yasuokaの日記： SyracuseのMary E. Orr

『タイプライターに魅せられた女たち』の読者から、オール女史(Mary E. Orr)は1886年にSyracuseにいたはずだ、との御指摘をいただいた。確かに、『The Onondagan 1886』(Syracuse University)の「Aesthetic Society」(p.119)にはMary E. Orrという人物が掲載されている。しかし、このMary E. Orrと、私(安岡孝一)の連載に登場するオール女史は、全くの別人だと思われる。以下にざっと理由を述べよう。

『Trow's New York City Directory 1885』には、以下に示す3つのエントリーが収録されている。

Orr Mary E. copyist, 237 B'way, h 230 Seventh
Stewart Jessie, copyist 237 B'way, h 438 W. 23d
Stewart & Orr, copyists, 237 B'way

『Trow's New York City Directory 1886』には、以下に示す3つのエントリーが収録されている。

Orr Mary E. copyist, 237 B'way, h 230 Seventh
Stewart, Jessie L. copyist, 237 B'way, h 438 W. 23d
Stewart & Orr, copyists, 237 B'way

『Trow's New York City Directory 1887』には、以下に示す3つのエントリーが収録されている。

Orr Mary E. copyist, 237 B'way & 54 William, h 230 Seventh
Stewart Jessie L. copyist, 237 B'way & 54 William, h 438 W. 23d
Stewart & Orr, copyists, 237 B'way & 54 William

『Trow's New York City Directory 1888』には、以下に示す2つのエントリーが収録されており、「Stewart & Orr」はない。

Orr Mary E. copyist, 120 B'way, h 230 Seventh
Stewart Jessie L. copyist, h 438 W. 23d

そして、George Laneの『Hand-Book of Stenotypy』(Burr Printing House, 1888)収録の「Mae E. Orr」からLane宛の手紙は、「Equitable Building, New York, Nov.3, 1888.」となっている。これらを考え合わせると、オール女史は少なくとも1885～1888年にはマンハッタン7番街230番地に住んでおり、Syracuse Universityの「Mary E. Orr」は別人、という結論が妥当だろう。