davrayの日記: つづれおり
日記 by
davray
月やあらぬ 春や昔の春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして
(在原業平)
わたしが、たまに足をはこぶサイトで、ものを書いていたひとが、去っていった。
わたしは、かのひとが落としていく言葉の珠を、ていねいに ていねいに、拾い上げては、つなぎ合わせ、数珠のように、首飾りのように、身に着けてみたりした。 ほんのすこし誇らしい気持ちになった。
もっともっと、首飾りがほしくなった。
かのひとは、それがまるで、じぶんに課された使命ででもあるかのように、しずかに しずかに、記録を重ねていった。
とうぜん、わたしは、首飾りのコレクションを増やしつづけることができるもの、と思っていた。
あのひとは、"かぐや姫" だったのだろうか。 あるいは、"つる" だったのか。
季節はずれの雪のように、とつぜん、ふわりと舞いおりて、春のおとずれを告げる疾風のように、とつぜん、さらりと駆け抜けていった。
わたしは、見てはいけない、と言われていたものを、見てしまったのだろうか?
おのが身をけずるような辛苦をなめながら、言葉をつむぎつづけることに疲れてしまったのだろうか?
― いまごろは、月のうえで、うさぎとたわむれてでもいるのだろうか?
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