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アメリカは、ドイツ等に比べると再生可能エネルギーの普及が遅れています。少数の遅れている例(それも普及初期段階の例)だけを取り上げて全体を論じるのは、詭弁です。何よりそのアメリカですら、今結構なペースで普及を進めています。
先に、進んでいるドイツの例を挙げておきます。・電力に占める再生可能エネルギーの割合は1998年時点では5%未満でしたが、2010年時点で17%まで増えてます [erneuerbare-energien.de]。毎年数千億円かけてますが、それに匹敵する化石燃料コストを節約してます。加えてその数倍の経済効果が得られていて、雇用も増加しています。・2050年までの長期計画 [www.bmu.de]も立てていて、2030年には電力の半分以上が再生可能エネルギーになる見込みです(PDFの119ページ、Abbildung 3.10)。・現行法の原型(StrEG)を使って再生可能エネルギーの普及を始めたのは、1991年からです。既に20年前。当時は経済界や電力会社が反対しましたが、当時の抵抗派が言っていたような酷いことにはなっていません(経済もむしろ好調)。コストも下がっています。
一方のアメリカですが、ご指摘の通り比率は少ない(そもそも原発の比率も多くないですし、それと比べてもしょうがないでしょう)。・しかし最近化石燃料の輸入比率が増えて財政を圧迫していて、彼ら自身も輸入比率の増加を気にしてます。例えば今EIAのサイトを見に行ったら、トップページに私たちはどれだけ輸入の石油に依存しているのか? [eia.gov]なんてページが。・ガスはシェールガスで暫くは需給緩和しそうなものの、これも20年もすると輸入国に転落するだろうと見られてます(MITのレポート [mit.edu]。
こちらの日本投資銀行の資料 [www.dbj.jp]に、米国における再生可能エネルギーの状況がまとめられています。遅ればせながらも、風力や太陽光はそれなりの勢いで伸ばしてます(それこそ前政権時代から始めてる)。ただほんとにここ数年の話ですので、全体の比率ではまだ微々たるものですね。伸び率は凄いんですが。・風力:現在40GWぐらい [awea.org]。政策が安定してなくて年ごとの導入量の変化が激しいですが、2030年には風力だけで国の全力の2割にしよう、その方が化石燃料よりも安いだろう(系統安定化費用込みで) [energy.gov]、と言っています。・太陽光:量は既にご指摘の通り、まだ全然大したことないです。ですが毎年の導入量はどんどん増えていて、今年は2GW近く、2015年は6GWぐらいになる見込み(Figure2-15) [seia.org]です。国レベルでも色んな面から補助をしてます [dsireusa.org]。どちらの分野でも中国の台頭がすごいんですが(中国国内で大規模な助成をしてて貿易摩擦ネタになってます)、米国企業もGEやFirstSolar(最近、トタルに6割買われましたが)等がそれぞれの分野で競ってます。
というわけで、現時点での累計量だけを見て今後の可能性まで否定するのは、無理があります。
==========ただし最近の日本における状況には、私も幾つか言いたいことが。
・突然、原発を全部止める流れになっているようですが、どう考えても無茶です。 原発だろうが何だろうが、今使ってる発電所をいきなり何十基も止めて全部置き換え始めたら、恐ろしい額の負担が一度に発生してしまいます(それこそ、震災被害に匹敵する額が)。 また例えお金があったとしても、それらの建設や、送電網の改造が物理的に追いつきません。 脱原発を希望されるなら、ドイツ並に、それなりの額と数十年(彼らですら、これまでの20年+まだあと10年かける予定)の期間をかける覚悟でお願いします。
・再生可能エネルギーの普及ペースは、特定個人の思いつきだけでパッと変えるようなものではありません。 今回の全量買い取りだって、2年ぐらい前から利害関係者や識者が何十回も集まって相談して、ようやく法案になったものです。 http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/8.html#meti0004601 [meti.go.jp] (その下敷きになったのは今の家庭用太陽光の余剰買取で、これは自民党時代にできたもの。) そうやって決まったペースを急に変えるのは、ちょっとご勘弁願いたいです。ペース変えるならせめて関係者と相談してから、来年以降にして欲しいです。
・これだけの被害を食ったのですから、今後何をするにしても、厳しいことにはなると思います。 しかも太陽光はともかく、地熱・バイオマス・風力等にもそれなりに使えそうな資源があります [env.go.jp](しかも、これでも調査はまだ途中)。にもかかわらず活用されてこなかったため、余計に被害を大きくする結果になってます(たとえば東北の地熱発電所は、今回いずれも地震後すぐに復帰したと聞いてます)。 自然エネルギーはいわば「前払い式」で、一度設置してしまえば、あとは燃料を他国から買ってこなくてすみます(バイオマスを輸入したりしたら別ですが)。普及を進める時にはお金がかかりますが、それを嫌がってたらいつまで経っても使えません。 でもコツコツと普及を進めれば、ドイツみたく、立派に選択肢の一つになるはずです(環境省による2030年までの費用や便益の試算例) [env.go.jp]。ドイツのように、逆に経済効果を得ることも可能と見られてます。 「負担」があるからといつまでも先送りするのでなく、腰を据えて正面から取り組んで頂ければと思います。
・世界では既に、2010年に新設された発電所のうち30%(設備容量ベースで34%)が再生可能エネルギーになってます(2006年は6%位しかなかった)。また同分野への投資額は2110億ドル、前年から32%増加しています。Bloombergや国連がまとめた報告書 [fs-unep-centre.org]とプレスリリース [unep.org]。 競争は激しいですが、日本の産業や経済の面からも、これに対応していく方が結局はお得ではないでしょうか。
とりいそぎ。
補足資料として。バイオマスや地熱は適当な資料を知りませんので、ご存じの方にお任せします。
・風力 ・IEAによる2015年の見通し(Figure ES.2) [iea.org]…化石燃料と同じぐらいになると見ています。 ・風力は一番出力変動が激しいのですが、それでも系統安定化費用込みでも、普及費用がペイする [energy.gov](再掲)と見られてます。
・太陽光 ・ドイツ銀行による見通し(2枚目) [slideshare.net]…2015年ごろから、条件の良い地域(西南部)で系統電力コストを下回り始めると見られます。 ・参考までに、欧州での見通し(Figure 4) [europa.eu]。やはり2015年ごろから、10ユーロセント/kWhを切る地域が出てくると見られてます。 ・最近の太陽電池パネルの値下がりの様子 [solarbuzz.com]…継続的に下がり続けてます。
もちろん、これらだけで100%全部供給ってのは現実的じゃありません。でも何割か(それでも凄い量だ)組み合わせた方が結局安上がりになりそう、という話です。
うーん。具体的なコストを記した資料のご呈示が無いので、なんとも。私が紹介した資料には、日本の場合におけるデータも含まれてます。また日本のコストや資源量を考慮した上でドイツ同様のことができるはず、という試算結果も含まれています。
>たとえば風力発電所の設置コストを日欧で比較すると、>欧州 < 日本
ご紹介したIEAの資料には米国だけじゃなくて、欧州も日本(JPN)も入ってます [iea.org]。同じES.2の図に。欧州よりもむしろ日本の方が安い見通しになっています。ただしこの資料は日本における風力コストに幅が無いなど、不自然な点もあります(たぶん調査不足?)。
しかし2つ上の親コメントにて紹介した環境省による普及費用と便益の試算例 [env.go.jp]では、こういう日本におけるコストを考慮した資源量調査 [env.go.jp]に基づいています。またその上で、ドイツ同様に経済効果も得ることは可能との結論を出しています。
今の家庭用の太陽光でいうと、助成が国全体で数百億円規模で、その代わりに製造した太陽電池は半分以上輸出 [jpea.gr.jp]、国内関連産業も1兆円近くになってて [oitda.or.jp]、良く晴れた昼頃なら例えば原発3基分ぐらい発電してピーク緩和してるはず(下記で補足)、今後年を追って助成費用も市場規模も増える見込み…という感じです。
たくさんの資料(特に環境省の資料はそれぞれ量が多くて凶悪…)を出して恐縮ですが、ご検討頂ければ幸いです。
# 日本における太陽光の最大出力の補足:2009年末で2.5GWp [iea-pvps.org]で、その後2011年4月までに1.3GWp導入されてる [jpea.gr.jp]ので、現時点での導入量は約4GWp。晴れのときの出力は定格の7~8割ぐらい(出力係数)として、最大3GW(300万kW)ぐらいの出力。
脱原発を希望されるなら、ドイツ並に、それなりの額と数十年(彼らですら、これまでの20年+まだあと10年かける予定)の期間をかける覚悟でお願いします。
日本人の悪い所として、こういう災厄が発生すると集団ヒステリーのごとく急進的というかパラノイア的に暴走する所がありますから。 日本の場合、ドイツと比べて、風力資源の少なさや地形の問題、人口密度の高さや大エネルギー消費地である巨大都市が存在する等の都市構造の違い、地下資源の少なさなどがありますので、分散型電源を考慮していない上周波数が統一されていない電力網などなど、ドイツより厳しいコスト面の見通しと別の国になったと評されるぐらいの沢山の変革を覚悟する必要があるでしょう。そしてそれを混乱なく進めるにはおっしゃるとおり数十年の時間と莫大なコストがかかるでしょうから、脱原発をするにしても最低でも既存のものと建設中のものは完成させて寿命までは使い倒すことになるでしょう。 特に東京のような巨大都市は、その都市インフラ(特に高層ビルや地下関連)を維持するためには、沢山のエネルギーを必要としますし、加えてそのような都市は巨大な郊外を抱えて、通勤移動に莫大なエネルギーを使っている事が今春の計画停電で明らかになりました。 そして自然エネルギーの類は分散型電源で密度も低いので、東京一極集中是正など分散型の国家への移行と同時に、各都市のスケールでは人口の増加で広がりすぎた郊外とインフラの整理(ついでにそこを発電用地に?)して低エネルギー消費社会への移行も必要ですし、どうやって移住を促すのかが問題になります。(まさかポル・ポト時代のカンボジアみたいに強制移住というわけにはいかないでしょうし) ちなみにドイツはベルリン都市圏人口が500万人で総人口8175万人、日本は東京都市圏が3500万人で総人口1億2500万人ですので、ドイツの方が国としての分散化が進んでいます。(国土面積は日本の方がやや広いですが山がちな島国であることを考えると、可住面積は大陸にあるドイツの方が広いでしょう) あと産業も今までの巨大工場での製造業(と関連する産業)中心から、観光や金融、コンテンツ関連など物作りとの関連の低い産業のウェイトを上げていく必要があります。その過程では、失業や職業訓練などのコストも発生しますし、当該産業に所属している人は生活かかっていますから死に物狂いで抵抗するでしょう。(特に日本の雇用慣行では) それと、これらを真面目にやると、雇用や食糧(外貨が必要)、物理的な土地の制約から、たぶん人口は長期的にはある程度減らす方向で考えなければならくなるでしょうから、日本版一人っ子政策みたいなものも必要になるかもしれません。 しかも、かなり慎重にやらないと経済の混乱に加え、今いる人口を支えられなくなって、移民を放出する事態となるリスクも心配です。(特に工業系の人が中心かも?)
今回の全量買い取りだって、2年ぐらい前から利害関係者や識者が何十回も集まって相談して、ようやく法案になったものです。
昨日NHKで取り上げていたドイツも、やはりチェルノブイリの事故を受けて利害関係者が何度も話し合い、さらに原発を止めることでどうしても発生するデメリット(ドイツの電気代は先進国では一番高いし、実際に電力を多く消費する産業はドイツから逃げるケースが発生したそうです)を公にして国民に周知して、それにより不利益(失業とか)を受ける人へのケア(失業手当や職業訓練など)をしっかりやったうえで脱原発に踏みきっています。日本みたいな感情論や夢想的な脱原発派とは、覚悟がまるで違います。 最後は日本がどちらの地獄を選ぶかでしょう。 #とにかく福島の事故以来急増している急進的だったり夢想的な脱原発(原発は嫌だけど電気は欲しい、なんとかなるでしょ)は、利権と関わりのない原発推進派にも、真面目な脱原発派にも迷惑です。
お返事ありがとうございます。
>ドイツも (..中略..) 日本みたいな感情論や夢想的な脱原発派とは、覚悟がまるで違います。
そこまで踏まえた上でのご意見でしたか、失礼しました。全面的に同意します。
日本が抱える問題は、原発や再生可能エネルギーに対する知識以前に、エネルギー・経済・環境がいかに相互に影響し合うか、それが自分たちの生活に影響するのか、という基礎知識の不足にあるように思います。嘆いててもしょうがないので、日本でもこれから把握してもらうしか無いんですけど。
# こういう時こそ政治が…と思うのだけど、却って混乱させて下さってますね。
明日にも起こりうる次の災害で現在の原発が事故らない保障が無く、再事故には耐えられない以上、無理でも止めるしかないじゃない?首相以外は幸運をアテにしてるようだけど、そういう時に限って裏目が出るパターンだな。
もちろん、止めただけじゃ危険が続く事は分かってる。安全にするのが先か災害が先か、全てが懸かった競争だ。一歩の遅れが致命的。だれも認識しないなんて、まだ安全ボケが続いてるんだな~。
> 日本人の悪い所として、こういう災厄が発生すると集団ヒステリーのごとく急進的というかパラノイア的に暴走する所がありますから。
どうして日本だけだと思いました?
>日本投資銀行 →日本政策投資銀行です。大変失礼しました。あと、>全力の2割 →全電力の2割の間違いです。念のため。
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やはり自然エネルギーは大変そう... (スコア:5, すばらしい洞察)
そうなると、やはり砂漠もなく耕作放棄地全部作付けしても食料の自給すらままならない(バイオマスを栽培するにも水+肥料+農地は必要)、地形や気象も厳しくバラエティーに富む日本ではさらに難しいでしょう。
とはいえ、日本は石油も食料も何かの産業で稼いだ外貨で買わなければならず、天然資源も乏しく、CO2削減要求を跳ね返したり産油国にちょっかいを出す国際発言力や軍事力もない以上、アメリカみたいに無節操に価格上昇傾向の化石燃料にも頼れませんし、ヨーロッパみたいに電力の輸入もできません。
そしてこのアメリカでの結果は日本に対して、今までの経済を維持するために原発を推進するのか、激痛レベルの改革(産業構造や都市構造、国家のあり方など)と国家規模の縮小(人口の削減や広がりすぎた郊外やインフラの整理)の選択という「進むも地獄引くも地獄」な選択を突きつけている記事のような気がします。
Re:やはり自然エネルギーは大変そう... (スコア:5, 参考になる)
アメリカは、ドイツ等に比べると再生可能エネルギーの普及が遅れています。
少数の遅れている例(それも普及初期段階の例)だけを取り上げて全体を論じるのは、詭弁です。何よりそのアメリカですら、今結構なペースで普及を進めています。
先に、進んでいるドイツの例を挙げておきます。
・電力に占める再生可能エネルギーの割合は1998年時点では5%未満でしたが、2010年時点で17%まで増えてます [erneuerbare-energien.de]。毎年数千億円かけてますが、それに匹敵する化石燃料コストを節約してます。加えてその数倍の経済効果が得られていて、雇用も増加しています。
・2050年までの長期計画 [www.bmu.de]も立てていて、2030年には電力の半分以上が再生可能エネルギーになる見込みです(PDFの119ページ、Abbildung 3.10)。
・現行法の原型(StrEG)を使って再生可能エネルギーの普及を始めたのは、1991年からです。既に20年前。当時は経済界や電力会社が反対しましたが、当時の抵抗派が言っていたような酷いことにはなっていません(経済もむしろ好調)。コストも下がっています。
一方のアメリカですが、ご指摘の通り比率は少ない(そもそも原発の比率も多くないですし、それと比べてもしょうがないでしょう)。
・しかし最近化石燃料の輸入比率が増えて財政を圧迫していて、彼ら自身も輸入比率の増加を気にしてます。例えば今EIAのサイトを見に行ったら、トップページに私たちはどれだけ輸入の石油に依存しているのか? [eia.gov]なんてページが。
・ガスはシェールガスで暫くは需給緩和しそうなものの、これも20年もすると輸入国に転落するだろうと見られてます(MITのレポート [mit.edu]。
こちらの日本投資銀行の資料 [www.dbj.jp]に、米国における再生可能エネルギーの状況がまとめられています。
遅ればせながらも、風力や太陽光はそれなりの勢いで伸ばしてます(それこそ前政権時代から始めてる)。ただほんとにここ数年の話ですので、全体の比率ではまだ微々たるものですね。伸び率は凄いんですが。
・風力:現在40GWぐらい [awea.org]。政策が安定してなくて年ごとの導入量の変化が激しいですが、2030年には風力だけで国の全力の2割にしよう、その方が化石燃料よりも安いだろう(系統安定化費用込みで) [energy.gov]、と言っています。
・太陽光:量は既にご指摘の通り、まだ全然大したことないです。ですが毎年の導入量はどんどん増えていて、今年は2GW近く、2015年は6GWぐらいになる見込み(Figure2-15) [seia.org]です。国レベルでも色んな面から補助をしてます [dsireusa.org]。
どちらの分野でも中国の台頭がすごいんですが(中国国内で大規模な助成をしてて貿易摩擦ネタになってます)、米国企業もGEやFirstSolar(最近、トタルに6割買われましたが)等がそれぞれの分野で競ってます。
というわけで、現時点での累計量だけを見て今後の可能性まで否定するのは、無理があります。
==========
ただし最近の日本における状況には、私も幾つか言いたいことが。
・突然、原発を全部止める流れになっているようですが、どう考えても無茶です。
原発だろうが何だろうが、今使ってる発電所をいきなり何十基も止めて全部置き換え始めたら、恐ろしい額の負担が一度に発生してしまいます(それこそ、震災被害に匹敵する額が)。
また例えお金があったとしても、それらの建設や、送電網の改造が物理的に追いつきません。
脱原発を希望されるなら、ドイツ並に、それなりの額と数十年(彼らですら、これまでの20年+まだあと10年かける予定)の期間をかける覚悟でお願いします。
・再生可能エネルギーの普及ペースは、特定個人の思いつきだけでパッと変えるようなものではありません。
今回の全量買い取りだって、2年ぐらい前から利害関係者や識者が何十回も集まって相談して、ようやく法案になったものです。
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/8.html#meti0004601 [meti.go.jp]
(その下敷きになったのは今の家庭用太陽光の余剰買取で、これは自民党時代にできたもの。)
そうやって決まったペースを急に変えるのは、ちょっとご勘弁願いたいです。ペース変えるならせめて関係者と相談してから、来年以降にして欲しいです。
・これだけの被害を食ったのですから、今後何をするにしても、厳しいことにはなると思います。
しかも太陽光はともかく、地熱・バイオマス・風力等にもそれなりに使えそうな資源があります [env.go.jp](しかも、これでも調査はまだ途中)。にもかかわらず活用されてこなかったため、余計に被害を大きくする結果になってます(たとえば東北の地熱発電所は、今回いずれも地震後すぐに復帰したと聞いてます)。
自然エネルギーはいわば「前払い式」で、一度設置してしまえば、あとは燃料を他国から買ってこなくてすみます(バイオマスを輸入したりしたら別ですが)。普及を進める時にはお金がかかりますが、それを嫌がってたらいつまで経っても使えません。
でもコツコツと普及を進めれば、ドイツみたく、立派に選択肢の一つになるはずです(環境省による2030年までの費用や便益の試算例) [env.go.jp]。ドイツのように、逆に経済効果を得ることも可能と見られてます。
「負担」があるからといつまでも先送りするのでなく、腰を据えて正面から取り組んで頂ければと思います。
・世界では既に、2010年に新設された発電所のうち30%(設備容量ベースで34%)が再生可能エネルギーになってます(2006年は6%位しかなかった)。また同分野への投資額は2110億ドル、前年から32%増加しています。Bloombergや国連がまとめた報告書 [fs-unep-centre.org]とプレスリリース [unep.org]。
競争は激しいですが、日本の産業や経済の面からも、これに対応していく方が結局はお得ではないでしょうか。
とりいそぎ。
米国での風力・太陽光のコスト見通し (スコア:3, 参考になる)
補足資料として。バイオマスや地熱は適当な資料を知りませんので、ご存じの方にお任せします。
・風力
・IEAによる2015年の見通し(Figure ES.2) [iea.org]…化石燃料と同じぐらいになると見ています。
・風力は一番出力変動が激しいのですが、それでも系統安定化費用込みでも、普及費用がペイする [energy.gov](再掲)と見られてます。
・太陽光
・ドイツ銀行による見通し(2枚目) [slideshare.net]…2015年ごろから、条件の良い地域(西南部)で系統電力コストを下回り始めると見られます。
・参考までに、欧州での見通し(Figure 4) [europa.eu]。やはり2015年ごろから、10ユーロセント/kWhを切る地域が出てくると見られてます。
・最近の太陽電池パネルの値下がりの様子 [solarbuzz.com]…継続的に下がり続けてます。
もちろん、これらだけで100%全部供給ってのは現実的じゃありません。でも何割か(それでも凄い量だ)組み合わせた方が結局安上がりになりそう、という話です。
Re: (スコア:0)
たとえば風力発電所の設置コストを日欧で比較すると、
欧州 < 日本
なんです。
風車を量産すれば日本だって安くなるという人がいますが、欧州と日本での風車の価格は、さほど違いません。
なにしろ、日本で作った風車を欧州に輸出したり、欧州で作った風車を日本に輸入したりしてますからね。
設置コストの内訳を見て行くと、
欧州での風車価格 + 欧州での設置工事費 < 日本での風車価格+ 日本での設置工事費
なのですが、さらに、
欧州での風車価格 + 欧州での設置工事費 < 日本での設置工事費
なんです。
つまり、たとえ風車がタ
Re:米国での風力・太陽光のコスト見通し (スコア:1)
うーん。具体的なコストを記した資料のご呈示が無いので、なんとも。
私が紹介した資料には、日本の場合におけるデータも含まれてます。また日本のコストや資源量を考慮した上でドイツ同様のことができるはず、という試算結果も含まれています。
>たとえば風力発電所の設置コストを日欧で比較すると、
>欧州 < 日本
ご紹介したIEAの資料には米国だけじゃなくて、欧州も日本(JPN)も入ってます [iea.org]。同じES.2の図に。
欧州よりもむしろ日本の方が安い見通しになっています。ただしこの資料は日本における風力コストに幅が無いなど、不自然な点もあります(たぶん調査不足?)。
しかし2つ上の親コメントにて紹介した環境省による普及費用と便益の試算例 [env.go.jp]では、こういう日本におけるコストを考慮した資源量調査 [env.go.jp]に基づいています。またその上で、ドイツ同様に経済効果も得ることは可能との結論を出しています。
今の家庭用の太陽光でいうと、助成が国全体で数百億円規模で、その代わりに製造した太陽電池は半分以上輸出 [jpea.gr.jp]、国内関連産業も1兆円近くになってて [oitda.or.jp]、良く晴れた昼頃なら例えば原発3基分ぐらい発電してピーク緩和してるはず(下記で補足)、今後年を追って助成費用も市場規模も増える見込み…という感じです。
たくさんの資料(特に環境省の資料はそれぞれ量が多くて凶悪…)を出して恐縮ですが、ご検討頂ければ幸いです。
# 日本における太陽光の最大出力の補足:2009年末で2.5GWp [iea-pvps.org]で、その後2011年4月までに1.3GWp導入されてる [jpea.gr.jp]ので、現時点での導入量は約4GWp。晴れのときの出力は定格の7~8割ぐらい(出力係数)として、最大3GW(300万kW)ぐらいの出力。
もし原発を止めたいなら (スコア:3, すばらしい洞察)
日本人の悪い所として、こういう災厄が発生すると集団ヒステリーのごとく急進的というかパラノイア的に暴走する所がありますから。
日本の場合、ドイツと比べて、風力資源の少なさや地形の問題、人口密度の高さや大エネルギー消費地である巨大都市が存在する等の都市構造の違い、地下資源の少なさなどがありますので、分散型電源を考慮していない上周波数が統一されていない電力網などなど、ドイツより厳しいコスト面の見通しと別の国になったと評されるぐらいの沢山の変革を覚悟する必要があるでしょう。そしてそれを混乱なく進めるにはおっしゃるとおり数十年の時間と莫大なコストがかかるでしょうから、脱原発をするにしても最低でも既存のものと建設中のものは完成させて寿命までは使い倒すことになるでしょう。
特に東京のような巨大都市は、その都市インフラ(特に高層ビルや地下関連)を維持するためには、沢山のエネルギーを必要としますし、加えてそのような都市は巨大な郊外を抱えて、通勤移動に莫大なエネルギーを使っている事が今春の計画停電で明らかになりました。
そして自然エネルギーの類は分散型電源で密度も低いので、東京一極集中是正など分散型の国家への移行と同時に、各都市のスケールでは人口の増加で広がりすぎた郊外とインフラの整理(ついでにそこを発電用地に?)して低エネルギー消費社会への移行も必要ですし、どうやって移住を促すのかが問題になります。(まさかポル・ポト時代のカンボジアみたいに強制移住というわけにはいかないでしょうし)
ちなみにドイツはベルリン都市圏人口が500万人で総人口8175万人、日本は東京都市圏が3500万人で総人口1億2500万人ですので、ドイツの方が国としての分散化が進んでいます。(国土面積は日本の方がやや広いですが山がちな島国であることを考えると、可住面積は大陸にあるドイツの方が広いでしょう)
あと産業も今までの巨大工場での製造業(と関連する産業)中心から、観光や金融、コンテンツ関連など物作りとの関連の低い産業のウェイトを上げていく必要があります。その過程では、失業や職業訓練などのコストも発生しますし、当該産業に所属している人は生活かかっていますから死に物狂いで抵抗するでしょう。(特に日本の雇用慣行では)
それと、これらを真面目にやると、雇用や食糧(外貨が必要)、物理的な土地の制約から、たぶん人口は長期的にはある程度減らす方向で考えなければならくなるでしょうから、日本版一人っ子政策みたいなものも必要になるかもしれません。
しかも、かなり慎重にやらないと経済の混乱に加え、今いる人口を支えられなくなって、移民を放出する事態となるリスクも心配です。(特に工業系の人が中心かも?)
昨日NHKで取り上げていたドイツも、やはりチェルノブイリの事故を受けて利害関係者が何度も話し合い、さらに原発を止めることでどうしても発生するデメリット(ドイツの電気代は先進国では一番高いし、実際に電力を多く消費する産業はドイツから逃げるケースが発生したそうです)を公にして国民に周知して、それにより不利益(失業とか)を受ける人へのケア(失業手当や職業訓練など)をしっかりやったうえで脱原発に踏みきっています。日本みたいな感情論や夢想的な脱原発派とは、覚悟がまるで違います。
最後は日本がどちらの地獄を選ぶかでしょう。
#とにかく福島の事故以来急増している急進的だったり夢想的な脱原発(原発は嫌だけど電気は欲しい、なんとかなるでしょ)は、利権と関わりのない原発推進派にも、真面目な脱原発派にも迷惑です。
Re:もし原発を止めたいなら (スコア:1)
お返事ありがとうございます。
>ドイツも (..中略..) 日本みたいな感情論や夢想的な脱原発派とは、覚悟がまるで違います。
そこまで踏まえた上でのご意見でしたか、失礼しました。全面的に同意します。
日本が抱える問題は、原発や再生可能エネルギーに対する知識以前に、エネルギー・経済・環境がいかに相互に影響し合うか、それが自分たちの生活に影響するのか、という基礎知識の不足にあるように思います。
嘆いててもしょうがないので、日本でもこれから把握してもらうしか無いんですけど。
# こういう時こそ政治が…と思うのだけど、却って混乱させて下さってますね。
Re:もし原発を止めたいなら (スコア:1)
明日にも起こりうる次の災害で現在の原発が事故らない保障が無く、再事故には耐えられない以上、無理でも止めるしかないじゃない?
首相以外は幸運をアテにしてるようだけど、そういう時に限って裏目が出るパターンだな。
the.ACount
Re: (スコア:0)
今回、福島第一の4~6号機は停止中でしたが、それなりに危険な状態になりましたよね。
Re:もし原発を止めたいなら (スコア:1)
もちろん、止めただけじゃ危険が続く事は分かってる。
安全にするのが先か災害が先か、全てが懸かった競争だ。
一歩の遅れが致命的。
だれも認識しないなんて、まだ安全ボケが続いてるんだな~。
the.ACount
Re: (スコア:0)
ストレステストver0.1をパスしただけで安全宣言を出そうとする政府も心配だよ。
テストなんて三ヶ月ごとにアップデートして、その都度、再評価するようなものであるべきで、
それは原発の運転再開の可否とは別に行われてしかるべきなのに。
ていうか、あんまり役に立たなかった原子力安全委員会の権限を強化するとか、もうね・・・。
Re: (スコア:0)
> 日本人の悪い所として、こういう災厄が発生すると集団ヒステリーのごとく急進的というかパラノイア的に暴走する所がありますから。
どうして日本だけだと思いました?
typo (スコア:1)
>日本投資銀行 →日本政策投資銀行
です。大変失礼しました。
あと、
>全力の2割 →全電力の2割
の間違いです。
念のため。