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地震

love_natureの日記: 東日本大震災時 精神科病院 情報システム室 対応の記録 (1) 3

日記 by love_nature

私は、精神科病院の、院内情報システム管理という仕事をしています。ご参考になればと思い、震災発生~その後の、情報システム室の対応について記録します。病院の規模は、200床以上400床未満です。私の部署は、私一人しかいません。

私の勤務する病院では、2011年3月12日が、電子カルテ稼働開始日でした。そのため、3月11日は、最終チェックを行っていました。チェック中、なぜかとても気分が悪くなり、めまいや吐き気が起こりました。そこでやむを得ず、早退した直後、地震が起こりました。私は帰宅途中の公道で被災しています。

翌朝、出勤し、緊急会議を行いました。当然ですが、電子カルテの稼働は延期です。
そして、医療安全管理室と協働して、緊急対策チームを組織しました。
前例のない状況、停電、職員も不足しています。だれの助けも求めることのできない場面、物品も人員も限られている中、患者さんと職員の安全を、守り抜かなくてはいけません。
最速で、最善のことを、考え続ける数か月間が始まりました。

被災直後、情報システム室として、まず、以下の対応を行いました。

(1)緊急対策室の設置
私は、赤電源(非常時も優先して電気が供給されるコンセント)のある部屋を一部屋確保し、そこに、以下のものを設置しました。※この部屋は、施錠された、職員だけが入退室できる管理エリアにある部屋です。

準備したもの

        ノートパソコン・小型UPS・PC用モバイル通信端末
        プロジェクター
        病院中の、未使用の、病院携帯電話と充電器

当時は、電話はほとんど通じない状況で、停電の心配もあり、TVを見るのも保障できない状態でした。
そんな中、ノートパソコンは、断続的に停電にあっても、バッテリーで一定時間駆動できます。UPSでさらにその使用時間を延長することができます。また、モバイル通信端末でのインターネット通信は比較的、可能でしたので、院内外との情報ツールとして活用することができました。
ノートパソコンに、モバイル端末を使用して通信を行い、その様子をプロジェクターでスタッフエリアの壁に映し出し、出勤してきたスタッフが情報共有できる環境を作りました。Ustreamなどで配信されているニュースも映しました。

携帯電話と充電器、これは、「通信するために」使用するためではありませんでした。
これを、「懐中電灯の代わりとして」、スタッフに提供しました。
停電の影響で、夜には病院は、かなり薄暗くなりました。
懐中電灯は院内に準備されていましたが、数が足りなくなる場面もありました。また、乾電池が切れてしまうこともあります。
そこで、携帯電話の画面灯を利用することを考えました。

(2)ガソリン情報の確保
地震後、ガソリンパニックが起き、都内のガソリンスタンドから、ガソリンが消えてしまいました。
当院には、付属の訪問看護ステーションがあります。ステーションの職員は、患者さんの安否確認や、ケアのため、訪問する必要がありましたが、訪問車や訪問バイクに入れるガソリンが手に入りません。
被災から数日後から、善意の人たちが、インターネットで、「ガソリンが手に入るステーション情報」を提供してくれるようになりました。これを毎朝、閲覧し、情報共有しました。手の空いたスタッフが、情報をもとに、ステーションまで車を走らせ、ガソリンを補給する日々が続きました。

(3)被災者受け入れの検討

もしかしたら被災者の方が、こちらに運ばれてくるかもしれないということで、院内の空いている場所に、休息できるスペースを確保。その後、救急の患者さんのカルテ取扱いについて会議・共有しました。
電子カルテには情報を引き継がず、救急患者さんは紙のカルテで個人ファイルを作成し運用する方向で調整されました。カルテ採番も工夫をし、番号を一目見ただけで救急患者さんだと分かるように。

(4)職員仮眠室の充実・交通情報の掲示
職員の招集をかけ、集まってくれるのですが、交通が不安定で、出勤したはよいものの帰宅困難者化する職員が多数出ました。もともとあった仮眠室をさらに充実させ、取り壊し予定の病棟ワンフロアをまるごと仮眠室として開放することが決定しました。
情報室では、これに合わせて、定時的に、仮眠室フロアに、インターネットで入手した交通情報を、大きな紙に記載して張出しすることを続けました。

(5)計画停電と電子カルテ
震災直後、稼働開始を延期した電子カルテですが、
院内業務のフローも電子化に合わせて調整していた関係で、
延期により現場の混乱がありました。

そのため、これ以上、延期を長引かせるのはよくないという意見が多くなりました。
そこで、一部、紙と併用しながらの、電子カルテ稼働が決定しました。

それとほぼ同時に、関東での計画停電のニュースが発表されました。
当院では、電子カルテのデータを安全に保存し、電子カルテシステムを滞りなく運用するため、以下のようなサーバ構成をとっています。

        A区(当院グループ病院内)…電子カルテアプリケーションサーバ、電子カルテDBサーバ
        B区(当院敷地内)…電子カルテ緊急時閲覧用の同期サーバ、部門系システムサーバ

これが、かえってリスクを生んでしまいました。
計画停電は、日替わりで、区ごとに実施予定が発表されます。
A区が対象の日も、B区が対象の日もあり、どちらが停電しても、当院では電子カルテを使用することができません。
これには本当に参りました。
東電側で、「病院は停電をさける」という情報もあれば、それはできないという情報もあり、錯綜していました。
病院では、多くの電気が消費され、もしも停電となったら、病院の非常用電源がどこまでもつかもわからず、神経の擦り切れそうな日々でした。
当時対応された方には、ご存知の方もいらっしゃるかと思うのですが、東電の計画停電の停電予定地区アナウンスは、非常に不正確で、とても困りました。
結論から言うと、当院は、A区B区とも、停電を予告されながらも、停電されなかった地域(そういう地域も結構ありました)でしたので、大きな混乱はありませんでした。
平時に、自分たちが想定している内容の甘さを、痛感した苦しい日々でした。

#自然の生命@武蔵野ブログ http://love-nature.hatenablog.com/ #

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2013年03月01日 13時24分 (#2334948)

    B地区の方に部門系サーバーがあるのが痛いですね
    質問なのですが電子カルテサーバーは赤電源にされていたのでしょうか。
    あとこのような非常時において院内でのカルテ閲覧はどのようにして乗り切られたのでしょう。
    結局院内が停電になる事はなくスタッフはカルテを閲覧する事ができていたのですかねえ。

    サーバーは赤電源でも院内のHUBや端末は停電になると使えなくなってしまいますが
    そのような場合にどう運用する事にされたのか興味があります。

    • コメントいただきありがとうございます。

      停電は、一部の病棟に、発生しました。といっても、理由は、施設インフラの問題です。
      その病棟は、とても古い病棟で、取り壊し予定の病棟でした。
      震災後電源系が故障・不安定になり、何度か停電になりました。
      このように、ひとつの病院ですが、病棟によって、震災の影響は大きくことなりました。

      サーバ関係は赤電源にしてありました。
      実際には、地区レベルでの大きな停電もなく、計画停電も実施されませんでしたが、
      万が一の大規模停電を想定して、以下のような対応を取りました。

      記事に記載いたしました、
       ●B区(当院敷地内)…電子カルテ緊急時閲覧用の同期サーバ、部門系システムサーバ

      このサーバ設置場所ですが、当院敷地の、救急病棟にあります。
      救急病棟は、PICU(精神科集中治療室Psychiatry Intensive Care Unit)等もあり、赤電源が多く設置されています。
      そこで、サーバ室に近接した、救急外来用カンファレンス室という、普段はあまり使用されない部屋に、電子カルテ(ノート型)を、設置しました。
      そして、閲覧用サーバと接続し、緊急時はこちらでカルテを閲覧するよう院内にアナウンスしました。

      カルテ記載に関しては、震災後はスタッフの絶対数の不足もありましたので、
      看護師さんには、おのおの、手書きのメモを取ってもらい、翌日中までに、都合の良いタイミングを見て電子カルテに記録してもらう方法をとりました。
      ミスがあってはならない、処方箋・注射箋に関しては、
      電子カルテからオーダーすると同時に、医師に、紙で処方メモ・注射メモを起こしてもらい、ミスを防止しました。
      親コメント
      • by Anonymous Coward

        なるほどー。
        あの震災の中でいかに病院の皆様が努力されていたのか、実際にこういうお話を聞くと改めて感じるものがあります。
        運用ルールの策定と実施についても管理者の方と職員の皆様の努力の賜物ですね。

        ご回答ありがとうございました。

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