
C0FFEEの日記: 金子勇氏の訃報
出所がTwitterだったので、事実だと確認するまでのデマであってほしい期待感がひときわ大きかった。
NekoFlightの思い出とかは他の人が書いているので、こちらのAC氏が挙げている月刊アスキー 2002/6の記事について思い出話など。
逮捕の一報が出たときに「容疑者は東大助手で髪の演算プログラムなどを…」ってような報道が出て、すぐにこの記事がピンときて2chのプログラマー板に当該記事を引用転載させてもらった。
最初の投稿では、それなりに動揺しててシュミレーションってtypoしてたのが指摘されたのと、NekoFlightの作者って確定するまでは迂闊に騒ぐなというもっともな指摘があった。(typoは後で修正して再投稿)
…けど、他に同様の技術公開してる思い当たる人が居ないし、Winnyの「作ってみるわ」という「ノリで、さかさかと作った」経緯がまさに記事の人物像と一緒だったから驚きはあったけど確信があった。(間違いならどう謝罪しようかということも一応は考えていたけど。)
とにかく逮捕後のメディアに好き勝手書かれる前に、警察に都合のいい調書を取られて流布される前に、逮捕前のメディア・研究者に評価されていた証拠を拡散しておかないといけない気がしてすぐに積み上がった本の中から探して人力スキャンした。(実際、何か無責任なテロリスト、確信犯であると言ったような報道が出回った。)
でもその時は、報道で色々と言われるだろうけど「せめて悪意をもって作ったわけじゃないだろう」という事が伝わればいいというだけで、個人的に何らかの支援が出来たとしてもWinnyというソフトの世間の認知的に彼の無実を訴える方向は絶望的だろうなと諦めがあった。
ところが金子さんと確定してから、この記事は一気に拡散されて意図したところが伝わったのか、Winny利用者は黒だとしても「彼を裁くのは違うんじゃないか」という動きが活発になり、金子さんも5年以上もある長丁場を戦いきってくれた。(個人的には、司法取引というか情状酌量の余地を争って、なるべく早く出てきてカンパを元にやり直すことになるのではと思っていた。)
…転載した自分が居なければ敗訴みたいに読めてしまうのだけど…そうではなくて、元記事から読み取れる彼の人柄とかスタンス、竹内先生という発信者の信頼性があって共感を得られたというだけのこと、自分が感じた事を他の人も感じたにすぎないし、実際の裁判においては壇先生ほか弁護団の先生方の力があった結果にすぎない。
とにかく、これ以前にはFLMASK裁判なんていう事件があったが、スマホの無料アプリをGoogleのサイトから入れたらアダルト広告がついてくるような現代からは馬鹿馬鹿しい、悪意を持って使う道具、悪用の可能性がある道具は「開発者を逮捕すれば一網打尽に出来る」とでもいうような風潮があって、有罪になっていた。
技術的な腕を振るってもらうべき人が、自由なソフトウェア開発という権利の確認に7年間という…こうなった今から思えば実に貴重な時間を…無駄にしてしまった損失は計り知れないけど、彼が勝ち取ってくれた無罪の意味は彼が本来成すべきだった仕事に比べて決して小さくない。
いや、小さくしてはいけないのだと思う。
金子さん、ありがとうございました。
[参考]
・「金子勇さんの遺志が健全に羽ばたける世に」、慶応大環境情報学部長 村井純氏が追悼の言葉
・ジマーマン氏が語る、PGP誕生から10年の軌跡(archive.org)
・天才、金子勇 - UEI shi3zの日記
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