するとそれを見た医者の顔がみるみる青ざめていくではないか。
私は、瞬時に悟った。自分の病はついに心臓深くに根を下ろし、絡みついたのだな、と。
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今日、スーパーで買い物をした折に、トマトジュースのコーナーのポップが目に留まりました。
曰く、「西洋では『トマトが赤くなると、医者が青ざめる』ということわざがあり…」
うんうん、良くありますね。この手の煽りポップ。
良くある筈なのに、内容について、考え込んだのは初めてでした。
「目の前で、医者の顔が青くなったら、そら、余命幾ばくもないって事なんじゃ…」
それか、そのトマトの異常な量のカロテノイド色素の蓄積を観察していた若き医者が、これが恐るべき毒素を飛散させるトリガーであり、巨大な裏組織による悪魔の計画的トマト栽培の意図などの、闇の世界の真実を知るに至ってしまい、命を(以下没)
すまん、妄想が長すぎた。
まぁその、「青くなる」ってそれほんとに良いのかなぁ、とことわざに対して野暮な感想を抱いた訳です。
勿論、食品等の効能を強調する対比文である事はそうなんでしょーが、
どうも、
「東西を問わず、医者は憎み嫌われていた」
という怨嗟の念を感じるわけです。
あ、西は「よーろっぱあたり」と読み替えてくださいな。
Web上から検索して集めると、うん、いっぱいあるよねバリエーション。
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「柿が赤くなると医者が青くなる」
- これが日本でほとんど同じ意味に訳される言葉みたい。別に柿でいいと思うが。でも…実は初めて知った。
- 「ビールと塩漬けキャベツは、医者 から金貨を半分奪いとる」
- ずっと正確な文を思い出せずにもやもやしてました!「ドイツだからウインナーだっけ?」とかアホな勘違いのまま放置してた。
確か初めて本で知った外国のことわざ。なんの本だっけ…中学生あたりだと思うんだけど。
軽妙で詩の美しさにも通じる。うまいよなーと思った。うまそうだし、キャベツ。
- 「一日一個のリンゴは医者を遠ざける」
- これも有名よね。ちなみに一番文章のバリエーションの多いのはリンゴの様だ。
当然「リンゴが赤くなれば…」が存在する。リンゴ文化強し - 「大根どきの医者いらず」
- 日本のことわざ。し、知らねぇーっ!
(でも有名らしい。とほほ) ここから「作物の色が良くなると、医者が…」のバリエーションなんだけど
- 「 橙が赤くなる季節には病人が減り、 医者が暇になる」
- これは分かる…赤と青は、顔色で陰陽、生死、熱・寒の対比だしね。
- 「みかんが色づくと医者が青くなる」
- え…?
- 「ゆず が色付くと医者が青くなる」
- いや、ちょっと待て。人間の顔色との対比だと、黄疸だぞ、それ。
とは言え、ここらの「青くなる」は後から修正されたものかも。
日本版トマトにはこんなバリエーションもあるんだけど
- 「柿が色づけば医者が倒れる」
- なんとなく本来こちらが先で、西洋の「~が赤くなれば、医者が青ざめる」にあわせるために修正された様な気がする。 構成としては西洋の組み立ての方が美しいけど、日本語の(日本の風土にあわせた)情緒としては、婉曲技法で描写した「色づく」の方が自然。
まぁ、それにしても「倒れる」って…
とにかく医者は薬効の引き合いに散々な目に遭わせられます。やせ衰えるは、飢えるは、金貨がこぼれるは…。
薬に頼らず、食生活で上手に生き延びようとした人々にとって、富裕層相手の医者は「守銭奴」というレッテルの貼られた、嘲りと妬みをぶつける存在だったのかも。
- 「神が病を癒し、医者が金を受け取る」(食べ物関係ないけど)
- だからって、そらあんまりでしょ!
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「サンマが出ると医者がひっこむ」
- もうちょっとマジメに文章練れよ!昔の人!
反撃。
「医者を必要とする前に医者の言うことを聞け」
結構良いこと言うじゃん!医者!(これことわざ?)
「医者が取るか、坊主が取るか」
ごごごめんなさい。た、助けてお医者様……