アフリカ・ボツワナ、牛の臀部に目玉をペイントして大型肉食獣による被害を防ぐ「Eye-cow」プロジェクト
アフリカ・ボツワナで大型肉食獣による放牧牛の被害を防ぐため、牛の臀部に目玉をペイントする「Eye-cow」プロジェクトが進められているそうだ(論文、 ニューサウスウェールズ大学のニュース記事、 Ars Technicaの記事、 The Conversationの記事)。
ボツワナ北部のオカバンゴデルタ地域では野生保護区に隣接した土地で牛の放牧が行われておこなわれており、牛がライオンやヒョウに襲われる被害がしばしば発生する。現在の捕食動物対策は致死性の対策に強く依存しているが、肉食獣を絶滅させる可能性もあり、ツーリズムや野生保護の観点からも致死性でない対策が求められている。
敵からの攻撃を緩和するための目玉模様は昆虫や魚類、鳥類などに多くみられるが、現生の哺乳類で同様の目玉模様を持つものはない。目玉模様が効果を発揮する仕組みとしては、攻撃の狙いを外させる、捕食生物の敵に擬態する、目立つ模様で驚かせる、捕食生物の存在に気付いていると誤認させるといった仮説が立てられており、これらの組み合わせも考えられる。ライオンやヒョウのように獲物を待ち伏せして狩りを行う捕食動物では、獲物に気付かれれば狩りが成功する可能性が低下するため、目玉のペイントを見た場合に牛を襲わない可能性が考えられる。
ボツワナの捕食動物保護トラストとオーストラリアのニューサウスウェールズ大学がオカバンゴデルタ地域で4年にわたって行った実験では、実際に目玉ペイントの効果がみられたという。実験は直近数か月に被害が多かった放牧場を選び、飼育されている群れを目玉ペイント・「×」ペイント・ペイントなしの3グループに分けて実施。18頭がライオンに殺される被害にあい、1頭がヒョウに殺される被害にあったが、目玉をペイントした683頭に被害はなかったという。被害にあったのは「×」をペイントした牛4頭(0.75%)、およびペイントなし15頭(1.80%)となっており、「×」のペイントもペイントなしとの有意差(Df=1、p<0.001)がみられる。そのため、この実験結果は捕食動物の存在に気付いていると誤認させる説と、目立つ模様で驚かせる説の両方を支持するものとなる。
目玉ペイントは塗料と筆を用意すれば適用できるが、スタンプを作成すればさらに容易な適用が可能になる。捕食動物保護トラストではヨガマットなどのウレタンフォーム素材を切り抜いてスタンプを作る方法を紹介しており、PDFファイルには型紙も含まれている。
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