i-nakの日記: technobahnの記事が酷すぎ 1
日記 by
i-nak
某ニュースサイトで紹介されてた記事読んで唖然。technobahn ってのがどんなサイト
なのか、あまり良く知らないけど、少なくとも科学方面はまったダメだな。
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200907012012&lang=
> 2009/7/1 20:12 - ロスアラモス国立研究所によって光速の壁を超えて
> 電波を送信することを可能とする装置の開発に成功していたことが
> 6月30日、同研究所が発表した研究論文により明らかとなった
研究所が論文を発表するってのも変だし、その「論文」みると提出日付は 2004年の5月
だし、最初からおかしすぎ。
で、論文の内容は、
通常は媒体中で生じるチェレンコフ放射に似た現象を真空中でも起こせる
って話。チェレンコフ放射ってのは、媒質中 (例えば、水) で電子などの荷電粒子が光速
より速く運動すると光を放射する現象。
光速より速く運動するなんて出来ないんじゃなかったの? と言う人もいるだろうが、この場合
は光速と言っても、水の中の光速で、これは真空中の光速よりも遅い。「光速を超えることは
できない」ってのはあくまでも「真空中の光速」の話なんで
水の中の光速<荷電粒子の速さ<真空中の光速
という状況は生じうるわけだ。で、当然のことながら真空中ではこの現象は起こりえない。
でもこの論文は「真空中でも起こせる」んじゃないの? と短絡してはいけない。起こせるのは
あくまでも「似た現象」。
細長い誘電体に電極をたくさん一列に並べて、電極に電圧をかけると、その部分が分極 (polarize) する。
あらかじめ設定したタイミングで各電極にかける電圧を制御すれば、分極した部分の位置が移動する。
これは実際に何かが動いているわけではないので、移動速度は光速を超えることも出来る。
(電光掲示板の文字が動いているように見えても、実際には個々のランプがON/OFFを繰り返してる
だけで何も動いていないのと同じ)
これが論文のタイトルにある「superluminal polarization current (超光速の分極の流れ)」だ。
technobahn は polarization を「偏光」と訳してるがこれは間違い。
他にも、誘電体を少し曲げることで「超光速の分極の流れ」に加速運動 (求心加速) させるとか
いろいろ工夫があるようだが、とにかく、そういう「超光速」な電荷分布の移動によって生じる
放射はチェレンコフ放射に良く似た特徴を持ってる、というのがこの論文の趣旨。
で、放射される電磁波自体が光速を超えるなんて話はどこにも出てこない。もちろんこんなものを
使って光速を超えて通信するなんてことも不可能。
technobahnの記事には
> 光速を超える速度で通信を行った場合、衛星経由で携帯電話を使用した場合でも遅延が生じなくなるとした上で、
なんて書いてあるが、こんなこと論文のどこにも書いていない。おそらく元になったのは
> This radiation mechanism could thus be used, in principle, to convey electronic
> data over very long distances with very much lower attenuation than is possible
> with existing sources. In the case of ground-to-satellite communications, for
> example, the above properties imply that either far fewer satellites would be
> required for the same bandwidth or each satellite could handle a much wider range
> of signals for the same power output.
の部分 (論文の中で衛星通信について言及してるのはこの部分だけ)。要約&意訳すると
この放射は通常の放射に比べて長距離でも減衰しにくいので、衛星通信に使えばより
広帯域な通信が出来る (あるいは同じ帯域を少ない衛星で実現できる) だろう
ってことで、「減衰(attenuation)」を「遅延」と誤訳したのか、それともこの部分の前にある「decay」
を「delay」と見間違えたのか、いずれにしても酷いというほかない。
なのか、あまり良く知らないけど、少なくとも科学方面はまったダメだな。
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200907012012&lang=
> 2009/7/1 20:12 - ロスアラモス国立研究所によって光速の壁を超えて
> 電波を送信することを可能とする装置の開発に成功していたことが
> 6月30日、同研究所が発表した研究論文により明らかとなった
研究所が論文を発表するってのも変だし、その「論文」みると提出日付は 2004年の5月
だし、最初からおかしすぎ。
で、論文の内容は、
通常は媒体中で生じるチェレンコフ放射に似た現象を真空中でも起こせる
って話。チェレンコフ放射ってのは、媒質中 (例えば、水) で電子などの荷電粒子が光速
より速く運動すると光を放射する現象。
光速より速く運動するなんて出来ないんじゃなかったの? と言う人もいるだろうが、この場合
は光速と言っても、水の中の光速で、これは真空中の光速よりも遅い。「光速を超えることは
できない」ってのはあくまでも「真空中の光速」の話なんで
水の中の光速<荷電粒子の速さ<真空中の光速
という状況は生じうるわけだ。で、当然のことながら真空中ではこの現象は起こりえない。
でもこの論文は「真空中でも起こせる」んじゃないの? と短絡してはいけない。起こせるのは
あくまでも「似た現象」。
細長い誘電体に電極をたくさん一列に並べて、電極に電圧をかけると、その部分が分極 (polarize) する。
あらかじめ設定したタイミングで各電極にかける電圧を制御すれば、分極した部分の位置が移動する。
これは実際に何かが動いているわけではないので、移動速度は光速を超えることも出来る。
(電光掲示板の文字が動いているように見えても、実際には個々のランプがON/OFFを繰り返してる
だけで何も動いていないのと同じ)
これが論文のタイトルにある「superluminal polarization current (超光速の分極の流れ)」だ。
technobahn は polarization を「偏光」と訳してるがこれは間違い。
他にも、誘電体を少し曲げることで「超光速の分極の流れ」に加速運動 (求心加速) させるとか
いろいろ工夫があるようだが、とにかく、そういう「超光速」な電荷分布の移動によって生じる
放射はチェレンコフ放射に良く似た特徴を持ってる、というのがこの論文の趣旨。
で、放射される電磁波自体が光速を超えるなんて話はどこにも出てこない。もちろんこんなものを
使って光速を超えて通信するなんてことも不可能。
technobahnの記事には
> 光速を超える速度で通信を行った場合、衛星経由で携帯電話を使用した場合でも遅延が生じなくなるとした上で、
なんて書いてあるが、こんなこと論文のどこにも書いていない。おそらく元になったのは
> This radiation mechanism could thus be used, in principle, to convey electronic
> data over very long distances with very much lower attenuation than is possible
> with existing sources. In the case of ground-to-satellite communications, for
> example, the above properties imply that either far fewer satellites would be
> required for the same bandwidth or each satellite could handle a much wider range
> of signals for the same power output.
の部分 (論文の中で衛星通信について言及してるのはこの部分だけ)。要約&意訳すると
この放射は通常の放射に比べて長距離でも減衰しにくいので、衛星通信に使えばより
広帯域な通信が出来る (あるいは同じ帯域を少ない衛星で実現できる) だろう
ってことで、「減衰(attenuation)」を「遅延」と誤訳したのか、それともこの部分の前にある「decay」
を「delay」と見間違えたのか、いずれにしても酷いというほかない。
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