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xapの日記: ヨヨギとシンジュクとアキバの時代(7) 15

日記 by xap

前回のつづき。

多分、生まれて初めて、正真正銘「頭が真っ白になる」という体験をしたと思う。

彼女の言葉が、空っぽの頭の中を「ブロック崩し」の玉のように反射しまくっている感じがした。
全く理解できない。ってか、頭が理解する事を全力で拒否してる。
なんとか、捻り出した「へ?」という言葉を聞かないうちに、彼女はアパートから出て行った。

ここは、追っかけるシーンですよーっ!と俺の中の人が叫んでたが、なんか、もー、全てがリミットブレイクだった。
そのままくずおれる様に、寝る。
(俺の中の人は「寝るなー!」とか言ってたと思う)

目が覚めると22時くらいだった。
頭の中は妙にスッキリしていた。と同時に諸々の感情もすっかり欠落し、まるで他人事のような気分だった。
彼女の行き先は多分、彼女の母親の家だろう。
電話をすると、やはりそこに居るようだ。
「ごめんなさいね。あの子気が動転してるだけだと思うから。すぐ気が変わると思うから」と母親がしきりに謝ってくる。
「今日は彼女の事、お願いします。明日の夜に伺います。」とだけ伝え、また寝た。
(俺の中の人は「ってまた寝るのかよー!」とか言ってたと思う)

次の日、起きて仕事に向かう。ショップに出て、淡々と仕事する。
「xapちゃん、今日は無口ねー。何かあったの?」なんて、レジの「姐さん」言われる。自分では何の感情も出していないつもりなのだが・・・。

ショップを閉店し、速攻でレジ締め処理を終わらせ、帰路につく。
帰り際、姐さんに「なんか知んないけど、思いつめないよーにね。」とか言われる。やっぱ顔になんか書いてあるのか???

そのまま、彼女の母親宅へ向かう。
彼女と暫く話をし、彼女の意思が変わっていない事を再認した。
「俺の何処が悪かったかな?」と聞くと「っていうか、嫌いになりたくないから。」「あの家に一人で居るのがツライ。」「パソコンに向かう背中が父親に見えて苦痛だった」「私には結婚は早かった」「私は主婦にはなれない」といった内容の事を言っていたと思うが、当時の俺には彼女の言葉は一つも理解できなかった。
「はぁ?何甘えた事言ってんだ?」とか「何かって言うと父親の陰に逃げるし」とか非道な事を考えたと思う。

が、今思えば、彼女の考えも判らないでも無い。

夢を持って結婚したハズが、夫は無能だしショップ店員という低所得な仕事。
帰りも遅いし、家に帰っても一人。
帰ってきても、PCの前に張り付いてカチャカチャとデータ打ちばっかりやってるし。
相談する友人は皆、独身。周りの自分と同年代の人間も、好きに生きている。
ナゼ、自分だけが?と考えても無理は無いかと思う。

「とりあえず、一週間考えてほしい」とだけ伝え、家に帰った。
それから3日後、彼女から電話があり「やはり意思は変わらない」と伝えられる。
「これは、もうダメかもしれんね」という事を悟った俺は、その返事を了承。
数日後、彼女はアパートから自分の荷物を引き取り、1年間の短い結婚生活に終止符を打った。
なんか、ポカーン(゜д゜)としてる間に独身生活に戻ってしまった24歳の秋。

俺はその後、離婚やらなんやらの事後処理に忙殺される。
彼女は殻に閉じこもるように、メール以外での連絡を絶ってしまった為、俺が公的機関や保険等の手続きに奔走する事となる。

俺の親は、最初に離婚を言い出したのが彼女である事を知ると、
「離婚は当人達の問題で致し方無い事だが、親同士で話すべき事があるはず。結婚の時はこちらから向こうの親御さん連絡をした。向こうから言い出した事ならばケジメの意味でも向こうの親御さんから連絡が欲しい」といった事を言い出した。
その事を彼女の母親に伝えると「怖くて電話なんかできない」と怖気づいてしまった。
そんなこんなで、双方の親の伝達役なんかもするハメになっていたのだが、仕舞いには彼女に「母親をこれ以上苛めないで!もう!そっとして!」とか言われる始末。

思わず、世界中を呪ってしまいたくなった。

そんなこんなで結局、関先生から頼まれた仕事を100%完成させる事が出来なかった。
ゆえに、満額のバイト料は得られなかったが、その金でプレゼントを買うつもりだった相手も居なくなった以上、んな事はもうどーでも良かった。

多分、関先生にも落胆されたろうが、ソレさえもどーでも良かった。
「俺の事なんざ、皆、どーとでも思えばいい。俺も、もう勝手に生きる。好きにしる!」とヤサグレモード全開。

会社に出て開口一番、離婚した事を社長に告げる。
社長「マジ!離婚!?じゃ奥さん狙って良い?」
とか、大声で言うもんだからショップのみんなに知られてしまう。

店長「おお!?おめでとー!今日は飲み会だねー!」
姐さん「それで最近死にそうな顔したんだねー。(してたのか?)バツイチは、モテるらしいよ~」
カッさん「うぉー!xapさん!輝いてる!」
・・・・何、このショップ?

その日の夜は、店長の宣言どおり「xapちゃん独身復帰祝いの宴」が開催。
宴は二次会、三次会と続き、締めくくりに店長とシバさん行き付けの六本木のランパブに強制連行される。
朝までウハウハし、そのまま朝マックして出社。

その日アキバには、頭ボサボサで目の下に隈をつくったナチュラルハイな店長と店員約一名が客対応する怪しいパーツショップがあったという。

数日後、神奈川の僻地からアキバまで毎日小さな旅をしながら通勤する必要性が無いことに気づいた俺は、早速引越しの手配をする。

新しい住処は新小岩に決まった。
「みのり会」という商店街のすぐそばで、家賃も安い。
厚木のアパートに、何の未練も無くなった俺はサクっと引越しを完了させる。

更に、今までの貯金と生命保険を解約した際に支払われた金で、パーツを買ったりiiyamaの高級ディスプレイを買ったり、あんな事やこんな事をして散財しまくった。
もう誰も俺を止めるものは居ない。金を何に使おうが文句いう奴も居ない。
俺様街道まっしぐらである。黙祷。

つづきます。

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人生の大半の問題はスルー力で解決する -- スルー力研究専門家

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