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政治

下位規範によって上位規範を改廃する日本の伝統について

タレコミ by Anonymous Coward
あるAnonymous Coward 曰く、
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-68ea.html

http://blogos.com/article/122883/

上位規範が現実にそぐわなくなってきたとき、その上位規範を改廃するのではなく、下位規範を制定して上位規範を骨抜きにしたり、実質的に改廃したりするやり方は、わが国の為政者が伝統的に行ってきたことであり、今に始まったことではない。どのくらい伝統的かというと、おそらく「仏教伝来」があった5世紀半ばには、為政者の基本的な行動原理になっていたと思われる。その伝統はあまりに深く浸透しているため、彼らはしばしば、伝統に則った行動であることについて、無自覚である。
一例として、外為法に基づく輸出管理体制を挙げよう。工業製品の輸出は、憲法上、自由なのが原則だ。明文規定はないが、憲法が自由主義経済を採用する以上、当然のこととされている。この理念を体現するものとして、外為法47条は、「貨物の輸出は…最少限度の制限の下に、許容される」と規定する。
ところが、外為法の下位規範である輸出貿易管理令は、広範な工業製品について、「全地域」への輸出を禁止している。「全地域」とは「世界中」のことだから、要はおよそ輸出できない、ということだ。もちろん、工業製品の輸出を全面禁止したら日本経済が立ち行かないので、経産相の許可を条件に、「例外として」輸出を解禁している。つまり、憲法・法律という上位規範と、政省令以下の下位規範とでは、輸出の自由と禁止に関する原則と例外が、逆転しているのだ。
法律家から見れば、政省令以下の法規によって、憲法上の原則を骨抜きにすることは、明白な憲法違反である。
しかし、輸出の自由という憲法上の理念は、東西冷戦という「国際情勢の現実」のもとで、かれこれ60年間、無視されてきた。これは、「ホンネとタテマエ」という日本人の伝統的な行動様式の発露でもあり、多くの国民の支持を受けてきた。また、経産相が許可権限を濫用することは、ゼロではないが、それほど多くなかったので、実害は少なかった。このことも、「憲法違反」の輸出管理体制が黙認されてきた原因となっている。
このたびの安全保障法制制定の動きは、最高法規である憲法の理念(タテマエ)が国際政治の現実(ホンネ)に合わなくなってきたとして、下位規範である法律によって憲法の理念を後退させようとする試みということができる。このような試みは、上述のとおり、わが国の為政者が伝統的に行ってきたことであり、その意味では、いまに始まったことではない。しかも、同じようなやり方で、いままで「そこそこうまくやってこれた」し、法制定に成功したところで、さっそく戦争を始める考えなどない。だから、立憲主義に反するとか、戦争がはじまるとかいう批判は、為政者側から見れば、的外れにしか聞こえないのである。
下位規範によって上位規範を改廃することは、なぜ許されないのか。わが国の法律家(司法機関を含めて)は、この問題に対する説得的な解答を用意できなかったのではないか。このたびの茶番のような「強行採決」を見ながら、そんなことを考えた。

本文書が掲載されたのは花水木法律事務所の弁護士小林正啓と弁護士櫻井美幸のブログであり、本文書を書いたのは法律の専門家である。
仏教伝来時については解らないが、少なくとも律令時代(最終版は養老律令757+刪定律令791+刪定令格797)以降、律令のメンテが為されなくなった後、詔勅・太政官符を取り纏めた格式(きゃくしき)が制定されたり、令外官が置かれたり、鎌倉幕府によって御成敗式目他が制定される等、下位規定により部分的に無効にされつつ、明治憲法執行までメンテされる事なく不磨の大典と化して寿命が続いてしまった事は、日本史で学ぶ話である。
更に大日本帝国憲法→日本国憲法もメンテされる事無く、60年以上に渡って下位規定により部分的に無効にされつつ存続している。
即ち、先祖代々我々日本人には骨の髄まで立憲制度を運用できなかったという事を示している、恐るべき文書である。

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