初志を貫徹して極めて批判的に書かせていただきます。
お気を悪くなさらないよう…
>XRDで基本的なcellが変化していないことから,ナノ粒子の大部分は元のままであるってのはまあ良いかなと言う気がします.
>#目立って伸びたり縮んだりもしてませんし.
XRDでのセルの変化は、細かいようですが、これは有意な差であると考えられます。
1%に満たないですが、X線回折による格子定数の評価というのは、それほど敏感なものです。
#この発表をしている研究者たちがいい加減なデータの取り方、解析の仕方をしている場合はこの限りにあらず。
これだけずれていれば、この議論の本質とは外れたたとえになりますが、
組成がずれているがゆえのバルク特性変化もありえます。
>(一応)STEMで表面に若干違う組成の物がいそうだ,というのも言えますし.
誠実に解析と評価を行っていると信じれば、肯定出来なくはないですが、
あのプレゼンテーション方法では、どうとでも操作できてしまいます。
#実際に使ってみるとわかると思いますが、EDXによる元素マッピングのいい加減さは想像を絶します。
空間分解能をあげて、系統的なEELSスペクトル変化を見るような分析をしていないと、
証拠のレベルまでは行かないでしょう。
>Figure S6とそのキャプションを見る限り,同等サイズのLiFePO4との比較を行い有意な差が出ているようです.
本来は、このFigure S6こそメインに出すべき図のはずです。
これがあるからこそ、少なくとも効果はあるのだなと思えます。
しかしながら、
著者らが同等サイズと主張しているサンプルとの比較で有意な差は確かにでていますが、
この程度の差は、有象無象のドーピングによる材料改質研究と同程度でしか有りません。
この程度の差が、果たしてこのプレスリリースに値するものでしょうか?
また、望んだ粒子粒子のサイズを自由に得ることは極めて難しい技術です。
同等サイズの比較データとしてあげているサンプルはボールミル処理により粉砕して得ています。
ボールミルは極めて強力な衝突とせん断応力により粉末を磨砕する強力な手法です。
この様な方法で試料を処理しておいて、結晶格子および表面に差が無いと
主張するのは極めて非常識です。
著者らにとって、見た目の大きさしか頭に無いという良い証拠です。
>EDLCとしての効果は効いていないと言っても良いのでは.
上で話題に上げているFigure S6ですが、この図において、
組成をずらしていないサンプルのグラフこそ、キャパシタ特性そのものの曲線を描いています。
つまり、
「カーボンを大量に加えているがゆえのキャパシタ容量に加えて、
少しだけ活物質由来の容量を加えることが出来るようになりましたよ。」
程度の結果でしかないと捉えることが出来てしまします。
>Mössbauerでのバルクの分析でのFe3+の存在,XRDでの基本粒子の組成の変化がほぼ無さそうなことなどが出ているので,個人的には許容範囲かなと.
MossbauerスペクトルでのFe3+の存在は、この物質においては、粒子系の小さなサンプルを大気に晒した場合には、一般的に見られるものです。
理想的にはこの材料は全てFe2+ですが、空気中で容易に酸化されて部分的にFe3+が導入されます。
今回のように、粒子系が50 nmを下回るサンプルでは当然の結果といえるでしょう。
このFe3+の量がStoichiometricなものとずらしたもので、果たして差が出ているのでしょうか?
いかがでしょう?
「たいしたこと無いけど、表面を改質した効果はあるかもしれないね」
程度のどうでもいい研究に見えてきませんか?