
ヘリウムが固体でも超流動することを支持する新たな実験結果
液体ヘリウムが 2.17 K 以下の低温で超流動を示すことは古くから知られていたが、近年、低温・高圧下で存在する固体ヘリウムも、16 mK 以下の極低温で超流動するという複数の実験結果が示されている。今回、それを支持する新たな実験結果が報告された。(Physical Review Letters、WIRED)。今回の実験では、従来まで実験が行われていた He4 ではなく、同位体の He3 の高純度サンプルを作成して低温・高圧下での粘性を測定した。すると、He4 とは全く違う振る舞いを示した。固体の He4 は低温にするほど粘性が下がり「超流動」するが、固体の He3 はそれとは逆に、温度を下げるほど粘性が上がっていった。この対称的な結果は、固体 He4 が超流動しているという解釈を支持している。なぜなら、He4 原子はボース粒子なので超流動が起こりうるが、He3 原子はフェルミ粒子なので超流動は起こらないはずだからだ。
しかし、この実験によってヘリウムの謎が解けたわけではない。固体の He3 の温度を下げていっても完全には固まりきらず、粘性が一定の値になってしまったからだ。これは、予想に反して固体の He3 が超流動を起こしているとも受け取れる。奇妙なヘリウムの謎は深まるばかりのようだ。