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13559599 comment

fromageのコメント: Re:とりあえず論文読む・・・ (スコア 1) 24

なるほど。

あなたの定義では量子アニーリングは量子コンピュータですか?

# 「夢がない」とはそういう意味なんじゃないかと。

コヒーレントイジングマシンはアニーリングマシンではあっても量子アニーリングではないと思います.なので,私がどちらの定義を採用していても無関係だと思います.

「スパコン超え」国産コンピューター 「量子」命名に異論 集積回路、従来のままにあるコヒーレントイジングマシン(量子ニューラルネットワーク)について,量子アニーリングの論文の著者による説明を引用します.

チームのメンバーの西森秀稔・東京工業大教授は毎日新聞の取材に「計算の一番本質のところで量子効果を使っていない」と話す。

「計算の一番本質のところで量子効果を使っていない」なら,量子アニーリングではなく,ただのアニーリングではないでしょうか?

13559566 comment

fromageのコメント: 専門家の回答(主なコメント)は公開されています (スコア 2) 24

専門家の回答は,内閣府の第39回革新的研究開発推進プログラム有識者会議 資料1 (PDF)の4ページ目にあります.
専門家7名の名前と所属は5ページ目にありますが,誰がどのコメントを行ったかは伏せられています(※はプロジェクトメンバー)
田村泰孝氏(計算機アーキテクチャ),戎崎俊一氏(宇宙科学、スーパーコンピュータ),井元信之氏(量子情報、量子光学),合原一幸氏※(ニューラルネットワーク等の数理モデル),西森秀稔氏※(量子アニーリングの理論),中村泰信氏※(ゲート型量子コンピュータ開発),荒川泰彦氏(光エレクトロニクス技術)

量子効果の存在については,
「 光の量子効果が最適解の選択に重要な役割を果たしており、
同様のことを古典コンピュータで再現することは非常に難しい。」,
性能について,
「 山本PMが示す性能比較表(量子コンピュータ及び現代コンピュータとの比較)のとおり、現状では、
組み合わせ最適化問題に限れば量子ビット間の全結合が可能なQNNが最も優れている。」
などとあります.

「光の量子効果が最適解の選択に重要な役割を果たしている」ことを示した論文名も書いてあると良かったのですが,どの論文なのかわかりません.

13559446 comment

fromageのコメント: Re:とりあえず論文読む・・・ (スコア 1) 24

新聞記事にあった「集積回路が計算速度を決めている可能性があり」
というのはまさに論文でもそう述べられているじゃん。

集積回路が計算速度を決めているなら,
「計算が速いのはコヒーレントイジングマシンが量子コンピュータだから」
という主張が成り立たなくなります.

とにかく、今までの半導体コンピュータと全然違う仕組みで
ちゃんとマックスカット問題解けてると主張してる。

(見た目の)仕組みが違うことは理由になりません.
チューリング機械,ラムダ計算,帰納的関数はどれも違う仕組みですが,
等価な計算モデルです.
NP 困難な組み合わせ問題も,それぞれは違う仕組みですが,
そのうち1つが多項式時間で解ければ,すべて多項式時間で解くことができる,
という意味で同じ問題です.
コヒーレントイジングマシンがほかのコンピュータと違う仕組みに見えることは,
量子でない普通の(古典)コンピュータでない理由になりません.

論文自体は量子効果のポテンシャルがあるだけだと正直に書いてある。

「ポテンシャルがある」が理由になるなら,
「(コヒーレントイジングマシンは)多分、多項式時間で古典でシミュレートできると思います。」
という予想と証明のスケッチがあります.
ポテンシャルが示されたので,コヒーレントイジングマシンは普通のコンピュータでしかないでしょう.

それにのっかる自称科学ジャーナリストと便乗する野次馬・・・

見当たらなかったのですが,自称科学ジャーナリストとはどのアカウントを指していますか?

13464884 comment

fromageのコメント: 論文には量子性があるかわからないと書いてある (スコア 1) 64

そういう意味では、「光パラメトリック発振器(OPO)というレーザーの量子力学的特性」というのが「最適化問題を高速に解く」ことにどのように役に立っているのかがポイントで、Togetterを見てもそこに疑義があるという話になっているように思う。

疑義のレベルではなく,開発者自ら論文で量子的振る舞いの有効性を否定しているので明らかです.「量子的になるように考えてシステムを作ったけれど,実際に量子的振る舞いをしているかわからないし,量子的なことが問題を解くのに役立っているかもわからない.相転移は量子雑音がもとになっているので量子的な何かがシステムの中で起きているはず.でも証拠はない.」と論文に書いています.ここから,プレスリリースの内容が出てくる理由がわかりませんし,量子的振る舞いが役立っていないことは疑問の余地がないと思います.

あまりにもかけ離れているので,原文である Science の論文 A coherent Ising machine for 2000-node optimization problems の補足資料(無料閲覧可 PDF へのリンクあり)の6ページ目 "Role of quantumness in CIM" 「コヒーレントイジングマシンにおける量子性の役割」から引用します(意訳は文章の裏読みです).

From these numerical results, we consider that the CIM is being operated in a partially quantum regime, but we have yet to confirm the quantum behavior of our system experimentally. Moreover, it is also important to clarify experimentally whether the existence of a superposed state in the CIM contributes to better performance in terms of computation time and accuracy.
The lower-energy searching process of the CIM occurs during the DOPO phase transition, which is caused by the nonlinear interactions of photons in a PSA with an initial state originating from quantum noise. To the best of our knowledge, it is still an open question whether such a nonlinear phenomenon seeded by quantum noise can be efficiently emulated with a purely classical system, such as special purpose electronics without any quantum effects.

参考訳: これらの数値的な結果から,コヒーレントイジングマシンは部分的な量子領域で動作していると我々は考えるが(意訳: 証拠を示すことはできず),このシステムの量子的振る舞いは実験的にまだ確認できないでいる.さらに,コヒーレントイジングマシンにおける状態重ね合わせの存在が,計算時間と解の精度を良くすることに貢献しているかどうかを実験的に明らかにすることも重要である(意訳: わかっていない).
コヒーレントイジングマシンの最小エネルギー探索過程は光発振器の相転移のときに起きている.この相転移は,位相感応型光増幅器の中にある,量子雑音から決まる初期状態を持つ光子同士の非線形相互作用により引き起こされる.我々の知る限り,量子雑音を乱数シード値とした非線形的現象が,まったく量子効果のない特別な目的の電子機器といった,純粋な古典計算システムで模倣できるのかは未解決の問題である(意訳: 純粋な古典計算システムで量子雑音からの非線形相互作用を模倣する方法はまだ知られていないので,相転移が起きているならきっと量子的な何かが起こっているはず.証拠は示せないけど).(参考訳終わり)
また,プレスリリースにある「量子ニューラルネットワーク」について,コヒーレントイジングマシンの研究成果 2017年度, 2016年度にある論文のうち無料で閲覧できるものを見てみました(有料の論文は費用が,それより過去の論文は時間がそれぞれ掛かるので未確認です).その限りでは,量子ニューラルネットワークどころか,量子をつけないただのニューラルネットワークであるという説明すら,まったく見つかりませんでした(見つけた方は論文の題名とその部分をご指摘ください).

またこの論文の補足資料の説明(引用部分の後半)から,同じ機能の単純なシステムの実現可能性を指摘しているツイートがあります([2] は上で引用した補足資料です).

計算機屋としての疑問は、FPGAにDRAMのシフトレジスタを接続し、途中に適当な物理乱数回路を入れれば同じものが実現するのではないかということ。([2]によれば、答えはYESだdろう)。何かD-Waveと日立のCMOS Isingマシンの関係を思い起こす。

コヒーレントイジングマシンと同じものがこれで実現する可能性を否定できないのが,この研究の現状です.一般に公開するより,この FPGA+物理乱数回路との比較実験のほうが研究予算の使い道として価値があるように思います.

13463690 comment

fromageのコメント: 自分の考えを客観的に見る.そして勉強する (スコア 1) 64

あなたのコメントに関する疑問点について,いくつか質問しようかと思いましたが止めました.理由は次の3つです.
(a) あなたは違和感の根拠を既に知っている.
(b) あなたの使う用語が曖昧で話が通じない.
(c) 理解したいなら,勉強しましょう.
(a)

私は「量子ニューラルネットワーク」が適切であると考えているわけではありません。

あなたのコメントから2つの可能性を考えました.
(1) ニューラルネットワークの要素は濃いが.欠けている部分もあるので量子ニューラルネットワークは適切ではない.
(2) 量子ニューラルネットワークが適切ではなく,ニューラルネットワークの要素は濃くないが,薄いとは思わない.
(1), (2) のどちらでも,今回の機械はニューラルネットワークではない部分があると,あなたは思っているわけです.その「ではない部分」を私が重要視していると考えれば,私の違和感が納得できると思います.

単にあなたの意見を聞きたいと思っています。

意見を聞かなくても,あなたは「ではない部分」をわかっているでしょう. その「ではない部分」を説明せず,ただただ意見を聞かれるのは,不親切で非協力的だと思う人もいるかもしれません(私は思いませんが).
(2)

たとえば、イジングマシンはボルツマンマシンとほぼ同義のように思われますが、

まず,「イジングマシン」とは何でしょうか.イジングマシンという用語は定着していないようで,検索では見つかりませんでした.
[可能性1] イジング計算機 (PDF)だとニューラルネットワークはまったく言及されていません.
[可能性2] 今回の機械はコヒーレント・イジングマシンという名前でもありますが,コヒーレントを取った場合の「イジングマシン」がどうなるのか,あなたのコメントと検索ではわかりません.
[可能性3] イジング模型(モデル)は知られている用語ですが,あなたのコメントからこの用語を指しているか曖昧で,確証が持てません.
さらに「ほぼ同義」とは何でしょうか?「ほぼ」とはどれくらいですか?わからなくて困ります.違う部分をきちんと説明する方が話し合いが進むとは思いませんか?
あなたは,この2点だけ見ても自分の考えを伝えることに失敗しています.いい加減な用語を使われた私は調べなければいけないのでしょうか?用語をいい加減に扱っている人に,私の考えが伝わるでしょうか?あなたは相手の話を聞かず,一方的に自分の言葉を押し付けて,相手を困惑させていることはありませんか?
(c)

単にあなたの意見を聞きたいと思っています。

私の意見より,きちんとしたテキストの方が理解できます.謎の用語「イジングマシン」はテキストに掲載されている可能性が唯一あるイジングモデルと仮定し(違うならご自分で調べてください),次の3種類のテキストを見ます.(i), (ii) は PDF ファイルが公開されているので,すぐ読めます.
(i) Information Theory, Inference, and Learning Algorithms
(ii) The Elements of Statistical Learning
(iii) Pattern Recognition and Machine Learning
イジングモデルとボルツマンマシンがテキストのニューラルネットワークの章に含まれるかどうかは次の通りです.
---
(i) ニューラルネットワーク 5章
イジングモデル 4 31 Ising Models(含まれない)
ボルツマンマシン 5 43 Boltzmann Machines(含まれる)
(ii) ニューラルネットワーク 11章
イジングモデル 17.4 Undirected Graphical Models for Discrete Variables(含まれない)
ボルツマンマシン 17.4 Undirected Graphical Models for Discrete Variables(含まれない)
(iii) ニューラルネットワーク 5章
イジングモデル 8.3. Markov Random Fields(含まれない)
ボルツマンマシン 説明なし (含まれない)
---
イジングモデルをニューラルネットワークに含んでいるテキストはありません.ボルツマンマシンは含まれている,いない,説明がないなど色々です.
イジングマシンモデルとボルツマンマシンがほぼ同義だという理解とこれらのテキストの内容を照らし合わせてみてください.(ii) では分野の違いだけで同一だと書いてある一方,(i) では違っています.
これらのテキストを読めば,私の根拠だけでなく,他の区別も理解できて得でしょう.自分の考えに客観的になれるのならば,他人に根拠を尋ねる前に,このくらいは自分で調べることもできたと思いますが.
これだけ情報があり,理解したいなら,必ずわかると思いますが,わからなければ,誰かわかる人に家庭教師を有償で頼んでください.ただ働きは私だけで結構です.
無償でこれだけの情報をお伝えすれば十分ではないでしょうか.頑張って勉強して下さい.

13462907 comment

fromageのコメント: Re:qnncloud で解ける最適化問題は MAX-CUT だけ (スコア 1) 64

要素があるなら,その名前をつけて良いというあなたの考え方に,私は賛成しないというだけです.今回の機械はコンピュータの要素があるから,量子コンピュータと呼んで良いでしょうか?私にはそう思えないのですが.

でもあなたが量子ニューラルネットワークの方が適切だと思うのは自由です.私はあなたの意見に納得しなかっただけで,あなたの意見を変えたいとは思いません.

13462158 comment

fromageのコメント: Re:qnncloud で解ける最適化問題は MAX-CUT だけ (スコア 1) 64

新しいアルゴリズムを提案する論文ではコードを公開することも多いと思いますが、それと同じ意義があると思います。
論文中で速く解けると主張するだけでなく、様々な問題に対して検証できる場を提供する意義は大きいのではないでしょうか。

検証という点では,研究者に公開するなら意義があると思います.プレスリリースを出して一般に公開することと,検証のつながりが良くわかりません.

詳しくはわかりませんが、±1の2状態を取るような素子が相互にパルス結合されているようなので
一種のニューラルネットワークモデルの実装だと考えても不自然ではないと思いますが。

なるほど.要素はあるんですね.あなたが不自然に思わないこともわかりました.
「要素がないのに」を「要素が薄いのに」に訂正します.

一種のニューラルネットワークモデルの実装と考えて不自然ではない程度だと,その種類(パルスネットワーク?)を具体的に名前にする方が適していると思います.開発者の一人のポスター (PDF)の題名「光発振器ネットワークで組合せ最適化問題を高速に解くコヒーレントイジングマシン」を参考にすると,「光発振器ネットワーク型コヒーレントイジングマシン」の方が誤解を招かないのではないでしょうか.

13462065 comment

fromageのコメント: Re:qnncloud で解ける最適化問題は MAX-CUT だけ (スコア 1) 64

その読み方をするなら重みは +1 だけじゃない?

開発者たちの論文の4章は次のように書いています.

computational experiments were conducted on fully connected complete graphs (略) the n ( n − 1 ) /2 edges are randomly weighted { ± 1 } .

イジングモデルを直接適用できるように重みを +1, -1 に設定しています.

用語解説で「重み」とか使いたくなかっただけのような気がする。

重みを扱えるようになったのでしょうか?

13461178 comment

fromageのコメント: qnncloud で解ける最適化問題は MAX-CUT だけ (スコア 1) 64

さらに,プレスリリースの用語解説の MAX-CUT で

(略)異なるグループに属するノード間に張られたエッジの数が最大となる分け方を求める問題。

となっているので,辺の重みは +1, -1 の2種類のみの特別な場合.
(一般には,辺の重みは任意の値で,異なるグループどうしを結ぶ辺の重みの和を最大にするように分割する)
疑問点
- 公開は必要?
- 誰か MAX-CUT を解くのを試したい?
- ニューラルネットワークの要素がないのに,なぜ名前が量子ニューラルネットワーク?
- Goemans Williamson のアルゴリズムとの比較は見つかったけれど,量子最適化機の D-Wave とは比較されている?

13434345 comment

fromageのコメント: Re:論文と共同発表の違い (スコア 1) 21

著者ご自身からコメントを頂いたと思って返答します.

ご説明ありがとうございました.
高校生にわかる説明を求められていたためという理由,納得しました.
今回の成果を高校生にわかるようにまとめた内容だから,ニュースになり,私も知ることができたのであり,もし複雑な説明を含んでいれば,ニュースにならず,知ることもできませんでした.その視点が私に欠けていました.申し訳ありませんでした.
プレスリリースは興味を持つきっかけで,内容をきちんと理解しようと思ったら,論文を読むようにしたいと思います.
ネットの書き込みにコメントしていただき,ありがとうございました.

13433601 comment

fromageのコメント: Re:AIよりも… (スコア 1) 21

P=NP? は未解決問題なので P≠NP は成立していません.
おっしゃりたいのは,NP 完全問題を多項式時間で解く方法は,
量子コンピュータを使ってもまだ見つかっていない,ということでしょうか?

13433583 comment

fromageのコメント: 論文と共同発表の違い (スコア 1) 21

では,今回の論文に関係のあるコメントを書いてみます.
(これもしょうもないコメントだったら,ごめんなさい)

arxiv で読める論文の概要には,
"if we accept a modified version of the average case hardness conjecture."
と,ある予想が成り立つという条件の下で今回の成果が示されたと書いてあります.
この予想は,NP の数え上げ版のクラス (#P) の中の困難な問題は平均時間で見ても困難だ,
というもののようです.

しかし,この共同発表にはそのような条件は見当たりません.
理論的成果を示すのに,条件を隠しているように見えるのは,
その条件が成り立つだろうと多くの研究者が予測していても,
何か落ち着かない,しっくり来ない感じがしますね.

13420465 comment

fromageのコメント: Re:根拠は OECD生徒の学習到達度調査(PISA) (スコア 1) 222

理由なしに結論だけ押し付けられても,同意する術がありません.

あなたが,そのような結論に達したことは前のコメントでわかっています.
理由を説明できないのではなく,理由を書くまでもなく明らかならば,
理由の説明なく結論だけのコメントを繰り返すより,
後は一連のコメントを読むそれぞれのかたの判断に任せるのが賢明ではないでしょうか.

13419623 comment

fromageのコメント: 調査のオピニオンペーパーの中の疑問点 (スコア 1) 222

リンク先の文献 新井紀子、尾崎幸謙 (2017): デジタライゼーション時代 に求められる人材育成. NIRA オピニオンペーパー no.31. (PDF) を読もうとしましたが、誤った事実認識が書かれているなど、読み進めるのがつらくなる内容で、半分ほどで読むのを断念しました。

私はこのペーパーを読むことは勧めませんが、これから読む方のために、前半を読んだときに気づいた疑問点を、以下に5点列挙します。また、このペーパーを読むことを勧めた前のコメントのかたの、以下の5点に対するご意見を伺えれば、うれしく思います。

(1) [3ページ目右列]

そんな時代を背景としてAIプロジェクト「ロボットは東 大に入れるか」(通称:東ロボ)は2011年に始まった。 (中略) 1990年代の第5世代コンピューターの手ひどい失敗がトラウマ(心的外傷)となった結果、当時の日本には大型の AIプロジェクトは皆無の状況だった。

90年代以後の人工知能に関するプロジェクトが3つ見つかりました(まだ他にもあるかもしれません)ので、これは誤りです。

+ リアルワールド・コンピューティング・プロジェクト (通商産業省 1992-2002)
+ 巨大学術社会情報からの知識発見に関する基礎研究 (文部省 科学研究費 特定領域研究(A)1998-2000)
+ 情報洪水時代におけるアクティブマイニングの実現 (文部省 科学研究費 特定領域研究 2005-2008)

また、東ロボプロジェクトと同時期に別の AI プロジェクトも実施されていて、「当時の日本には大型の AIプロジェクトは皆無の状況だった。」ということはありません。

+ 科学的発見・社会的課題解決に向けた各分野のビッグデータ利活用推進のための次世代アプリケーション技術の創出・高度化 (JST CREST・さきがけ複合領域 2013-)

(2) [5ページ目左列]

われわれは日本数学会と協力し、2011年に5000人を超える大学生に対し、高校1年までに習う数学の中でも、特に基本的な項目をどれだけ理解しているかの調査を行った(日本数学会教育委員会,2013)。その結果、いくつかの課題が見いだされた。例えば、「平均」がもつ意味を正しく理解している大学生は調査対象者の4分の3にとどまることがわかった。

そのような数学の理解度の低さは、そのとき見出された課題ではなく、以前から指摘されています。例えば書籍 分数ができない大学生 (1998) では、 「大学生の10人のうち2人は小学生の算数ができません。」と指摘され、広く話題になりました。

(3) [5ページ右列]

つまり、AIと最も差別化できるはずの「よく見、よく読み、よく聞き、よく書き、よく話す能力」が教育できておらず、現代のAIに簡単に代替されるような表層的なスキルしか身に着いていないのではないかとの懸念が生じたのである。意味を理解せず表層的に問題を解いただけの東ロボが2015、2016年と2年続けて偏差値57を上回り、高校3年生の上位25%に入ったということも、この仮説が正しいことを示唆するものであった。

この仮説を将棋に当てはめると、「意味を理解せず表層的に将棋を指すAIが現役棋士のほとんどを上回っているので、現役棋士は表層的なスキルしか獲得していない」ことになります。しかし、現役棋士は、将棋に関して表層的なスキル以上の事柄を理解しています。
つまり、この仮説(懸念)は誤った結論を導きます。

(4) [6ページ目左列]

人間は、1日は昼と夜で構成されるという常識に基づき論理的に推論することで、「ヨーロッパは日本より相対的に緯度が高いので、夏の夜の時間が短い」ことがわかるが、常識に欠けるAIにはこのような推論は難しい 。

常識に基づき論理的に推論する AI の過去の研究として次が、このペーパーの2年前に発表されています。よって、このペーパーが書かれた時点で、AI が常識を持って推論することは難しくありません。
G. Angeli and C. D. Manning (2014): NaturalLI: Natural Logic Inference for Common Sense Reasoning, Proc. EMNLP 2014 (Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing).
[概要]
事実(常識)を列挙したデータベースが与えられたとき、未知の出来事の真偽を判定し、真ならデータベースに追加する推論技術の提案。 推論の例:「猫がネズミを食べる」から、「「哺乳類は動物を食べない」が偽である」を導ける。

(5) [6ページ目右列]

次に、図2は、(5)のイメージ同定に分類される、文を表象する正しい図を選ぶ問題例である。
正解は「A」である。こうした問題については、よほどフ レームを限定しないと機械に解かせることは困難だろう。

SAT (アメリカの大学進学適性試験)の図形の問題を、手を加えずにコンピュータで自動的に解くという、次の研究が、このペーパーの1年前に公表されています。このためこのペーパーが書かれた時点で、図形の問題を機械に自動的に解かせるのが困難といえるか、疑問です。

M. Seo et al. (2015): Solving Geometry Problems: Combining Text and Diagram Interpretation, Proc. EMNLP 2015 (Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing).

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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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