[4/1] 牛個体識別制度にプライバシー上の重大な欠陥が指摘される 1
牛個体識別制度をご存じだろうか。国内の全ての牛に一意の個体識別情報(以下、番号)が付与され、飼育から肉の加工・流通に至るまで管理される、牛のマイナンバーともいえる制度である。精肉店で購入した肉や料理屋で出された肉の番号さえ知っていれば、WWW上の牛の個体識別情報検索サービス(以下、照会サービス)で誰でもその牛肉の素性について情報照会することができる。つまり、消費者が自分で国産牛肉の安全を確認できるというわけだ。
しかし一方で、近年のプライバシー意識の高まりを受け、本制度による牛のプライバシー問題が提起されるようになってきている。食の安全・安心はもちろん大切ではあるが、牛のプライバシーはどうなっているのか。
セキュリティ専門家で国産牛のプライバシー問題に詳しい j☆beef氏は、この問題について次のように指摘している。(まとめ)個体識別情報の番号自体は、秘密情報ではなく公開された情報といえる。たとえば、店頭にある牛肉パックの表示を見るだけで、肉の直接の消費者でなくても比較的容易に知ることができる。 ところが、現在の照会サービスでは、番号を入力するだけで肉の素性について情報照会できるようになっている。番号のみ知っていれば、肉の購入者でなくとも「この肉は○○牧場で飼育されたから脂が美味しい」など、牛の行動履歴や肉の個性といった牛のプライバシーに関する情報が得られてしまう。良心ある技術者では考えられないような欠陥だ。
さらに、こうした情報(俗にいうビーフデータ)を、食肉業者が安易にマーケティングに利用している例もある。照会サービス、食肉業者ともに、牛のプライバシーに全く配慮していないと言わざるを得ない。
新鮮で安心でおいしい国産牛肉Jビーフの健全な発展のためにも、欠陥のある照会サービスはただちに停止されるべきだ。とりわけ、照会を拒否したい牛に対し、オプトアウトの手段が提供されていない点は大きな問題と言えるだろう。このほか、最近よくみられる主張として、「肉をハッシュドビーフに一方向に加工すれば元の牛肉との味の関連は見えなくなり、プライバシー上の問題は生じない」というものがあるが、j☆beef氏はこれについても誤りだとしている。理由として、ハッシュドビーフのレシピは公知であり、料理店Aと料理店Bで調理された(元となる国産牛が同一の)ハッシュドビーフの味を紐付けることは容易にできてしまう点を挙げている。
本制度については、食の安全だけでなく、消費者の利便性、業者のマーケティング上の思惑が複雑に入り乱れている。こうした事情と牛のプライバシーの両立は難しい問題であるが、なにか美味い方法はないものだろうか。
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