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論文の原文。ラットの総数は200匹。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278691512005637 [sciencedirect.com]
撤回に至った出版社の言い分。
http://www.elsevier.com/about/press-releases/research-and-journals/els... [elsevier.com]
私は個人的には、遺伝子組み替え食品に、日常生活で気にするレベルの発癌リスクが存在するとは考えていませんし、元論文が主張するような数倍の死亡率という話であれば尚更です。
が、それでも、一度レビューされて掲載された論文を、生データも提出させた上で「データの改竄などがなかった」と確認したにも関わらず、作者の承認もなしに強制的に撤回させるというのは尋常な事態ではないですね。明らかに頓珍漢だったり激烈に質が悪かったりする論文でも、段取りさえ満たして掲載されたなら、普通は後だしで出版社が撤回することはありません。質の悪い論文を掲載したことで出版社の評価が落ち、論文自体は黙殺されたり反論されたりしますが、それでも元論文自体は残ります。
「元々発癌率が高いラット」であること自体は手法として無効という程ではないように思います。なんにせよ同じ動物を群にわけて遺伝子組み換え食品の投与の有無で比較検討はしているので。「サンプルが少なくて決定的なコトは言えない」レベルの論文は星の数ほどあります。原文をちゃんと読めば、この分野の専門家にとってはあまりにトンデモに見える論文なのでしょうか。出版社の言い分からそういう雰囲気は感じられませんが。
ラットの総数は200匹ですが、10匹ずつのグループに分けてそれぞれ別の条件で実験しているので個々の実験については確かに少ないかなと思います。またグラフをいくつか示していますが、統計的な評価を行ったように見えないので、時間とコストを掛けた割には実験と解析のデザインが雑な印象は受けます。
それでも、正規の手続きを踏んで掲載された論文が雑誌側から撤回されるというのは普通ではありませんね。著者側の主張をもう少し読んで考えてみたいです。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20131129#p9 [hatena.ne.jp]ElsevierはFood and Chemical Toxicologyの論文取り下げを発表
概略ですが、日本語のほうが楽な人のために。
文中には> ピアレビュープロセスでは問題点が指摘されていたがそれでも発表する価値があると判断されていた。とあります。私にはレビューよりセンセーショナルな結果を優先させた Elsevier 側に問題があるように思いました。
いえ、これは論文のレビューとして当然です。ピアレビューのある雑誌では投稿してそのまま掲載されるということはまずなくて、実験のデザインや記述内容についてレビュアーが問題点や疑問点を指摘して、著者がそれに答えたり追加実験したりして論文の内容をよりよくしてから掲載されます。この場合はレビュアーからラットの数が少ないことを指摘されたが、著者らがそれに対して回答して、リジェクトするほどの問題ではないとレビュアーかエディターが最終的に判断したということだと思います。
ただ、内容のインパクトを重視して不十分な論文を載せてしまった可能性はあると思います。インパクトというよりは多大な努力を無にするのは可哀想という同情かもしれませんが。
そう思うのも元の論文に対するコメントを読んでいるのところですが、確かに実験及び論述に問題があるからです。ストーリーでも指摘している通り、元々ガンを発症しやすいラットを使っているのですが、対照実験においてラットの自然死としている中にガンが原因だったものが除かれている可能性が強いこと、餌の組成が書かれておらず、GMO側がマイコトキシンなど発癌性のある汚染を受けていないという証明がない、また、GMOあるいはラウンドアップの毒性に濃度依存性が見られない、過去の研究と矛盾する結果になったことに対して十分な説明がないという指摘は全てごもっとも、と思います。
ただ、ちょっと予断が入りますが、この雑誌のインパクトファクターを考えると、この程度雑誌にこの程度の突っ込みどころのある論文はよくあるけどな、とは思います。
日本語訳しか読んでないのでアレですが、書きかたからするとレビューアーが指摘したが、エディターが掲載を決定したというところでしょうか。最終的な判断はエディタにあるので、これは当然といえば当然なのですが。
なんといいますか、この結果は今迄の知見とかなり異なるもので、
> Séraliniの研究が世界中の食品安全機関から厳しくしかられたのはこれで3度目である。彼らのグループの全ての論文が「不適切なデザイン、解析、報告」である。
という背景を抜きしましても、「途方もない主張には途方もない証拠が必要である」という原則を守っていただきたかったところです。
論理があいまいであるとか、サンプル数の少ない論文なんてのは確かに良くみますが、大抵その手のものは引用されることもなく忘られてていくだけで済んでしまうんですけどね。先日natureに載った"NIH mulls rules for validating key results"という記事や、疑似科学な人々がサンプル数の少ない論文を後生大事に抱えている様子を見ると、もう少しなんとかならんもんかな、と思います。
実験として有効なんじゃないかなと思うんですけどね。これが発癌率の低いラットだと有意な差が出るまで数十年かかるかもしれません。さらに、論文の検証に再実験はつきものだと思うのですが、それにも同じ期間かかります。
同じ種類で比較実験ができていれば充分じゃないでしょうか。もちろん実際のリスク(有意な差が出る年月と寿命の比較)を調べるために発癌率の低いラットでも実験する必要はありますが。
発がん率が高い=結果がバラツキやすいその場合サンプル数が必要なのに、それが明らかに足りてません。結果を出すために使いましたという印象を強く受けますね。この論文が出た時に斜め読みしましたけど、図表や統計解析も雑な感じで、まあありがちなアンチGMの論文だなあという印象でした。
発がん率の検証には発がん率の低い系統を使うべき。そして、有意差が出ないなら、そもそも差がないんですよ。
発がん率の低い系統だけを使ったら、「この物質は、発がん率の少ない対象に対しては発がん性をもたない」ことは検証できても、「その物質が発がん率の高い対象に対してどのような性質を持つのか」は検証できないということになりませんか?
人間の中でだって、がんになりやすい/なりにくい(例えば男性と女性では男性のほうが多いんでしたっけ?)という差はあると言われているわけですから、「現象の出にくい対象で実験をしても差が出なかったんだから、全ての対象に対して差が無いと考えるべきだ」というのは些か乱暴ではないかと。
元コメさんも指摘されていますけど、能う限り多方面から検証をする、ということが求められているのでしょう。
>「元々発癌率が高いラット」であること自体は手法として無効という程ではないように思います。ここについて完全に同意。
「発がん率の高い種」と「発がん率の低い種」のラットを比べたわけじゃないんだから。
「発がん率の高い同じ種」同紙に別々のえさを与えて結果が明らかに変わるなら、それはやはり餌に何らかの発ガンを助長させる因子があるとみるべきだろう。
「発がん率の高い」って事は「発ガンに傾きやすい因子を最初から多く持っている」というだけだ。
その因子に働きかけたのが「遺伝子組み換えトウモロコシである」というだけではないのかな。
こちらに [srad.jp]紹介しましたが、ガンになりやすいラットを使ったこと自体が問題視されているのではありません。このラットを使うのであれば気をつけるべき点を欠いているのではないかという指摘です。
年をとるとガンになりやすいラットを使っているので、普通の餌を与えてもガンになるのに、GMO/ラウンドアップを与えていないラットの死亡は自然死と分類してガンではないかのように見せていること、与えた餌が発ガン物質に汚染されていたら、その影響が支配的になってしまう可能性のあることが指摘されています。また、このような実験では低濃度と高濃度での被曝実験を行うのですが、その結果期待される、低濃度では反応が弱い・無い、高濃度では反応が出る、という結果が得られていないのでGMO/ラウンドアップの問題ではなく、共通の環境因子(例えば上述した餌の汚染)が原因なのではないかという疑いには一定の合理性があります。
>発がん性の低い物質にでも敏感に反応してガンを発症してしまう、ってことは考えられないでしょうか。今回に置いてはそうだとして何?って話。
同じ種類のラットで遺伝子組み換えでない作物与える実験も同時におこなってるんだから。
差が「発がん性の低い物質由来」だとしても結果に差がある以上、遺伝子組み換えでない方には含まれていないか、「結果として差が出るぐらいには発ガン性物質の含有量に差がある」わけですが。
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計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである
これってアリ? (スコア:5, 興味深い)
論文の原文。ラットの総数は200匹。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278691512005637 [sciencedirect.com]
撤回に至った出版社の言い分。
http://www.elsevier.com/about/press-releases/research-and-journals/els... [elsevier.com]
私は個人的には、遺伝子組み替え食品に、日常生活で気にするレベルの発癌リスクが存在するとは考えていませんし、元論文が主張するような数倍の死亡率という話であれば尚更です。
が、それでも、一度レビューされて掲載された論文を、生データも提出させた上で「データの改竄などがなかった」と確認したにも関わらず、作者の承認もなしに強制的に撤回させるというのは尋常な事態ではないですね。明らかに頓珍漢だったり激烈に質が悪かったりする論文でも、段取りさえ満たして掲載されたなら、普通は後だしで出版社が撤回することはありません。質の悪い論文を掲載したことで出版社の評価が落ち、論文自体は黙殺されたり反論されたりしますが、それでも元論文自体は残ります。
「元々発癌率が高いラット」であること自体は手法として無効という程ではないように思います。なんにせよ同じ動物を群にわけて遺伝子組み換え食品の投与の有無で比較検討はしているので。「サンプルが少なくて決定的なコトは言えない」レベルの論文は星の数ほどあります。原文をちゃんと読めば、この分野の専門家にとってはあまりにトンデモに見える論文なのでしょうか。出版社の言い分からそういう雰囲気は感じられませんが。
Re: (スコア:0)
ラットの総数は200匹ですが、10匹ずつのグループに分けてそれぞれ別の条件で実験しているので個々の実験については確かに少ないかなと思います。
またグラフをいくつか示していますが、統計的な評価を行ったように見えないので、時間とコストを掛けた割には実験と解析のデザインが雑な印象は受けます。
それでも、正規の手続きを踏んで掲載された論文が雑誌側から撤回されるというのは普通ではありませんね。
著者側の主張をもう少し読んで考えてみたいです。
Re: (スコア:0)
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20131129#p9 [hatena.ne.jp]
ElsevierはFood and Chemical Toxicologyの論文取り下げを発表
概略ですが、日本語のほうが楽な人のために。
文中には
> ピアレビュープロセスでは問題点が指摘されていたがそれでも発表する価値があると判断されていた。
とあります。私にはレビューよりセンセーショナルな結果を優先させた Elsevier 側に問題があるように思いました。
Re:これってアリ? (スコア:5, 参考になる)
いえ、これは論文のレビューとして当然です。
ピアレビューのある雑誌では投稿してそのまま掲載されるということはまずなくて、
実験のデザインや記述内容についてレビュアーが問題点や疑問点を指摘して、著者が
それに答えたり追加実験したりして論文の内容をよりよくしてから掲載されます。
この場合はレビュアーからラットの数が少ないことを指摘されたが、著者らがそれに
対して回答して、リジェクトするほどの問題ではないとレビュアーかエディターが
最終的に判断したということだと思います。
ただ、内容のインパクトを重視して不十分な論文を載せてしまった可能性はあると
思います。インパクトというよりは多大な努力を無にするのは可哀想という同情かも
しれませんが。
そう思うのも元の論文に対するコメントを読んでいるのところですが、確かに実験
及び論述に問題があるからです。
ストーリーでも指摘している通り、元々ガンを発症しやすいラットを使っているのですが、
対照実験においてラットの自然死としている中にガンが原因だったものが除かれている
可能性が強いこと、餌の組成が書かれておらず、GMO側がマイコトキシンなど発癌性の
ある汚染を受けていないという証明がない、また、GMOあるいはラウンドアップの
毒性に濃度依存性が見られない、過去の研究と矛盾する結果になったことに対して
十分な説明がないという指摘は全てごもっとも、と思います。
ただ、ちょっと予断が入りますが、この雑誌のインパクトファクターを考えると、
この程度雑誌にこの程度の突っ込みどころのある論文はよくあるけどな、とは思います。
kaho
Re:これってアリ? (スコア:1)
日本語訳しか読んでないのでアレですが、書きかたからするとレビューアーが指摘したが、エディターが掲載を決定したというところでしょうか。最終的な判断はエディタにあるので、これは当然といえば当然なのですが。
なんといいますか、この結果は今迄の知見とかなり異なるもので、
> Séraliniの研究が世界中の食品安全機関から厳しくしかられたのはこれで3度目である。彼らのグループの全ての論文が「不適切なデザイン、解析、報告」である。
という背景を抜きしましても、「途方もない主張には途方もない証拠が必要である」という原則を守っていただきたかったところです。
論理があいまいであるとか、サンプル数の少ない論文なんてのは確かに良くみますが、大抵その手のものは引用されることもなく忘られてていくだけで済んでしまうんですけどね。
先日natureに載った"NIH mulls rules for validating key results"という記事や、疑似科学な人々がサンプル数の少ない論文を後生大事に抱えている様子を見ると、もう少しなんとかならんもんかな、と思います。
発癌率が高いから (スコア:0)
実験として有効なんじゃないかなと思うんですけどね。
これが発癌率の低いラットだと有意な差が出るまで数十年かかるかもしれません。
さらに、論文の検証に再実験はつきものだと思うのですが、それにも同じ期間かかります。
同じ種類で比較実験ができていれば充分じゃないでしょうか。
もちろん実際のリスク(有意な差が出る年月と寿命の比較)を調べるために発癌率の低いラットでも実験する必要はありますが。
Re: (スコア:0)
発がん率が高い=結果がバラツキやすい
その場合サンプル数が必要なのに、それが明らかに足りてません。
結果を出すために使いましたという印象を強く受けますね。
この論文が出た時に斜め読みしましたけど、図表や統計解析も雑な感じで、
まあありがちなアンチGMの論文だなあという印象でした。
発がん率の検証には発がん率の低い系統を使うべき。
そして、有意差が出ないなら、そもそも差がないんですよ。
Re: (スコア:0)
発がん率の低い系統だけを使ったら、「この物質は、発がん率の少ない対象に対しては発がん性をもたない」ことは検証できても、「その物質が発がん率の高い対象に対してどのような性質を持つのか」は検証できないということになりませんか?
人間の中でだって、がんになりやすい/なりにくい(例えば男性と女性では男性のほうが多いんでしたっけ?)という差はあると言われているわけですから、「現象の出にくい対象で実験をしても差が出なかったんだから、全ての対象に対して差が無いと考えるべきだ」というのは些か乱暴ではないかと。
元コメさんも指摘されていますけど、能う限り多方面から検証をする、ということが求められているのでしょう。
Re: (スコア:0)
>「元々発癌率が高いラット」であること自体は手法として無効という程ではないように思います。
ここについて完全に同意。
「発がん率の高い種」と「発がん率の低い種」のラットを比べたわけじゃないんだから。
「発がん率の高い同じ種」同紙に別々のえさを与えて結果が明らかに変わるなら、
それはやはり餌に何らかの発ガンを助長させる因子があるとみるべきだろう。
「発がん率の高い」って事は「発ガンに傾きやすい因子を最初から多く持っている」
というだけだ。
その因子に働きかけたのが「遺伝子組み換えトウモロコシである」というだけではないのかな。
Re:これってアリ? (スコア:2)
こちらに [srad.jp]紹介しましたが、ガンになりやすいラットを使ったこと自体が問題視
されているのではありません。
このラットを使うのであれば気をつけるべき点を欠いているのではないかという指摘です。
年をとるとガンになりやすいラットを使っているので、普通の餌を与えてもガンになるのに、
GMO/ラウンドアップを与えていないラットの死亡は自然死と分類してガンではないかの
ように見せていること、与えた餌が発ガン物質に汚染されていたら、その影響が支配的に
なってしまう可能性のあることが指摘されています。
また、このような実験では低濃度と高濃度での被曝実験を行うのですが、その結果期待される、
低濃度では反応が弱い・無い、高濃度では反応が出る、という結果が得られていないので
GMO/ラウンドアップの問題ではなく、共通の環境因子(例えば上述した餌の汚染)が
原因なのではないかという疑いには一定の合理性があります。
kaho
Re:これってアリ? (スコア:2)
Re: (スコア:0)
>発がん性の低い物質にでも敏感に反応してガンを発症してしまう、ってことは考えられないでしょうか。
今回に置いてはそうだとして何?って話。
同じ種類のラットで遺伝子組み換えでない作物与える実験も同時におこなってるんだから。
差が「発がん性の低い物質由来」だとしても結果に差がある以上、
遺伝子組み換えでない方には含まれていないか、
「結果として差が出るぐらいには発ガン性物質の含有量に差がある」
わけですが。
Re:これってアリ? (スコア:2)