What is the best control strategy for multiple infectious disease outbreaks? [nih.gov]
How to Minimize the Attack Rate during Multiple Influenza Outbreaks in a Heterogeneous Population [plos.org]
ここでは、感染の余地がある人(susceptibles)の人数を最適に制御することが考えられており、最適な程度を越えて susceptibles が減ることを、overshoot と呼んでいるようです。
で、制御不能なアウトブレイクが overshoot を生むという記載もあり、一応、感染拡大と overshoot とが対応している構図にはなっているので、この辺りが、爆発的な感染拡大を指して「オーバーシュート」と呼ぶ流儀の発端だろうかと思っています。
Re:制御を外れたというニュアンスなのでしょうか (スコア:5, 参考になる)
これ、英語圏でも見ました。「オーバーシュート」の語源はこれでしょうね。その plos.org の論文中では、
アウトブレイクは複数回起こるが、介入は初回のみ可能であると仮定する。
・感染拡大を放置あるいは介入が不足すれば、将来、ウイルスがまた発生しても、感染可能な人(未感染者)が少なくなり、基本再生産数は小さいままに留まる(再度の大流行は発生しない)。
・感染拡大が非常に強く抑圧されれば、感染可能な人が多いままに留まってしまい、二度目の流行が発生して、累計の感染者数が介入不足時に近づいてしまう可能性がある。
・介入の多寡によらず、未感染者の数は臨界閾値水準(critical threshold level)、すなわち群免疫を定義する水準に到達する。
この過度の抑圧を「オーバーシュート」と呼ぶ。最適な介入とは、一度目のアウトブレイクにおいて、二度目のアウトブレイクが生じえないような群免疫の水準を下回るように未感染者数を減少させるものである。
とかなんとか書かれてますね。付いてる図1があって、感染拡大防止が強すぎれば感染爆発の収束後に基本再生産数が高止まりし、やがてウイルスが再度出現した時に、期間が延びて規模が下がった二度目の爆発が起き、急激に減少して介入過小の場合より少し下がって落ち着く、という推移が示されていますね。
Optimal というのは何が optimal なのかという話ですが、「未感染者が減少し基本再生産数が減少する」というのは平らに言えば「人が死ぬ」ということで、「介入を程々かつ強力に保って適切なペースで人を見殺しにしていくと、死者の総数はむしろ抑えられる」、「オーバーシュートが発生する」というのは「介入によって人口の減る速度は制御が可能で、基本再生産数は減らす方向にのみ制御可能だが、人口を戻す方法はないので、人が死にすぎた場合その人は死んだままになる。これはよくない」みたいな話なんですかね。よくわからん。
おーこわ。
Re:制御を外れたというニュアンスなのでしょうか (スコア:3)
ゴールは多くが免疫を獲得している状態で、
医療のキャパを超えない範囲(例えば死者が出ない範囲)で伝染するのが良い。
伝染を抑制しすぎ(オーバーシュート)だと、みんなが免疫獲得しないまま流行が収束するけど、
また流行りだしたら同じ状態になるよ。
みたいな話?
Re: (スコア:0)
感染数を介入(学校閉鎖や移動の制限)によって制御するという意味でしょうね。オーバーシュートは制御工学という分野の言葉で、これを疫学に応用した場合の用語なんだと思います。
制御工学でオーバーシュートというのは、目標値を設定して制御したい量がその目標と一致するように制御を行う際に、目標値を大きく逸脱して山なりを描く頂点を指します。
専門家会議の報告は、おそらく、目標値=医療キャパとして感染者が下回るように制御(閉鎖や自粛)を加えることで、医療崩壊を起こさないという意味で使っているのだと思います。
従って、「爆発的感染の恐れ」というよりは、「収容可能病床数を感染者数が超える恐れ」という意味考えた方がいいでしょう。
Re: (スコア:0)
で、おそらくなんだけど、そんな記事を見た日本人が、感染者数が爆発的に増えたという事象の事をovershootと表現しているんだ、と勘違いして使い始めたのではないかなぁ、と思ってる。