Kei_Watanabeの日記: Acrobat XI、リュウミンライト置き換えを捨てる?!
Acrobat 11.0.0 が届きました。
いくつかお約束なテストをしているのですが、これまでにトラブルになりがちだった"MS明朝"->"リュウミンL-KL"の置換が起こらなくなったようです。
"Times New Roman"と"MS明朝"で作られた文書をAcrobatで変換するとき、Acrobat X以前では
・システムフォントのみ使用し、文書のフォントを使用しないを有効
→Times New Roman -> Times New RomanPSMT に置換
→MS-Minchoはそのまま
・システムフォントのみ使用し、文書のフォントを使用しないを解除
→ソフトフォントとしてダウンロード -> Times, MS-Mincho(PSMTが付かない)
→デバイスフォント -> Times, Ryumin-Light(実際のフォント:KozMinPr6N-Regular)
という具合になっていました。
リュウミンライトが発生してはまる人がよくいるみたいです。
これが、Acrobat XIになると、
→デバイスフォント -> Times, MS-Mincho
に変化します。
Acrobat XIのプリンタのプロパティを見ると、MS明朝にはこれまで「リュウミンL-KL」に置換する設定が入っていたのが、「Don't Substitute」「Courier」「Symbol」の三択になっているではありませんか。
どういうことなのか推測してみましょう。
Acrobatは、Windowsでファイルを作った際に、環境間で読めるファイルを作るために2通り+1の対応を行ってきました。
1: MS明朝は「Ryumin-Light」に置き換えてしまう。
これはつまり、世界の理想の明朝フォントはリュウミンL-KLであるという思想だったなのでしょうか。
PDFが持ち込まれた環境ではRyuminを適宜環境に適したフォントで表示させています。(Windowsの場合KozMinPr6N-Regularで表示、Linuxなどではゴシックで表示される場合もあります)
文字は図形としてではなく文字データとして持つのでファイルサイズが小さくて済みます。
2: MS明朝を埋め込む
MS明朝のフォント込みの大きなPDFを作り、どこの環境でも読めるようにする
3: MS明朝だけど埋め込まない
これは、よその環境に持っていくと解読不能になります。
今回のバージョンアップでは、1の選択肢が消えたことになります。
推測ですが、JIS2004で増えた文字などにリュウミンライトがサポートしない文字が入って、もう文字数の不足したリュウミンを仮想の理想のフォントとして扱えなくなってしまったことに起因しているのではないかと思います。
JIS2004で増えた一部の文字は、従来のUTF-16で表現できず、2文字分で1文字を表現する拡張策の「サロゲート」を必要とするので、「𠮟(\U00020B9F)」の字はエディタやワープロ、OSの標準対応をはかる試金石として使っています。
Acrobat9,10の場合(8以前は未確認)難しい方の「𠮟」を文書に混ぜてPDFに変換させると、
→デバイスフォント -> Times, Ryumin-Light
から
→デバイスフォント -> Times, Ryumin-Light,MS-Mincho
に変化します。
リュウミンでカバーできなかった文字を、MS明朝で書き込んでいます。
Acrobat XIではこのRyumin-Lightは廃止され、MS-Minchoのみになりました。
リュウミンがもうカバーする文字数的に使えなくなってしまったという判断なのか、それとも、もうPDFのファイルサイズを気にしている時代ではなくなったという判断なのか。
Acrobat XIで起きた変化は(初版恒例のバグでないなら)リュウミン至上主義からの脱却であり、ちょっとしたターニングポイントかも知れません。
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