パスワードを忘れた? アカウント作成
508979 journal

Torisugariの日記: 国家と情報化

日記 by Torisugari

http://srad.jp/comments.pl?sid=342463&cid=1068496
は、改めて読み返してみると、我ながら、あまりにも地に足が付いていない話なので、少し具体例を。

では、思考実験として、「オープン時刻表計画」を考えてみたいと思います。まあ、実際の時刻表には、現行の産業保護や、縦割りの壁なんかがあるので、うまくいかない可能性の方が大きいと思いますが、そう言う事には目を瞑って、何だったら日本以外の国という事にして見逃してください。

1.まず、国土交通省は、交通機関(鉄道、バス、飛行機、渡し舟etc.)認可の際に時刻表の提出を義務付けます。これが既にテキストファイルなら、この後のプロセスが2年くらい縮まるのですが、この時点では交通機関に何のメリットもないので、あまり負担をかけないことも重要です。紙でもいいと思います。
2.政府はそれをjpegにスキャンしてアップロードします。

ここまでで、政府の役割は終了です。するとどういうことが起こるでしょうか?

この画像データをテキストファイルに変換しようとする人間は、必ず出てきます。沸いてくるのです。一端、これがテキストファイルになれば、あとは、猛烈な勢いでセマンティック化が進むでしょう。熾烈な規格戦争になります。そして、この規格戦争の勝者が企業系コミュニティであれ、オープンソース系団体であれ、規格自体はある程度オープンなものになるでしょう。ダイヤの乱れから、列車の型番、駅での乗り換え時間まで記述できるような奴です。いずれも、オリジナルのjpegファイルには記載されていませんが、そういう情報を入力する企業/団体/人物も、いずこからともなく現れます。

およそ、時刻表は現在でも全て公表されているデータです。ですから、デキる人間には、そんなものあってもなくても同じかもしれません。しかし、普通の人にとっては、「すぐに分かる」と言う事がとても重要です。携帯電話などの情報関連製品の機能はもちろん、居酒屋の親父が営業時間を決める時、不良少女が家出先を決める時、あらゆる選択肢で「今から2時間でここからどこまでいけるか?」という情報は有用だからです。社会が激変する、というのは形容過剰かもしれませんが、インフラの一部になるのは確実です。

この話のキモは最初の「全ての交通機関の時刻表を収集する」のが非常に難しいという点です。いくら時刻表自体が低価格(かつ、著作権なし)であるとはいえ、全てを最新の状態で管理するのは、大企業でも二の足を踏む行為でしょう。「集めに行く」のと、「持ってきてもらう」のでは雲泥の差があります。そして、普通の企業は、jpeg→テキスト化のコストの時点で大赤字を出してしまいます。ですから、自然と、「バスは難しいから、JRと地下鉄だけにしておこう」などのように規模縮小を経て魅力(得体の知れない力を引き出す係数)が減っていくわけです。もちろん、地下鉄とJRから始めて最終的に全ての交通機関を網羅するのも可能だとは思いますが、改訂→後方互換サイクルによる使い勝手の悪さは避けられず、なにより、成果を出すまで時間がかかりすぎて、コストもべらぼうです。

もう一つのキモは、それゆえ、政府は常にかなり有利な立場であり続けられる、という点です。テキスト化、XML化の段階では口出しせずにいることも可能ですし、応援したい勢力があれば、そこのフォーマットを採用して、jpegから変更することもできます。もちろん、それぞれのステージにプレイヤーとして積極的に参加することも出来ますし、これを足がかりに成長するベンチャーを見守ることも出来ます。そして、成果は堂々と「日本発」を名乗れます。最悪のケースは誰にも見向きもされないことですが、時刻表が売れなくなるだけで、国民もさほどムダだとは思わないでしょう。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
typodupeerror

ソースを見ろ -- ある4桁UID

読み込み中...