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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー
原告敗訴 は妥当 (スコア:5, 参考になる)
道警がもし件の操作情報を巡査に家に持ち帰るよう許可を与えていた場合にはそれは「業務」となり、業務の上での流出であればそれは道警の過失が認められます。
また、本件では私物のPCが使用されており、道警の管理下にあるPCからの流出ではないため、この点でも道警の過失は認められないでしょう。
つまり、流出の責任は巡査個人にあり、道警の過失はありません。
確かに情報を業務外で持ち出し、使用することは明らかに「服務規程違反」の行為で罰せられるべきですが、この場合に罰する権利があるのは
Re:原告敗訴 は妥当 (スコア:5, 参考になる)
判決文をよく読んでもらいたいんですが
本事件の争点は、第一に巡査が私物のPCに捜査関連資料を保存した状態でインターネットに接続した行為が、国家賠償法第1条に言う公務関連行為(職務関連行為)であるかどうか。第二に、管理者である道警本部長らに管理義務違反があったか否かです
第一に関しては、裁判所は巡査のPCの利用が自宅であった点を理由に、職務執行の外形を具備していないと判断し公務関連性を否定しています。職務執行の外形とは、リーディングケースとなった最高裁判決S31年1月30日が非常に参考になります
この事件は、警視庁の巡査が非番の日に、神奈川県内の被害者宅に制服を着用して、職務行為を装い強盗殺人を行った事件で、当該公務員が極めて利己的な理由によって行った加害行為であるにも関わらず、行政側の責任を認めた判決です
本判決は、インターネットに接続する行為そのものを「車の運転などと同様にだれもが行っている行為であり,そのこと自体は,通常は職務とは無関係の行為である」としながら、外形説に基づき「A巡査の行為が警察署や派出所内で行われている限りにおいては,そのパソコンの利用は,捜査関係書類の作成という点で職務行為に該当する」が、巡査のインターネットへの接続が自宅で行われた点から外形性を否定しています。これは、かなり矛盾した主張で、巡査が加害行為を行った時点で、公務関連行為を行いながらインターネットに接続しなければ外形性が認められないことになってしまいます
一方の管理者としての責任ですが、これにはさらに二つの論点があります
まず、私物PCの利用を許容していた道警本部長に対する責任ですが、裁判所は予算制約上の問題と、私物PCの使用を禁じる法的根拠がない点を挙げて責任を否定しています
もう一つの、公務に関連する情報を消去せずに私物PCを自宅に持ち帰ったことが管理者(署長及び上司)の責任となるかという点ですが、この点は管理不備に関して責任を認めています。しかし、ウィルスに感染し情報が流出する可能性(予見可能性)がないことを理由に賠償責任を認めていません
問題点を言えば判決は、捜査情報を持ち帰った時点ではなく、感染時の予見可能性を標準にしています。法令違反に関しては、捜査情報に関する情報の消去を行っていない点を認めながら、巡査の感染を予想できない点をもって賠償を認めないというのは少し違うのではないかと思います
>痴漢をした社員を雇用していた会社も教育不行き届きで賠償金請求できてしまいますし、万引きをするような生徒を育てている学校に賠償金請求できるということになってしまいます。
民法715条にいう使用者責任と、国家賠償法1条に言う国家賠償責任は、理論構成が異なるのでこういう例えは極めて不適切であると思います
Re:原告敗訴 は妥当 (スコア:1)
最判昭和31年11月30日(民集10巻11号1502頁)の認めた外観主義は、公務員自身の抱いていた行為の主観的意図には関係なく、その行為が客観的に職務執行の外形をそなえていれば「職務を行うについて」のものと認めるというものです。
自宅での私物PCのインターネットへの接続が「職務を行うについて」した行為かという点については、その外観主義に立つ限り、やはり今回の高裁判決のような結論になると思います。
ただ私としては、インターネットへの接続行為のほかに、内部規定に反してファイルを削除しないで持ち帰ったという不作為の方を問題にして、それについて「職務を行うについて」のものと認めるという考え方の方が自然に思えます。ところが今回の訴訟で、原告はこの点について主張・立証をしなかったのですね。もっとも、こちらでも予見可能性が問題となった可能性はありますが…
その予見可能性が問題となった署長等の不作為については、やはり判決のいうとおり過失を認めるのは難しいかもしれません。小規模の情報流失ならば予見可能だったでしょうが、インターネットに広くばらまかれるという危険までは当時の一般人には想定できなかったでしょう。現在なら事情が違いますが。ただ逆に言うと、予見可能だった小規模の情報流出に係る部分だけ損害賠償を認めるという判決にはできなかったものでしょうか。