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capaの日記: 過去語り-3

日記 by capa
Iさんと会った後,暫くは卒論の仕上げに専念した.元々順調に
進んで来ていたので,問題無く終わり,無事に卒業することが
出来た.中学・高校と卒業できたのが不思議なくらいだった
僕だが,大学は高熱で一日休んだだけで,4年間の大学生活を
終えた.

卒業後,初出社の日まで2ヶ月近くあったので,毎日バイトを
して過ごした.両親からは,卒業旅行には行かないのか?と
聞かれたが,友人たちは,ほとんどが県外で就職することに
なっていて,引越しや新生活のスタートに備えるのに忙しく,
旅行どころでは無かった.

そして,憂鬱な初出社の日が訪れた.出社すると直ぐに朝礼で
紹介され,見るからにお局様といった感じの中年女性の部下
として働くことになった.

今,僕はいくら努力しても,当時の職場の人たちの名前を
思い出すことが出来ない.その社会福祉法人のトップ,
事務局長の名前すら思い出せない.恐らく,知らず知らずの
内に,忘れることを望んだのだろう.

ともかく,そのお局様のことをAさんと呼ぶことにする.
直ぐに分かったことだが,Aさんは一癖も二癖もある人だった.
僕がAさんの隣の席に座るや否や,「あんた,大卒だからって
大きな顔しないでくれる?ここでは,あんたが一番下っ端
なんだからね!」と言われたのだ.

Iさんのコネで入社できた,と勝手に負い目を感じていた僕は,
一編に萎縮してしまった.普通に考えれば,初対面でそんな
失礼なことを言われる覚えは無いのに・・・.

それから,Aさんが僕に向けて放つ言葉は,悉く皮肉か叱責だった.
こんなことも知らないの?なに考えて生きてんの?その程度の
作業に,どれだけ時間を掛ければ気が済むの?あんたみたいのを
給料泥棒って言うのよ!

今,振り返ってみると,Aさんに仕事のやり方を教えてもらった
ことは一度として無い.何をどうすれば良いのか,何の説明も
無いままに,書類を保管しているキャビネットを引っ掻き回し,
周りの人がやっていることを見よう見まねで真似していた.
当然,まともな仕事が出来るはずが無かった.

当時の僕は,こんなに困っているのに,どうして誰も何も
教えてくれないんだ?どうして誰も助けてくれないんだ?
と職場の人たちを恨んでいた.

だが,誰も何もしてくれなかったのは,当り前なのだ.僕は
何も尋ねなかったし,困っているから助けて欲しいとも
言わなかったのだから.自分から意思表示をしないのに,
他人に自分の気持ちに気づいてもらうことなど,期待する方が
おかしいのだ.しかし僕は,そんな当り前のことすら理解して
いなかった.
571419 journal

capaの日記: 過去語り-2

日記 by capa
合格通知を受け取ってから数日後、母から「お世話になった方に
ご挨拶に行くから、今週の日曜は明けておくように」と言われた。

だが、僕は「お世話になった方」が誰なのかが、分からなかった。
唯一思い付いたのがゼミの教授だったが、母が教授に挨拶をする
はずは無い。正直、見当もつかなかった。

当日、約束の場所に向かう道すがら、これから会う人がIさんと
いうこと。長く県庁の要職を務めていたこと。県議会議員にも
顔見知りが多く、定年退職した今でも、各方面に影響力を持って
いること。そして何より、そのIさんの力で僕が採用試験に合格
できたことを、母から説明されたのだ。

僕は強いショックを受け、会話をする気力も失ってしまった。
自分の知らないところで親が手を回していたから、僕は合格できた
のであって、決して実力なんかでは無かったのだ・・・。

実際にお会いしたIさんは、何処にでもいるお爺さんといった
容貌で、ニコニコと笑いながら、親しげに話し掛けてくれた。
しかし、僕はハァ、ハァ、と相槌を打つのが精一杯だった。

結局、その日は1時間少々、Iさんと母が当り触りの無い話をして、
別れ際にお礼の品を渡してお開きになった。

実のところ、僕はコネを使うということを毛嫌いしていた。
無能な輩がすることだと思っていたのだ。僕は、自分で思っている
のとは違い、能力の無い人間だったのか・・・。そう考えると、
早くも出勤するのが怖くなってしまった。「きっと、皆の足を
引っ張ってしまうに違いない」「邪魔物扱いされるのがオチだ」
そんな声が頭の中で、止むこと無く響いていた。
571566 journal

capaの日記: 過去語り-1

日記 by capa
1994年4月始め,僕は鬱々としていた.
何とか就職は出来たものの,それがコネによるものだったからだ.

大学4年の秋になっても,1つも内定が取れていなかった.
それまで僕は,常に自信満々で,内定なんかいくつでも取れると
高をくくって就職活動に身を入れていなかった.
けれど,現実には,夏を過ぎてから慌てて就活を始めたは良いが,
全く好感触を得ることが出来ずにいた.

そんな中,正確にいつ頃だったか思い出せないが,とある社会
福祉法人の採用試験を受けるよう,母から勧められたのだった.
詳しく聞いてみると,そこは地方自治体が運営する法人で,
実質的に公務員と言えるものだった.
ただ,元々,少人数の職場の上に欠員を補うために1名だけの
採用となっており,競争率もかなりのもののようだった.

その頃,僕はすっかり自信を無くしており,どうせダメだと
思い込んで,受験する気になれなかった.
しかし,母が余りに熱心に勧めるものだから,ひょっとすれば
ひょっとするかも,などと考えて応募したのだ.

今となっては,受験会場も試験内容も全く思い出せないのだが,
筆記試験と面接があったことだけは覚えていて,やっぱり
ダメだったな,と落ち込んだことも覚えている.

それから暫くは年の瀬が迫っていることもあって,就活は
一休みにして,卒論の仕上げに専念した.
そして年が明けて2週間ほど経った日に,思いがけず合格通知を
受け取った.僕は,いざとなれば俺もやるじゃん♪などと,
良い気になったものだった.それも長くは続かないとも知らずに.
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「科学者は100%安全だと保証できないものは動かしてはならない」、科学者「えっ」、プログラマ「えっ」

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