okkyの日記: 多分ACの有効性は母集団の大きさによって違う
今、「日常生活に潜むゲーム理論」という本を読んでいるのだが。4章の「じゃんけん」に書いてある内容が面白い。
いや、これは「じゃんけんの勝ち方」の話じゃなく、3種類の戦略を用意して、それぞれがじゃんけんのように有利・不利がループするようになっている場合の戦略の話。
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「ただ乗り問題」というのがある。ようするに社会的な構造を利用して利益だけを貪り、必要な投資を行わないプレイヤーがいる場合の問題だ。ただ乗りが成功すると利益が最大化される。
a) 個々バラバラ、協調せずに問題を解決すると利益が得られる。この場合、「ただ乗り」プレイヤーとは利益を共有しなくてもよい。
b) 協調すると、個々バラバラに問題を解決した場合よりもトータルで得られる利益が大きくなるが、それを参加者全員で分配する場合に、「ただ乗り」プレイヤーにも利益を分配しなくちゃいけない。
c) 「ただ乗り」プレイヤーとして、 b の戦略をとっている人に寄生する。つまり何もしなくても利益が得られる。ただし、cの人がたくさんになると、トータルの利益が変わらなくても一人あたりの分配量が減る。
このような状態で、沢山の人達を集めた場合に、それぞれがどのような戦略を選ぶか、と言う問題。
a を選ぶ人が増えると、集団で活動する人の数は減る。すると c の戦略が絶滅する。得られる利益が小さくなりすぎるからだ。
結果として母集団がある一定量を超えるまでは b の戦略が有効になる。が、b が繰り返され、母集団が大きくなってくると、c の戦略が有効になる。
cの戦略を取るものが増えると、b の戦略を取ることの有効性が薄れる。で b⇒a と戦略を変更する人が増え、結果として寄生するべき母集団が小さくなりすぎて c の戦略をとってもメリットが無くなる。
で、最初に戻る…
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これを「匿名」に対して考えてみるとこんな事が言えるんじゃなかろうか。
- まず十分小さな母集団においては、匿名は意味を持たない。匿名な人がいても、それが誰なのか、判っちゃうからだ。この状態は、多分母集団が150の法則を超えるまで続く
- 母集団が150人を超えると、Anonymousに意味が出てくる。個人が断定的に特定され得ない可能性が出てくるからだ。しかし絞り込みは可能なので、あまりに傍若無人な行動はできない。この状態はおそらく…3000人ぐらいを突破するまで続く
- 3000人ぐらいを突破すると、もはや Anonymous な発言から個人を特定することは不可能になる。候補者が多すぎるのだ。すると、Anonymous の悪い面…つまり「自分が特定されないので一方的に暴言を吐く」的な行動を取る者が増えてくる
ここで「個人が特定できる」のはあくまでも「人間の認知として」であって、機械分析にかかれば話は全然別だ、と言うことに注意。
これに対して、「実名」や「あだ名」戦略の場合は、母集団の大きさにはあまり強い影響を受けない(構成員がランダムに選択されている場合は)。
こうして考えると、「ACの有効性は、/.J がドマイナーだったから成立する話」だという事が見えてくる。参加者が増えるに従って、ACは有効性より有害性が強く出てくる、というわけだ。/.J を運営する人にすればたまったもんじゃない性質だが…。
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Facebookの話も実はこれに近いんじゃなかろうか。
「インターネットを使っている人数がかなり増えてきたので、匿名の害が益を上回り始めた。匿名やめようず~」
ということのような気がする。
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